7 / 66
第×章
××××××
しおりを挟む
*
屋敷に戻ると、モアはどきどきしながら便せんを取り出した。
そして、ペンをとる。
「……え、……っと」
あれ、何を書けばよいのだろう。
文房具屋にいた女の子たちは、願い事を書くと言っていた。しかし、モアには願いごとがない。
〝この屋敷から出たい〟?
〝助けてほしい〟?
思い浮かぶ言葉に、ピンとこない。
うんうんと考えて……ぱ、と頭に浮かんだのが、あの女の子たち。きゃっきゃっと楽しそうに話していた二人を、モアはなんとなく「うらやましい」と思っていた。
ペンを動かす。
花模様の便せんには、〝普通の女の子になりたい〟。その言葉。
書いてから、モアはため息をついた。
「すみっこ屋敷」の住所を知らない。
手紙は住所がなければ、届けることができない――ということは知っていた。
ああ。モアはもう一度ため息をつく。
ほんのりと、希望を抱いていたのだ。もしもこの手紙が「すみっこ屋敷」に届いたら。もしかしたら、普通の女の子のようになれるのではないかと。
そんなうまい話はないのだ。
モアはがっかりとしながらも、なんとなく「すみっこ屋敷様」と宛名を書いてみる。意味なんてないのだけれど。
もしもこの手紙をポストに投函したら、どこへ届くのだろう。戻ってくるのだろうか。差出人を書かなければ、戻ってくることもないのだろうか。
行き場のない手紙の行き先を考えて、少しだけ楽しくなった。
そのうち、この手紙をポストに投函してみよう。そんなことを思った。
屋敷に戻ると、モアはどきどきしながら便せんを取り出した。
そして、ペンをとる。
「……え、……っと」
あれ、何を書けばよいのだろう。
文房具屋にいた女の子たちは、願い事を書くと言っていた。しかし、モアには願いごとがない。
〝この屋敷から出たい〟?
〝助けてほしい〟?
思い浮かぶ言葉に、ピンとこない。
うんうんと考えて……ぱ、と頭に浮かんだのが、あの女の子たち。きゃっきゃっと楽しそうに話していた二人を、モアはなんとなく「うらやましい」と思っていた。
ペンを動かす。
花模様の便せんには、〝普通の女の子になりたい〟。その言葉。
書いてから、モアはため息をついた。
「すみっこ屋敷」の住所を知らない。
手紙は住所がなければ、届けることができない――ということは知っていた。
ああ。モアはもう一度ため息をつく。
ほんのりと、希望を抱いていたのだ。もしもこの手紙が「すみっこ屋敷」に届いたら。もしかしたら、普通の女の子のようになれるのではないかと。
そんなうまい話はないのだ。
モアはがっかりとしながらも、なんとなく「すみっこ屋敷様」と宛名を書いてみる。意味なんてないのだけれど。
もしもこの手紙をポストに投函したら、どこへ届くのだろう。戻ってくるのだろうか。差出人を書かなければ、戻ってくることもないのだろうか。
行き場のない手紙の行き先を考えて、少しだけ楽しくなった。
そのうち、この手紙をポストに投函してみよう。そんなことを思った。
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる