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第四章:夢の漣
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「嘘はつかないでもらおうか。剣奴としてそれでは困るんだ。もしも、君が未だに昨日のことを引きずっているのなら、それなりの対処をしなければいけない」
「……だから、違うって……」
「俺に嘘をつけると思うなよ」
が、と手を掴まれて、ラズワードは思わず声をあげてしまった。逃げようにも体の力が抜けてそれはかなわない。
するりとノワールの手が、服の中へ滑り込んでくる。すう、と背筋を撫でられ、思わずラズワードはため息を漏らしてしまった。掴まれていない方の手でノワールのことを突き飛ばそうと思えばできるのに、なぜかその手はノワールのシャツを掴むだけである。
「……それで? 『違う』んだったかな?」
「あ、……そう、だよ! お前なんかがどうしようと、俺は……う、ぁ」
「……そう。素直に答えたらご褒美あげようと思ったんだけど」
「……は、あ?」
がくがくと震える脚でなんとか体を支える。背を撫でられ、さらに彼のシャツから漂う仄かに昨日と同じ香りが鼻腔をつけば、理性は限界まで達しそうになってしまう。
「……昨日は自分の指でやらせてしまったね」
「……っ」
「素直に言ったら、今日は俺がやってあげるよ」
「――死ねっ!!」
最後の言葉にくらりと目眩を感じた瞬間、ラズワードはノワールを突き飛ばした。そうしなければ、頷いてしまいそうになったからだ。
「俺のことを馬鹿にしやがって……! お前、絶対いつか殺してやる……!!」
「はは……そりゃあ楽しみだ」
くすくすとノワールが笑う。口ではこういったが、本当は体が熱くて熱くてたまらない。
ノワールが言ったように、もしも彼にあんなことをされたら……と考えると、後孔が疼いている。
「まあ、本当に違うんなら、いいんだけどね」
「だから違うって――あっ……」
「戦闘に支障がでなければいいんだけど……ああ、これじゃあいけないね」
いきなりシャツの上から乳首をつねられて、ラズワードはがくりとその場に崩れ落ちた。ドクドクと鼓動がうるさい。体中に熱が回って何も考えられない。
とん、と軽く蹴られてラズワードは抵抗もできなく体を横たわらせる。仰向けにされ、上を見上げれば、ノワールに見下ろされているのをぼんやりと確認出来た。
「もし、これが実践だったらどうなる? こうして快楽を拒めない体になった君が、こんなふうにされてしまったら……そこにあるのは死だけだ」
「……っこれは……あ、はぁ、おまえ、が……!!」
「戦闘のときは性欲を抑えろと言わなかったか?」
「そんな、でき……ん、あぁ……あ……」
胸元を踏まれ、ジャリ、と捻られれば、そのシャツの下で乳首が刺激される。ノワールはそれをわかってやっているのか、ぐりぐりとその動きをやめることはない。ビクビクと体が何度も痙攣し、もう理性など壊れてしまいそうになった。
「……まあ、これは剣奴になった者にとっての一番の壁。そう簡単にはできないだろうね」
「……は、あ……ん、あ……」
「でもね。ラズワード。君は剣奴として最高の才能を持っているんだよ」
「……え……」
キラリと何かが光る。それはものすごい勢いで落ちてきた。
「……っ」
それの正体を確認した瞬間、ハ、と視界が良好になる。熱でぼやけていた世界は、一瞬で明解になった。
「君の戦闘訓練を数日続けて、俺は感じていた」
落ちてきた物体を、眼球に突き刺さる瞬間に、ラズワードは受け止めた――ナイフを。
「――っ!!」
激しくぶつかった刃は、僅かな火花を散らす。ラズワードがナイフを受け取った瞬間、ノワールが剣を抜いて斬りかかってきたのだ。ラズワードは胸元を踏みつけられながら、それをなんとか受け止めた。
今まで肉欲に溺れかかってその熱にうなされていたのが、嘘のように。その肉欲という興奮が、すべてこの『瞬間』の高揚感に変換されたように。ラズワードの意識は全てナイフの刃に向かっていた。
「君の中に巣食うもの……獣のような性」
ラズワードは自分の体を押さえつけるノワールの足を、ナイフで切りつけた。意識はしていなかったが、魔獣狩りをしていた頃のように人体破壊の魔術を使いながら。
それは直撃こそしなかったものの、ノワールの脚にほんの僅かかすった。見たところわざと当たったようにも見えたが、そのほんの僅かな切り傷がこの魔術の前では大ダメージに繋がる。
思ったとおり、ノワールの脚は破裂した。おそらく彼も魔術をつかってその範囲を狭めたのであろう。全身を破壊するつもりで放った魔術は、彼の右足の膝から下だけを破壊したのに過ぎなかった。
しかしその真下にいたラズワードは、まともにその血をかぶることになる。シャツはもちろん、顔も、何もかも血で濡れた。
「……だから、違うって……」
「俺に嘘をつけると思うなよ」
が、と手を掴まれて、ラズワードは思わず声をあげてしまった。逃げようにも体の力が抜けてそれはかなわない。
するりとノワールの手が、服の中へ滑り込んでくる。すう、と背筋を撫でられ、思わずラズワードはため息を漏らしてしまった。掴まれていない方の手でノワールのことを突き飛ばそうと思えばできるのに、なぜかその手はノワールのシャツを掴むだけである。
「……それで? 『違う』んだったかな?」
「あ、……そう、だよ! お前なんかがどうしようと、俺は……う、ぁ」
「……そう。素直に答えたらご褒美あげようと思ったんだけど」
「……は、あ?」
がくがくと震える脚でなんとか体を支える。背を撫でられ、さらに彼のシャツから漂う仄かに昨日と同じ香りが鼻腔をつけば、理性は限界まで達しそうになってしまう。
「……昨日は自分の指でやらせてしまったね」
「……っ」
「素直に言ったら、今日は俺がやってあげるよ」
「――死ねっ!!」
最後の言葉にくらりと目眩を感じた瞬間、ラズワードはノワールを突き飛ばした。そうしなければ、頷いてしまいそうになったからだ。
「俺のことを馬鹿にしやがって……! お前、絶対いつか殺してやる……!!」
「はは……そりゃあ楽しみだ」
くすくすとノワールが笑う。口ではこういったが、本当は体が熱くて熱くてたまらない。
ノワールが言ったように、もしも彼にあんなことをされたら……と考えると、後孔が疼いている。
「まあ、本当に違うんなら、いいんだけどね」
「だから違うって――あっ……」
「戦闘に支障がでなければいいんだけど……ああ、これじゃあいけないね」
いきなりシャツの上から乳首をつねられて、ラズワードはがくりとその場に崩れ落ちた。ドクドクと鼓動がうるさい。体中に熱が回って何も考えられない。
とん、と軽く蹴られてラズワードは抵抗もできなく体を横たわらせる。仰向けにされ、上を見上げれば、ノワールに見下ろされているのをぼんやりと確認出来た。
「もし、これが実践だったらどうなる? こうして快楽を拒めない体になった君が、こんなふうにされてしまったら……そこにあるのは死だけだ」
「……っこれは……あ、はぁ、おまえ、が……!!」
「戦闘のときは性欲を抑えろと言わなかったか?」
「そんな、でき……ん、あぁ……あ……」
胸元を踏まれ、ジャリ、と捻られれば、そのシャツの下で乳首が刺激される。ノワールはそれをわかってやっているのか、ぐりぐりとその動きをやめることはない。ビクビクと体が何度も痙攣し、もう理性など壊れてしまいそうになった。
「……まあ、これは剣奴になった者にとっての一番の壁。そう簡単にはできないだろうね」
「……は、あ……ん、あ……」
「でもね。ラズワード。君は剣奴として最高の才能を持っているんだよ」
「……え……」
キラリと何かが光る。それはものすごい勢いで落ちてきた。
「……っ」
それの正体を確認した瞬間、ハ、と視界が良好になる。熱でぼやけていた世界は、一瞬で明解になった。
「君の戦闘訓練を数日続けて、俺は感じていた」
落ちてきた物体を、眼球に突き刺さる瞬間に、ラズワードは受け止めた――ナイフを。
「――っ!!」
激しくぶつかった刃は、僅かな火花を散らす。ラズワードがナイフを受け取った瞬間、ノワールが剣を抜いて斬りかかってきたのだ。ラズワードは胸元を踏みつけられながら、それをなんとか受け止めた。
今まで肉欲に溺れかかってその熱にうなされていたのが、嘘のように。その肉欲という興奮が、すべてこの『瞬間』の高揚感に変換されたように。ラズワードの意識は全てナイフの刃に向かっていた。
「君の中に巣食うもの……獣のような性」
ラズワードは自分の体を押さえつけるノワールの足を、ナイフで切りつけた。意識はしていなかったが、魔獣狩りをしていた頃のように人体破壊の魔術を使いながら。
それは直撃こそしなかったものの、ノワールの脚にほんの僅かかすった。見たところわざと当たったようにも見えたが、そのほんの僅かな切り傷がこの魔術の前では大ダメージに繋がる。
思ったとおり、ノワールの脚は破裂した。おそらく彼も魔術をつかってその範囲を狭めたのであろう。全身を破壊するつもりで放った魔術は、彼の右足の膝から下だけを破壊したのに過ぎなかった。
しかしその真下にいたラズワードは、まともにその血をかぶることになる。シャツはもちろん、顔も、何もかも血で濡れた。
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