あの子と私

ヨージー

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別れ

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 遺書なんてものは残してはいない。別に書き残したいことなんてないし、もし書いてしまってそれこそあの子が読んだりなんかしたら私は死にきれないだろう。だから、いい。思い残しがないとは言わないが、今さらそのために何かしたいとも思わない。むしろ今のこの状況の方がすっきりとしているように思う。考えることに疲れてしまった。放棄する。あぁその一言が遺書ということでいいかもしれない。もちろん本当に今から書いたりなんてしないけど。
 私が居なくなった先の周囲はどうだろう。何か変化があるだろうか。最初はみんなの関心事になるかもしれない。けど、遠からず元通りになるだろう。忘れはしなくとも思いだそうとしなくなる、忘れていることと変わらない。別にそれがどうとかはない。人一人が周囲に与える影響なんて、いや人に依るのか。あの子は違う。忘れられないし、思い出されるに違いない。そんなあの子だからこうする。こうしてやる。
 あの子は私を思い涙を流すだろう。心から涙を流すだろう。事故死した同級生のときのように、他の誰が死んだって、心から涙を流すだろう。なんて、なんて気持ち悪い。せいぜい悲しめばいい。そんなことを思うと私は晴れやかな気持ちになる。あの子はずっと泣いていればいい。それぐらいでないと私は太刀打ちできない、できなかった。でもこれからは違う。私はあの子と同じ視点ではなくなる。なんて素晴らしいんだろう。
 私はあの子が憎い。私はあの子が嫌いだ。私はあの子のせいで、いや、あの子のために精一杯の嫌がらせをしてやるんだ。あの能天気で生暖かい、存在感が人一倍強い人気者を悲しませてやるんだ。あの子をもう見なくて、話さなくていいんだ。もう一緒に帰ることもない。あの子に巻き込まれるのはもうこりごりなんだ。別れの言葉何て言ってあげない。あの子の事なんか気にしているそぶりなんかしてあげない。あの子に一言でも言い残したら、それをあの子のものにしてしまう。私の事ではなくなってしまう。私の存在他の誰からもあの子思い出の一人にはしたくない。私は私だ。私は、私は。
『私はあの子を好きになれない私が嫌いだ』
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