朱に交われば緋になる=神子と呪いの魔法陣=

誘蛾灯之

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強くなりたい ※

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 就職して一月、最近ダレクの帰りが遅い。

 仕事が忙しいということだが、日付が変わるギリギリまで戻ってこないとさすがに心配になる。
 日本にいた頃だとそれが通常だったなと思い直し、環境が変われば思考も変わるんだなと思わず遠い目になった。

 それでも帰ってくると瑛士の様子を確認しに来る。こちらとしても体を壊されたくないので、できる限りののフォローをしたいと思うのだが、今のところ出来るのがハンバーグの大量生産と、日本の料理を夕飯に混ぜ込むくらいしか出来てない。

 それでもダレクが知らない日本料理に目を輝かせて上手そうに食べているのを見るのは嬉しいし、使用人も嬉しいのだろう。最初の頃に比べて瑛士に対しての当たりが優しくなった。



 さて、初給料である。

 ここの給料システムは一月ごとに支給される。しかも、月初め。最高である。
 金額は銀貨二枚程。それなりの高収入である。
 ダレクにプレゼント買って帰ろう。お世話になっているのだし、何かしら感謝の印として贈りたい。

 何が良いだろうか。そもそもこの国は何を贈ると喜ばれるのか分からない。

 それを仲良くなったシンシアに訊ねてみた。

 中庭のベンチでタバコを燻らせているシンシアの隣で弁当を食べながら、アホなことを質問するな、と言わんばかりにため息を吐かれた。

「男に贈り物ぉ?意味分からん。なんで贈ろうとしてんだお前」
「衣食住の保証されているのでお礼もかねてと言いますか」
「あー、そうか。そうだったな」

 シンシアは口から輪の煙を吐き出した。器用だ。

 この世界は禁煙という言葉が無いらしく、魔法士団の方達はプカプカとタバコの様なものを吸っている。特にシンシアとクレオフェン、もといクレオフェン・スファレライトはヘビースモーカーだった。
 といってもこれはタバコではなく、魔法具の一つで、それぞれ違う効能のものだった。クレオフェンのはリラックス効果で、シンシアのは抑制剤。持病があるらしい。

 煙の輪を3つ作ったところで、「ああそうだ」とシンシアが切り出す。

「メモ帳とかどうだ?日頃使うしあっても邪魔じゃない」
「なるほど良い案です!」






 帰り際、シンシアおすすめの文具屋へとやってきて手帳を見て回っている。

「うーん。どれが良いんだろう」

 いまいちダレクの好みがわからない。

 装飾品は暖系とか金を使ったものが多い。なら、この目の前にある皮の明るい赤茶の手帳を選ぶべきか。名札を見てまた悩む。銅貨五十枚。日本円に換算すればおよそ5~7万円ほど。この世界では紙は高いから仕方ないのは分かるのだが、こう、給料の1/4かぁ、という気持ちになる。

「家賃と思えば安いか」

 だいたい同程度だ。

「すみません。これください」





 □□□強くなりたい□□□




 買ってしまった。
 汚れないように布に巻き、抱えて帰る。空模様は怪しくないけれど、日本と違ってここは人が歩いたり馬が通過すると砂ぼこりが軽く舞う。こんな高価なものを渡す前に汚したくなかった。

「気に入ってくれると良いんだけど」

 騎士様が手帳を使うのかはともかく、何かしらに活用してくれると嬉しい。

「邪魔だ」

 突然肩をぶつけられ、よろけた瞬間に後ろから来た男に手帳を引ったくられた。

「あっ!泥棒!!」

 声をあげながらその男を追いかけるが、その男、足が恐ろしく早い。見失いそうだ。
 その男が小道に入った。あんなところで見失ってしまったらもう二度と見付けられない。

「待て!!」

 泥濘があってもスニーカーがしっかりと地面を掴んでくれる。
 今まで以上に本気を出して足を動かし、もう少しで追い付くという時、突然横からの衝撃で体が吹っ飛ばされた。分かったのは、地面にぶつかる寸前、おそらく体当たりしてきたであろう男の姿を視認したからである。

「うぐっ!」

 体を地面に強かに打ち付けた。

「やっちまえ!」
「オラァ!」

 どこからともなく男が現れて瑛士を蹴り殴る。男達は容赦ない。咄嗟に防御の構えを取っているけど、それでも確実にダメージは入っている。何なんだ。誰なんだこいつら。

 あまり抵抗しないことに気を失ったかと油断した男の脛を思い切り蹴り、すぐに立ち上がって出口を目指す。だが、出口側で待機していた男に捕まり引き倒される。

「見た目に反してなかなか頑丈じゃねーか」
「まだ元気だそこいつ。つーか足大丈夫か?」
「ってぇ!!くそっ!ふざけんなよお前!!!ブッ殺してやる!!!」

 さらに激しくなる暴行。
 腕が痛い。ヒビが入ったか?身体中が痛い。意識がだんだんと薄れていく。
 ヤバイな、このままだと死ぬかもしれない。
 狭まってくる視界の彼方から、誰かが走ってくるのが見えた気がした。





 □□□





「あれ?クーはまだ帰ってないのか?」

 ダレクは執事に荷物を手渡しながらヘリオドルに訊ねる。

「ええ…、今日は少し街に用があるとかで、此方には戻られずそのまま街で何かしらしていると思います」
「街に用?」

 クーが街に何の用だろう。本は買い与えたし、食材は豊富。食器、調理器具とうは全て此方で揃えてある。部屋にあるものも必要ならば即座に用意するが、そもそもクーはそういった要求はしてこない。仕事に使うものならばスファレライトが経費で落とすはずだからそれも無し。
 いくら首を捻ってみてもクーが街に行くだろう用事が思い浮かばない。
 するとヘリオドルが、そういえばと続ける。

「少し帰りが遅いかもしれませんね。もうじき日も暮れますし」

 ダレクは最近の厄介ごとのせいで残業をしてきた。それなのに、その時間まで戻っていないというのは少し不安だ。

「……もしや道に迷っているとか…?」
「……」

 あり得ない話ではない。なにせクーか街に行くのはまだ五回ほど。しかもダレクと一緒だ。

「…探してくる」

 もしそのまま人拐いに遭遇なんかしたら大変だ。
 すぐに街に向かおうとした瞬間、扉の向こうが騒がしくなった。

「アレキサンドライト卿!!私です!!スファレライトです!!」
「すまないが、今急いでいる。用ならば明日改めて──」
「クリハラが大変なんですよ!!」

 スファレライトのその言葉にダレクは扉を即座に開いた。

「クー!?」

 ダレクは目の前の光景に思わず声を上げた。
 ボロボロの瑛士がスファレライトに抱き抱えられていた。意識が朦朧としているらしく、僅かに目を開いているが、反応を示さない。

「何があったのか盗賊のような輩に袋にされていました。身体もかなり酷い怪我があって、一応骨折などは治したのですが…」

 回復系の魔法はかなり魔力を消費する。骨折なども魔法陣無しでは結構な量を持っていかれてしまうのだ。
 瑛士を引き取り、すぐに魔力残量を確認する。
 枯渇とまではいかないが、それに近いほどの消耗をしていた。回復系の魔法は術者だけではなく、受けた者の魔力も消費してしまうのだ。

「すまないスファレライト。この礼は必ず」
「いえ、クリハラはうちの大事な団員ですから。私はこの後あの盗賊団の情報を警備兵に流してきます。では」
「ああ…」

 スファレライトが馬車に乗り込み去っていく。最後まで見送らず、ダレクはヘリオドルに指示を飛ばした。

「すぐに薬と布を私の部屋に持ってこい!!急げ!!」











 痛い。ああ、くそ。ダレクに買った手帳が盗まれてしまった。悔しい。

 痛みで出てきた涙が誰かに拭われる。
 ジワジワと体が温められる。ズキンズキンと激痛を訴えていた腕と胸の痛みが和らいでいく。ぼやけていた視界が戻るにつれ、目の前にいる人物をようやく視認できた。また迷惑を掛けてしまった。

「すみません…」
「何で謝る」
「またダレク様に迷惑を…」
「そんなことは気にするな。それよりも何が起きたのか後で話せ」
「はい…」

 体を優しく撫でられながら魔力が送り込まれていく。ダレクの触れるところが気持ちよく、場所によってはゾワゾワとした感覚が沸き上がって小さく声が漏れる。深く口付けられ、舌を絡めながら回復魔法が施されていく。こうすることで回復魔法で消費する魔力を全てダレクの魔力で補うことが出来るらしい。

 うつぶせにされ、特に酷く蹴られた背中と、転倒した時に強くぶつけた頭を撫でられる。

「……頭から血が出ているじゃないか」
「え…、気がつきませんでした…」

 全身痛くて、どこがどうなっていたのかもさっぱりだった。

「次街にいく時はちゃんと知らせろ。何かしら対策をしてやる」

 過保護と思うが、こんな状況になってしまった立場上瑛士は何も言えなかった。
 ある程度の治療を終えたのか、ダレクの手が徐々に下半身の方へと移動していく。

「んっ…」

 潤滑油をお尻に垂らされ、徐々に解されていく。この感覚にもだいぶ慣れたせいで抵抗なく指が中へ侵入し、ダレクを受け入れるための準備を進められていく。

「うあっ!」

 ごりっとした感触と同時に体が快感に跳ねる。

「そこ…苦手です…」
「痛くはないだろ?」
「痛くはないですが…、んぅっ!」

 労る手付きが変化していく。こうなってくると治療ではなく、ただの性行に成り果てていくのだ。きっとダレクは楽しそうな顔をしているだろう。

「そろそろ挿れるぞ」

 指とは比べ物にならない質量のものが肉を押し退けて奥へと入ってくる。

「ふっうぅ…っっ」

 シーツを握り締めて堪えると、ダレクの骨盤が瑛士のお尻にぶつかる。ダレクのものはデカイ。奥の方までダレクのものが納められると苦しくて呼吸がしずらいような感覚になる。十分に馴染ませてから律動が始まった。








「だいぶ魔力が戻ったな。気分はどうだ?」

 ごぷりと、ダレクのものが出ていくと収まりきらなかったものが溢れてシーツを汚した。

「…………ちょっと、頭がボーッとしていて分かりません…」
「酷い声。カッスカス」
「ダレク様のせいですよね?」

 気分は凄くいい。ボンヤリするが、体調は絶好調だった。最も体はグチャグチャのドロドロにされていたけれど。

 起き上がろうとすると出てくるのが気になる。この魔力供給は行為が終わったら頭がボンヤリしていても理性が賢者タイムに突入するからこの状態が何ともいえない気持ちになるんだよな。

「お湯浴びて来ます」
「ああ。ゆっくりな」

 ダレクの部屋備え付けのシャワー室に入り、汗とお腹に放たれた白いドロドロと魔力に変換しきれずに溢れ出てきたものを流していく。この間にヘリオドルが汚れまくったベッドを直してくれているんだろうなと思うと申し訳なくなる。

「……」

 何にも抵抗できなかった。クレオフェンが助けてくれなかったらきっともっと酷いことになっていたかもしれない。
 強くなりたいと、瑛士は小さく呟いた。



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