29 / 167
Canneles de Bordeaux~もっと甘く~
11
しおりを挟む
からからと音をたてながら、浴室を出ていく。智駿さんと顔を合わせるのが気恥かしい。浴室で悶々しちゃった後ろめたさもあるけれど、さっき智駿さんの前で乱れまくっちゃったから、どんな顔をして智駿さんに合ったらいいのかわからないのだ。あんな、恥ずかしい声とか言葉とか言っちゃて。まともに目を合わせられないかも……
「梓乃くん」
「わ、わああ!」
キッチンの前でもだもだとしていると、智駿さんが声をかけてきた。ぱっと顔をあげれば、目の前に智駿さんが立っている。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「朝ごはんね、冷凍してたやつだけど僕がつくったマフィンだよ」
「……智駿さんが?」
言われてテーブルに乗った皿を見てみれば、そこには美味しそうなマフィンとサラダ。湯気のたった紅茶が添えられていて、窓から差し込むきらきらとして朝日とぴったりだった。
「……っ」
きゅん、とした。パティシエの、智駿さん。エッチなこといっぱいしたような気がするけれど、こんなパティシエとしての智駿さんも俺は大好きなわけで。
……智駿さん、好き。
「……んっ」
たまらず、つま先立ちになって智駿さんにキスをした。そうしたら、智駿さんがきょとんとした顔をして……そして、ぎゅっと抱きしめてきた。
「梓乃くん。大好き」
「……俺も、です」
ぎゅーっ、って胸がしめつけられる。ときめきすぎて、おかしくなりそう。身体がきゅんきゅんとして……頭のなかがとろとろになる。すき、智駿さん、すき……。
「食べよっか」って言われて、テーブルの前に、一緒に座る。
「このマフィンは……お店にはなかったですよね」
「うん。なんとなく自分用に作っていたやつだから」
紅茶を飲んで、サラダを食べながら、黄金色のマフィンを見つめる。智駿さんの、お店には出さないマフィン。これを食べられるのって、智駿さんと親しい人だけだよな、と思うと優越感を覚える。
「……」
なに、話したらいいんだろう。時間が経つにつれて、どんどん恥ずかしくなってくる。ほんと、さっきのエッチは思い出すとかあーっと身体が火照ってくるくらいに、俺、やばかった。俺があんなに感じる身体だなんて、智駿さん知らなかっただろうな。
「……おいしい、です」
サラダを食べ終わって、マフィンをかじる。そうすると柔らかくて控えめな甘みがふわっと口の中に広がった。食感はふんわりとしっとりが混ざった、絶妙な感じ。すごく美味しくて、一口食べればごちゃごちゃと考えていたことも吹っ飛んで「おいしい」が溢れてきた。
「嬉しいな」
俺が「おいしい」と言えば、智駿さんは嬉しそうに微笑んだ。そして、マフィンをかじる俺の肩を抱く。
「……っ!?」
「気にしないで食べていていいよ」
「え、えっと……はい……」
智駿さんは俺の顔をじーっと見つめながら、頭を撫でてきた。ゆっくり、なでなでとされて、心臓が爆発しそうになる。
「そんなに見つめられたら……あの……食べづらいというか、」
「好きな人が僕のつくったものおいしそうに食べている表情みてるときゅんとしちゃって」
「……っ」
ああ、もう……。
ちび、とマフィンを少しかじる。じわっと甘みが広がった、けれど、智駿さんの微笑みの甘さには敵わない。ほんのちょっとしか口に含んでいないのに俺は延々とマフィンを噛み続けて、智駿さんに少しすり寄ってみる。胸がいっぱいでマフィンが飲み込めなくて、ずっとちびちびと食べているから、なかなかマフィンはなくならない。俺が食べている間にも、智駿さんは俺のこめかみにキスをしてきたり、愛おしげに髪を撫でてきたりと糖度が増していく。
やっと完食したときには、紅茶が冷めてしまっていた。存分に甘い甘い愛情を注がれた俺に、ストレートのアールグレイの、ほんのちょっとの苦味が、染み込んだ。
「梓乃くん」
「わ、わああ!」
キッチンの前でもだもだとしていると、智駿さんが声をかけてきた。ぱっと顔をあげれば、目の前に智駿さんが立っている。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「朝ごはんね、冷凍してたやつだけど僕がつくったマフィンだよ」
「……智駿さんが?」
言われてテーブルに乗った皿を見てみれば、そこには美味しそうなマフィンとサラダ。湯気のたった紅茶が添えられていて、窓から差し込むきらきらとして朝日とぴったりだった。
「……っ」
きゅん、とした。パティシエの、智駿さん。エッチなこといっぱいしたような気がするけれど、こんなパティシエとしての智駿さんも俺は大好きなわけで。
……智駿さん、好き。
「……んっ」
たまらず、つま先立ちになって智駿さんにキスをした。そうしたら、智駿さんがきょとんとした顔をして……そして、ぎゅっと抱きしめてきた。
「梓乃くん。大好き」
「……俺も、です」
ぎゅーっ、って胸がしめつけられる。ときめきすぎて、おかしくなりそう。身体がきゅんきゅんとして……頭のなかがとろとろになる。すき、智駿さん、すき……。
「食べよっか」って言われて、テーブルの前に、一緒に座る。
「このマフィンは……お店にはなかったですよね」
「うん。なんとなく自分用に作っていたやつだから」
紅茶を飲んで、サラダを食べながら、黄金色のマフィンを見つめる。智駿さんの、お店には出さないマフィン。これを食べられるのって、智駿さんと親しい人だけだよな、と思うと優越感を覚える。
「……」
なに、話したらいいんだろう。時間が経つにつれて、どんどん恥ずかしくなってくる。ほんと、さっきのエッチは思い出すとかあーっと身体が火照ってくるくらいに、俺、やばかった。俺があんなに感じる身体だなんて、智駿さん知らなかっただろうな。
「……おいしい、です」
サラダを食べ終わって、マフィンをかじる。そうすると柔らかくて控えめな甘みがふわっと口の中に広がった。食感はふんわりとしっとりが混ざった、絶妙な感じ。すごく美味しくて、一口食べればごちゃごちゃと考えていたことも吹っ飛んで「おいしい」が溢れてきた。
「嬉しいな」
俺が「おいしい」と言えば、智駿さんは嬉しそうに微笑んだ。そして、マフィンをかじる俺の肩を抱く。
「……っ!?」
「気にしないで食べていていいよ」
「え、えっと……はい……」
智駿さんは俺の顔をじーっと見つめながら、頭を撫でてきた。ゆっくり、なでなでとされて、心臓が爆発しそうになる。
「そんなに見つめられたら……あの……食べづらいというか、」
「好きな人が僕のつくったものおいしそうに食べている表情みてるときゅんとしちゃって」
「……っ」
ああ、もう……。
ちび、とマフィンを少しかじる。じわっと甘みが広がった、けれど、智駿さんの微笑みの甘さには敵わない。ほんのちょっとしか口に含んでいないのに俺は延々とマフィンを噛み続けて、智駿さんに少しすり寄ってみる。胸がいっぱいでマフィンが飲み込めなくて、ずっとちびちびと食べているから、なかなかマフィンはなくならない。俺が食べている間にも、智駿さんは俺のこめかみにキスをしてきたり、愛おしげに髪を撫でてきたりと糖度が増していく。
やっと完食したときには、紅茶が冷めてしまっていた。存分に甘い甘い愛情を注がれた俺に、ストレートのアールグレイの、ほんのちょっとの苦味が、染み込んだ。
11
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる