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3 カフェでの騒動
婚約破棄についての話は、すぐにセルヴィッチ侯爵家に伝えられた。
不貞による慰謝料の支払いや、支援金の返済、オズワルドに支給した支度金の返済など、合わせると莫大な額になる。
セルヴィッチ侯爵家の財政難を考えると、全てを回収するのは難しいかもしれない。
今も返済方法や期限についての折衝が続けられている。
因みに支度金の用途として、婚約者である私へのプレゼントの購入費も含まれているのだが、一度も、花一輪さえも、贈られたことがない。
多分それもライラに流用されていたのだろう。
厚かましいにも程がある。
邸に閉じ籠っているのにも飽きた私は、専属侍女のドナを呼んだ。
「外出するので同行して欲しいの。王都に新しいカフェが出来たのですって」
そのカフェは隣国の珍しい菓子やお茶を提供しているらしく、最近社交界で話題の中心になっていた。
「では、馬車と護衛をご用意いたしますので、少々お待ち下さい」
思い立った時に直ぐに行動できるのは、独り身の気楽な所だ。
こんな時、今までならば礼儀として婚約者を誘わなければならなかった。
まあ殆どの場合はオズワルドに断られるのだけれど、気紛れで誘いを受けられた場合は地獄だ。
何が悲しくて嫌いな相手と出掛けなければならないのか。
無駄に精神が鍛えられた。
そう考えると、今の状況を手放すのが惜しい気さえしてくる。
もうしばらく婚約が決まらなくても良いかもしれない。
「セシリア!」
私がカフェでお茶をしていると、不機嫌そうな声に名を呼ばれた。
ズンズンとこちらに向かってくる無礼な男に、私の護衛が警戒の色を強める。
それを視線で宥めて、男の名を口にした。
「オズワルド様、婚約は破棄されるのですから、呼び捨てになさるのはご遠慮くださいませ」
途端にオズワルドの眉が吊り上がる。
「婚約破棄などしない!お前は他に貰い手など無いのだから、俺と結婚するしかないだろう」
呆れた。
少し意地悪をしたい気分になってくる。
元々言われっぱなしは性に合わないのだ。
「まあ。私をあんなに蔑ろにしておいて、婚約破棄を予測すらしていなかったのですか?
いえ、優秀なオズワルド様の事ですもの。
きっと予測した上で、平凡な私などには想像もつかない壮大な目的がお有りでしたのよね。
是非、その目的とやらをお聞かせ願いたいですわぁ」
「・・・・・・」
オズワルドが目を泳がせている。
「あら、何も仰らないのですね。
買い被り過ぎだったのかしら?」
軽く口角を上げて挑むように見つめると、オズワルドも流石に馬鹿にされた事がわかったのか、怒りに震え始める。
「貴様っっ・・・!」
私に掴みかかろうとしたが、護衛に取り押さえられた。
カフェの店内で、こんなに衆目を集めながらトラブルを起こすなんて浅慮が過ぎる。
今に始まった事ではないが。
立ち去る際に振り返って最後の言葉を贈る。
「無能は要りません」
後でお店には何かお詫びをしなければならないわね。
全く迷惑な。
不貞による慰謝料の支払いや、支援金の返済、オズワルドに支給した支度金の返済など、合わせると莫大な額になる。
セルヴィッチ侯爵家の財政難を考えると、全てを回収するのは難しいかもしれない。
今も返済方法や期限についての折衝が続けられている。
因みに支度金の用途として、婚約者である私へのプレゼントの購入費も含まれているのだが、一度も、花一輪さえも、贈られたことがない。
多分それもライラに流用されていたのだろう。
厚かましいにも程がある。
邸に閉じ籠っているのにも飽きた私は、専属侍女のドナを呼んだ。
「外出するので同行して欲しいの。王都に新しいカフェが出来たのですって」
そのカフェは隣国の珍しい菓子やお茶を提供しているらしく、最近社交界で話題の中心になっていた。
「では、馬車と護衛をご用意いたしますので、少々お待ち下さい」
思い立った時に直ぐに行動できるのは、独り身の気楽な所だ。
こんな時、今までならば礼儀として婚約者を誘わなければならなかった。
まあ殆どの場合はオズワルドに断られるのだけれど、気紛れで誘いを受けられた場合は地獄だ。
何が悲しくて嫌いな相手と出掛けなければならないのか。
無駄に精神が鍛えられた。
そう考えると、今の状況を手放すのが惜しい気さえしてくる。
もうしばらく婚約が決まらなくても良いかもしれない。
「セシリア!」
私がカフェでお茶をしていると、不機嫌そうな声に名を呼ばれた。
ズンズンとこちらに向かってくる無礼な男に、私の護衛が警戒の色を強める。
それを視線で宥めて、男の名を口にした。
「オズワルド様、婚約は破棄されるのですから、呼び捨てになさるのはご遠慮くださいませ」
途端にオズワルドの眉が吊り上がる。
「婚約破棄などしない!お前は他に貰い手など無いのだから、俺と結婚するしかないだろう」
呆れた。
少し意地悪をしたい気分になってくる。
元々言われっぱなしは性に合わないのだ。
「まあ。私をあんなに蔑ろにしておいて、婚約破棄を予測すらしていなかったのですか?
いえ、優秀なオズワルド様の事ですもの。
きっと予測した上で、平凡な私などには想像もつかない壮大な目的がお有りでしたのよね。
是非、その目的とやらをお聞かせ願いたいですわぁ」
「・・・・・・」
オズワルドが目を泳がせている。
「あら、何も仰らないのですね。
買い被り過ぎだったのかしら?」
軽く口角を上げて挑むように見つめると、オズワルドも流石に馬鹿にされた事がわかったのか、怒りに震え始める。
「貴様っっ・・・!」
私に掴みかかろうとしたが、護衛に取り押さえられた。
カフェの店内で、こんなに衆目を集めながらトラブルを起こすなんて浅慮が過ぎる。
今に始まった事ではないが。
立ち去る際に振り返って最後の言葉を贈る。
「無能は要りません」
後でお店には何かお詫びをしなければならないわね。
全く迷惑な。
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