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第八章:星が降る夜に、祈りを
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しおりを挟むしばらく経つとイングヴェが帰ったようで、イリスがモアの部屋にやってきて「もう大丈夫だよ」と声をかけてくれた。
モアは、イリスの様子がおかしかったのが気になって仕方ない。
「モア、ごめんね。せっかく楽しい一日になるはずだったのに」
「い、いえ。その、さっきの方は……」
「昔の上官といったところかな」
イリスは軍人だった、と以前聞いたことがある。
モアが釈然としない様子でいたからか、イリスは困ったように笑った。
「えーっとね。なんといえばいいのか……。俺の……ベールヴァルド家は、もともと兵器の研究をしていて。だから、俺が退役したあとも、こうして軍の人が俺のところに来るんだ。兵器の権利をよこせとか、設計書を渡せとか」
「……大変なのですね」
「もう、戦争なんてしなければいいのにね」
イリスの疲れたような表情に、モアは心配になった。
イリスは戦争の話をするときに、いつも悲しそうな顔をする。彼にとって、戦争は辛いものなのだろう。実際に戦争に赴いたことのないモアにとっては、想像を絶するほどに。
「戦争は恐ろしいです。みんな、傷ついてしまうのですよね」
「そう。身体も心もね」
もしも、イリスが戦争に巻き込まれてしまったら……そう考えるとひどく恐ろしい。遠い地で行われようと、自分のように、誰かを想う人が苦しむのだ。
モアがイリスを見つめて悲しそうな顔をしたからか、イリスがぽんぽんとモアの頭を撫でた。
「俺もね、もう誰も失いたくないんだ」
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