11 / 18
光
しおりを挟む
蒼はまさ、まさ、と心の中で呟いた。
お人好しの雅文。
「顎触りたい。」
「はぁ?」
朝食を食べ終え、2人はなんとなく互いに見つめ合う。
「俺、髭すきなの。」
黒木の、がっしりしたフェイスラインをなぞる。
「まさ。」
「はい。」
黒木は照れ臭そうに返事をした。
「あのさ、蒼、」
黒木はいっていいものか迷った。
「ホストやめて。」
「俺学校行ったことないんだよ。文字は読める。いっぱい勉強した。図書館があるだろ?でも計算がわからない。」
「親子さんが学校行かせてくれなかったの?」
静かに蒼は頷き、自分の家庭ははやくから売春をしてお金は手に入れていたことを話した。
「でも母ちゃんは悪い人じゃない。俺と同じなんだ。計算ができない。お金を使っちゃうんだ。身体売ればお金が入るから。」
黒木は絶句した。
どれだけきつかったことか。
「俺が計算教える。お金を使ってみよう。一日、家事をしたらお小遣いをあげるね。初めは500円から。梅ちゃんの世話とお料理をしよう。」
「家に置いてもらってるのに、なんでお金もらっていいの?」
「蒼は、まさの子供だから。」
「俺は大人だ!!」
蒼は怒った。
「まさ、大好きなのに。なんでだよ。俺が哀れかよ!!」
黒木はその顔をじっとみる。
良かった。
今度は出ていかなかった。
「俺が悪かった。家族っていいたかった。」
「まさ。怒ってごめん。」
蒼はなんだか、悲しかった。
黒木は、蒼が傍を離れないか冷や冷やしている。
「君は立派だよ。ちゃんと大人だ。でも、例えば、えろいことするの、俺と他のおじさんとどっちがいい?」
「まさ。まさがいい。まさだけ。まさにしか、本当は、触られたくない。でも、まさ俺よりでかいから、少し、少し、怖い。」
「なんで怖い?」
「無理やりできるし、殴られないか、いつもなんでか怖い。身体が身構えちゃう。まさは、そんな事しないって思いたいのに…。」
蒼は自分が、惨めだった。
好きな人ができたのに、せっかく、見つけてくれたのに。
ぽたぽたと涙が、落ちた。
黒木が優しく、涙に舌をはわせる。
「蒼。無理しないで。辛い記憶が、なくなるまで、お医者さんにお薬をもらうよ。心の怪我を治すお医者さんいるんだ。」
「薬飲んだら、楽になる?」
黒木は今日中に、予約出来るメンタルクリニックを探した。
「まさ。」
「大丈夫。俺がずっとずっとついてるから。眠れないのは辛いだろう?」
「うん。」
「薬飲んだら、楽に眠れるよ。まずは寝て食べて遊ぼう。」
遊ぶ、蒼は遊んでみたかった。
「あの。ガキじゃないっていったくせにと思うんだけど、お絵描きしたい。まさを描く。」
俺の天使。
くしゃくしゃと頭を撫でた。
梅ちゃんもついでに撫でる。
「梅ちゃんは、いいなぁ。まさと前からいるんだろ。」
にゃーんと梅ちゃんが返事する。
そっと蒼が梅ちゃんを触った。
優しい手つきだ。
黒木は心底良かったと思った。
ちゃんと命あるものに優しくできる。
闇にさす光に見えた。
お人好しの雅文。
「顎触りたい。」
「はぁ?」
朝食を食べ終え、2人はなんとなく互いに見つめ合う。
「俺、髭すきなの。」
黒木の、がっしりしたフェイスラインをなぞる。
「まさ。」
「はい。」
黒木は照れ臭そうに返事をした。
「あのさ、蒼、」
黒木はいっていいものか迷った。
「ホストやめて。」
「俺学校行ったことないんだよ。文字は読める。いっぱい勉強した。図書館があるだろ?でも計算がわからない。」
「親子さんが学校行かせてくれなかったの?」
静かに蒼は頷き、自分の家庭ははやくから売春をしてお金は手に入れていたことを話した。
「でも母ちゃんは悪い人じゃない。俺と同じなんだ。計算ができない。お金を使っちゃうんだ。身体売ればお金が入るから。」
黒木は絶句した。
どれだけきつかったことか。
「俺が計算教える。お金を使ってみよう。一日、家事をしたらお小遣いをあげるね。初めは500円から。梅ちゃんの世話とお料理をしよう。」
「家に置いてもらってるのに、なんでお金もらっていいの?」
「蒼は、まさの子供だから。」
「俺は大人だ!!」
蒼は怒った。
「まさ、大好きなのに。なんでだよ。俺が哀れかよ!!」
黒木はその顔をじっとみる。
良かった。
今度は出ていかなかった。
「俺が悪かった。家族っていいたかった。」
「まさ。怒ってごめん。」
蒼はなんだか、悲しかった。
黒木は、蒼が傍を離れないか冷や冷やしている。
「君は立派だよ。ちゃんと大人だ。でも、例えば、えろいことするの、俺と他のおじさんとどっちがいい?」
「まさ。まさがいい。まさだけ。まさにしか、本当は、触られたくない。でも、まさ俺よりでかいから、少し、少し、怖い。」
「なんで怖い?」
「無理やりできるし、殴られないか、いつもなんでか怖い。身体が身構えちゃう。まさは、そんな事しないって思いたいのに…。」
蒼は自分が、惨めだった。
好きな人ができたのに、せっかく、見つけてくれたのに。
ぽたぽたと涙が、落ちた。
黒木が優しく、涙に舌をはわせる。
「蒼。無理しないで。辛い記憶が、なくなるまで、お医者さんにお薬をもらうよ。心の怪我を治すお医者さんいるんだ。」
「薬飲んだら、楽になる?」
黒木は今日中に、予約出来るメンタルクリニックを探した。
「まさ。」
「大丈夫。俺がずっとずっとついてるから。眠れないのは辛いだろう?」
「うん。」
「薬飲んだら、楽に眠れるよ。まずは寝て食べて遊ぼう。」
遊ぶ、蒼は遊んでみたかった。
「あの。ガキじゃないっていったくせにと思うんだけど、お絵描きしたい。まさを描く。」
俺の天使。
くしゃくしゃと頭を撫でた。
梅ちゃんもついでに撫でる。
「梅ちゃんは、いいなぁ。まさと前からいるんだろ。」
にゃーんと梅ちゃんが返事する。
そっと蒼が梅ちゃんを触った。
優しい手つきだ。
黒木は心底良かったと思った。
ちゃんと命あるものに優しくできる。
闇にさす光に見えた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる