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第四章:夢の漣
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「君は異常に好戦的だね、気付いていたか? 相手を切り刻むときの感触も、自らの体が傷付く瞬間も、君にとっては興奮材料だ。戦闘を開始してから時間が経つごとに君の攻撃の精密度も威力も増していく」
生臭い臭い。シャツに染み込みまとわりつく、べっとりとした血。
「君の魂が、血を求めているんだろう。……それが、君の本能だよ」
「……なにを、言っているのかわからない」
血を嗅ぎつけた獣のように、息があがってくる。それは紛れもなく、興奮からくるものであった。唇についた血を舐め取れば、その鉄のような味が口の中いっぱいに広がる。
「……本能とはそういうものだ。自分ではあまり気づけない」
「知るか……そんなのどうでもいい」
立ち上がり、ノワールを睨みつける。眼前の獲物は、不敵に笑うばかり。
血の味は、すぐに薄まっていく。好物を目の前にした犬のように、口の中に唾液が満たされていく。
――足りない
――こんな量じゃ、足りない
「君のその本能は剣奴としてはとても便利なものになるよ。もしも性的快楽に負けてしまいそうになったら武器を握れ。まともな戦い方ができるとは思えないが、死ぬよりはマシだろう」
「黙れ、ノワール……」
「うん?」
「本能……知ったことか……俺が求めているのは血でも戦いでもない……。お前だよ! ノワール! 薄汚い手を使って人を虐げて!! 俺のことを玩具みたいに弄びやがって!! お前の血じゃなければ満足なんかできない……!! 許さない……お前はこの手で殺さないと気がすまない!!」
「……」
沸々と、昨夜の熱など足りなすぎるような熱い熱が体の奥底からこみ上げてくる。全身がドクドクと脈を打っている。極度の興奮状態が、殺意を煽る。
「……殺してやる……ノワール……!! 絶対に、殺してやる!!」
「……ふ、……それでいい。ラズワード」
彼が笑った瞬間、ラズワードは駆け出した。教えてもらった魔術も全て忘れて、このナイフでノワールを切り刻みたいと、そう思った。
その笑顔の意味など、どうでもよかった。
生臭い臭い。シャツに染み込みまとわりつく、べっとりとした血。
「君の魂が、血を求めているんだろう。……それが、君の本能だよ」
「……なにを、言っているのかわからない」
血を嗅ぎつけた獣のように、息があがってくる。それは紛れもなく、興奮からくるものであった。唇についた血を舐め取れば、その鉄のような味が口の中いっぱいに広がる。
「……本能とはそういうものだ。自分ではあまり気づけない」
「知るか……そんなのどうでもいい」
立ち上がり、ノワールを睨みつける。眼前の獲物は、不敵に笑うばかり。
血の味は、すぐに薄まっていく。好物を目の前にした犬のように、口の中に唾液が満たされていく。
――足りない
――こんな量じゃ、足りない
「君のその本能は剣奴としてはとても便利なものになるよ。もしも性的快楽に負けてしまいそうになったら武器を握れ。まともな戦い方ができるとは思えないが、死ぬよりはマシだろう」
「黙れ、ノワール……」
「うん?」
「本能……知ったことか……俺が求めているのは血でも戦いでもない……。お前だよ! ノワール! 薄汚い手を使って人を虐げて!! 俺のことを玩具みたいに弄びやがって!! お前の血じゃなければ満足なんかできない……!! 許さない……お前はこの手で殺さないと気がすまない!!」
「……」
沸々と、昨夜の熱など足りなすぎるような熱い熱が体の奥底からこみ上げてくる。全身がドクドクと脈を打っている。極度の興奮状態が、殺意を煽る。
「……殺してやる……ノワール……!! 絶対に、殺してやる!!」
「……ふ、……それでいい。ラズワード」
彼が笑った瞬間、ラズワードは駆け出した。教えてもらった魔術も全て忘れて、このナイフでノワールを切り刻みたいと、そう思った。
その笑顔の意味など、どうでもよかった。
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