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4 婚約破棄
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邸に戻った私は自室に籠り、着替える間も無くベッドに身体を投げ出した。
せっかく気分転換をしようと思って出掛けたティータイムを、突然現れた無能に邪魔されたのだから、少しくらい行儀が悪くても大目に見て欲しい。
先程のカフェで自分が言った事を振り返る。
「流石にちょっと言い過ぎたかしら・・・」
賢しらで鼻持ちならない女。
合理主義で可愛げの無い女。
私は世間で言われている自分の評価を知っている。
しかし、領地と商会の経営を維持する為には、オズワルドの浮気相手のライラのようにかわい子ぶってばかりはいられないのだ。
オズワルドのような馬鹿を支えながらならば尚更、自分がしっかりしなければ伯爵家が衰退してしまうと思い頑張ってきた。
とは言え、心無い声に傷付かない訳ではない。
私は枕に顔を埋めると、深いため息をついた。
お父様は今回の件を侯爵家に厳重抗議したようだが、慰謝料の増額はしなかった。
公の場で、他家の令嬢に危害を加えようとしたのだから、抗議だけで済ませると言うのはかなり寛大な措置なのだが、お父様は今回の件を、婚約破棄を有利に進めるための材料の一つとして利用するつもりのようだ。
お父様がそう決めたならば、私に否やは無い。
セルヴィッチ家は、金銭の問題も然る事ながら、オズワルドの評判が地に落ちており、そちらの対応も大変そうである。
自分の息子の尻拭いとは言え、侯爵様も頭が痛いだろう。可哀想に。
嫡男は実直な方なのに、何故次男はあんな出来損ないになってしまったのか。
それからの日々は嘘のように平和に過ぎていった。
婚約者に煩わされないというのは、こんなにも心穏やかに過ごせる物なのか。
私がオズワルドを思い出す事もなくなった頃、久し振りにお父様の執務室に呼び出された。
私が入室すると、見るからに上機嫌のお父様に迎えられた。
私達はいつかのように、ソファーに向かい合って腰を下ろした。
「改まって呼び出すなんて、どうしたのですか?夕食の席では話せない事ですか?」
「ああ。今日は嬉しい知らせだ。
オズワルド・セルヴィッチとの婚約が正式に破棄された」
忘れかけていた名前が出て驚いた。
これでやっとセルヴィッチ侯爵家と無関係になれると思うとほっとする。
「まあ!ようやく折り合いがついたのですね。良かったですわ。
お父様にはお手間を取らせて申し訳ありませんでした。
で、どのように決着しましたの?」
お父様の表情が少しだけ硬くなった気がした。
「それは、もう一つの報告と関連しているのだが・・・・・・。
実は、既にお前の次の婚約が成立している」
「えっっ!?」
余りにも予想外の言葉に、驚いて一瞬固まってしまった。
お父様は、慎重に私の反応を伺っているようだ。
「・・・どなたですの?」
「それが・・・ジェラルド・セルヴィッチ君なんだが」
「はぁっ?」
ーーー無関係にならなかった。
せっかく気分転換をしようと思って出掛けたティータイムを、突然現れた無能に邪魔されたのだから、少しくらい行儀が悪くても大目に見て欲しい。
先程のカフェで自分が言った事を振り返る。
「流石にちょっと言い過ぎたかしら・・・」
賢しらで鼻持ちならない女。
合理主義で可愛げの無い女。
私は世間で言われている自分の評価を知っている。
しかし、領地と商会の経営を維持する為には、オズワルドの浮気相手のライラのようにかわい子ぶってばかりはいられないのだ。
オズワルドのような馬鹿を支えながらならば尚更、自分がしっかりしなければ伯爵家が衰退してしまうと思い頑張ってきた。
とは言え、心無い声に傷付かない訳ではない。
私は枕に顔を埋めると、深いため息をついた。
お父様は今回の件を侯爵家に厳重抗議したようだが、慰謝料の増額はしなかった。
公の場で、他家の令嬢に危害を加えようとしたのだから、抗議だけで済ませると言うのはかなり寛大な措置なのだが、お父様は今回の件を、婚約破棄を有利に進めるための材料の一つとして利用するつもりのようだ。
お父様がそう決めたならば、私に否やは無い。
セルヴィッチ家は、金銭の問題も然る事ながら、オズワルドの評判が地に落ちており、そちらの対応も大変そうである。
自分の息子の尻拭いとは言え、侯爵様も頭が痛いだろう。可哀想に。
嫡男は実直な方なのに、何故次男はあんな出来損ないになってしまったのか。
それからの日々は嘘のように平和に過ぎていった。
婚約者に煩わされないというのは、こんなにも心穏やかに過ごせる物なのか。
私がオズワルドを思い出す事もなくなった頃、久し振りにお父様の執務室に呼び出された。
私が入室すると、見るからに上機嫌のお父様に迎えられた。
私達はいつかのように、ソファーに向かい合って腰を下ろした。
「改まって呼び出すなんて、どうしたのですか?夕食の席では話せない事ですか?」
「ああ。今日は嬉しい知らせだ。
オズワルド・セルヴィッチとの婚約が正式に破棄された」
忘れかけていた名前が出て驚いた。
これでやっとセルヴィッチ侯爵家と無関係になれると思うとほっとする。
「まあ!ようやく折り合いがついたのですね。良かったですわ。
お父様にはお手間を取らせて申し訳ありませんでした。
で、どのように決着しましたの?」
お父様の表情が少しだけ硬くなった気がした。
「それは、もう一つの報告と関連しているのだが・・・・・・。
実は、既にお前の次の婚約が成立している」
「えっっ!?」
余りにも予想外の言葉に、驚いて一瞬固まってしまった。
お父様は、慎重に私の反応を伺っているようだ。
「・・・どなたですの?」
「それが・・・ジェラルド・セルヴィッチ君なんだが」
「はぁっ?」
ーーー無関係にならなかった。
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