あの子と私

ヨージー

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あの子

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 今年の冬は例年以上の冷え込みで、あまり雪の降らないこの地方にも大きな降雪があり、ワイドショーで取り上げられることもあった。三月に近い今でもまだ冷え込んでいて、来週には雪予報がでている。私はこの寒さがずっと続けばいいと思っている。日が沈み寒さがより一層強く感じられる。眼下に見える住宅には明かりが灯り、一時前よりはむしろ明るく感じられた。月は見えない。こんなときに月が見えないのは私の日頃の行いのようであり、きっとあの子のときは月はでていて、もっとずっと明るいだろうと思った。けれどあの子が私と同じことをすることはないと気づき、可笑しさで少し笑ってしまった。

 私は子どものころ、町を一望することのできる私の住むこの集合団地の屋上が好きだった。でもいつからかこの屋上には入ることができなくなっていて、いつしか忘れてしまっていた。でも、今思い出すことができたことがとても嬉しく感じられた。だってここは他の誰にも伝えたことのない、共感されることもない私だけの場所だから。この場所のことはあの子も知らない。私はあの子の質問に応える形であらゆることをあの子に教えてしまっていたし、私が中学生だったころの同級生とも友達になっていた。私のことが話題にあがるほど話のネタに困る機会なんてなかったろうけど、私は何もかもが筒抜けのようで心地悪かった。
 私とあの子が関わりはじめてから一年が過ぎ、クラス替えのあとも私とあの子は同じクラスだった。そして、私とあの子と今までクラスメイトだった女の子がその学年になった始めのころに事故死した。なんてことのない交通事故ではあったものの保護者会や全校集会などがあわただしく開催された。その子の葬儀には新学期早々ということもあり、新旧のクラスメイトたちが参列した。ただ今までクラスメイトだった生徒は新学期からのクラスメイトと異なって参列者は全員ではなかった。私は参列するつもりはなかったが、あの子の強い申し入れによって参列することになった。

 葬儀の終わり際のことだった。ほとんどの作業が遂行されたあと生徒たちが親の側を離れ親しいもの同士で集まっているときにあの子が不意に泣き出した。私はあの子と違う友人たちのもとに居たため少し距離があった。あの子が泣き出すと同時にあの子の周りにいた生徒たちも声をあげてなきだした。私は正直驚いた。なぜかと言えば亡くなった生徒は決してクラス全員とあの子のように親しくしていた訳ではなかったからだ。もちろん雰囲気にながされて泣いてしまう者もいておかしくはないと思う。ただ、それでもその光景は普段のクラスを知る私には異様だった。確かにあの子と亡くなった生徒はよく話していた。他の生徒とあの子が接するように、私があの子と接するように。だがあの子の周りの生徒たちはどうだろうかこの葬儀に個人的な意思で参列している者は全員ではないはずだ。あの子の涙につられているのだ、と私は思った。けれどその生徒全員が心から泣いているのがなんとなくだが理解できた。その時私は思った。あの子の悲しさに共感しているんだ、と。私はあの子が亡くなった生徒を悼んで本心から泣いていると思ったが、同時に周りの生徒はあの子が悲しんでいることに悲しんでいるのだと気づいた。そして、同様に泣くことができない私がその場で強く異質であったに違いない。私は強い吐き気を覚えた。
『私は今まで生きてきた中で最も孤独を実感した』
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