17 / 25
17 魅力的な勧誘
しおりを挟む
「貴方のお父様のカルヴァート公爵には、王太子殿下の婚約者だった頃に何度かお会いした事があるわ。
その節は、お父様にお世話になりました」
言われてみれば、カルヴァート公爵とルシアン様は良く似ている。
柔和な雰囲気のイケオジなのに、たまに腹黒そうな笑みを浮かべる感じとか、ソックリだったわ。
「覚えていてくれて光栄だね。
その父が、君の外交能力を高く評価していてね。
帝国へ連れて帰る様にと指示されたんだ」
当時まだ人見知りだった私を、そんな風に評価してくれていたなんて、知らなかった。
嬉しい反面、過大評価なのでは無いかとも思う。
不安な顔でグレッグを見上げると、彼は優しく微笑んだ。
「カルヴァート公爵は人を見る目がある様ですね」
私に対して辛辣なグレッグがそう言うなら、公爵の評価は間違ってないって事なのかな?
帝国行きを迷っている私に、ルシアン様は次々とセールストークを展開する。
「勿論、決めるのは君だけど、俺としては一緒に来てくれると有り難いんだよな。
君を連れて帰れなかったら、父上にブツブツ煩く言われそうだしね。
君を迎えるに当たって、三つの選択肢を用意したんだけど、聞いてくれる?」
「選択肢?」
「そう。
一つ目は、俺の婚約者として帝国へ来る事」
ルシアン様がそう言った途端に、グレッグの表情が冷たくなった。
気の所為か、体感温度まで下がった気がする。
「待て待て待て。
そんな、射殺しそうな目で見るなよ。
父上がそう希望しているから、ダメ元で言ってみただけなんだから」
苦笑いのルシアン様は、慌てて一つ目の選択肢を取り下げた。
グレッグの殺気が少しだけ緩む。
「二つ目は、カルヴァート公爵家の養女になって帝国へ来る事。
この場合、誕生日の関係で俺の義妹って事になるんだろうな。
カルヴァート家の娘として、外交の仕事を手伝って貰う」
う~ん・・・、せっかく家を出たのに、また公爵令嬢になるのか。
養女の立場で社交に出るのは、色々と苦労しそうだ。
それに、高位貴族の令嬢になれば、やはり政略結婚は避けて通れないだろう。
そんな事になったら、グレッグが何をするか分からない。
考えただけで、ちょっと怖い。
グレッグも同じ事を考えているのか、先程までは消えていた冷気が再び漏れ始める。
「あの~、養女になったら、縁談とかは・・・」
「今の所、俺も父上もアビゲイルを政略の駒にはしないつもりだけど、絶対にとは言えないかもね。
いくらカルヴァート公爵家でも、断れない縁談は多少はあるから」
そうだよね・・・。
例えば皇帝からの命であれば、いくらカルヴァート家が名家でも断る事は難しい。
やっぱり貴族は厄介だ。
「・・・ですよね。
では、三つ目の選択肢も聞かせて下さい」
「三つ目は、俺か父上の秘書として、公爵家に仕える事。
外遊の際には一緒に付いて来て貰うから色々な国に行けるし、住み込みで働く事も可能だ。
まあ、これが一番安全で無難かな」
どうだろう?
労働条件を細かく確認しなければ分からないが、良い話の様な気もする。
何よりも、見知らぬ土地で平民として独り暮らしするのに比べて、安全面が保証されているのが嬉しい。
さっき、グレッグに叱られて実感したのだ。
やっぱり貴族令嬢の独り暮らしは危険だよね。
前世の記憶があるからって油断してたけれど、ここは平和な日本とは違うのだ。
なんてったって私の見た目は公爵令嬢アビゲイルなんだし、もっと自覚を持たなければ。
帝国行きにかなり気持ちが傾き始めている私に、ルシアン様は更に追い込みをかける。
「今ならグレッグさんも護衛騎士兼従者として雇っちゃうよ。
二人とも高待遇をお約束。
ウチの邸は広いから、グレッグさんも住み込み可能だしね。
仕事中もアビゲイルと一緒にいられることが多いよ」
その言葉にグレッグがピクリと反応した。
「もう一声!」
こんな感じの場面、前世で見たことがあるな。
ああ、深夜のテレビショッピングだわ。
ア○ミカとかが出てるみたいなヤツ。
「じゃあ・・・・・・、アビゲイルが外遊とかに出る時には、必ずグレッグさんを護衛に付けるって契約でどう?」
「乗った!!
決まりです。
帝国へ行きますよ、アビー」
いや、お前が決めるんかいっっ!!
「ん~、まあ、詳しい労働条件について折衝しないと何とも言えませんが、お話を聞いてみる価値はあるかと思います。
一度、カルヴァート公爵家へ伺ってみてから決めてもよろしいですか?」
「やった!
勿論、最終的な判断は、契約の内容を確認してからで構わないよ。
実はもう君達の迎えの馬車を呼んであるんだ。
さっき、この場所を通信用の魔道具で御者に知らせたから、多分あと十五分位で来ると思う。
俺は先に馬で帰っているから、帝国に入ったら、帝都のタウンハウスの方へ来てくれ」
わ~ぉ、用意周到過ぎない?
囲い込まれている感が半端無い。
ルシアン様は、グレッグと固い握手を交わすと、再びヒラリと馬に飛び乗り、来た時と逆の方向へ去って行った。
嵐みたいな人だな。
本当は、せっかく自由になったんだから、辻馬車を乗り継いで、のんびりと寄り道とかしながら向かおうかと思ってたのに・・・・・・。
まあ、帝国の公爵家が用意してくれた馬車ならば、辻馬車とは乗り心地が段違いだろう。
道のりは長いのだから、その方が良かったのかもしれない。
その節は、お父様にお世話になりました」
言われてみれば、カルヴァート公爵とルシアン様は良く似ている。
柔和な雰囲気のイケオジなのに、たまに腹黒そうな笑みを浮かべる感じとか、ソックリだったわ。
「覚えていてくれて光栄だね。
その父が、君の外交能力を高く評価していてね。
帝国へ連れて帰る様にと指示されたんだ」
当時まだ人見知りだった私を、そんな風に評価してくれていたなんて、知らなかった。
嬉しい反面、過大評価なのでは無いかとも思う。
不安な顔でグレッグを見上げると、彼は優しく微笑んだ。
「カルヴァート公爵は人を見る目がある様ですね」
私に対して辛辣なグレッグがそう言うなら、公爵の評価は間違ってないって事なのかな?
帝国行きを迷っている私に、ルシアン様は次々とセールストークを展開する。
「勿論、決めるのは君だけど、俺としては一緒に来てくれると有り難いんだよな。
君を連れて帰れなかったら、父上にブツブツ煩く言われそうだしね。
君を迎えるに当たって、三つの選択肢を用意したんだけど、聞いてくれる?」
「選択肢?」
「そう。
一つ目は、俺の婚約者として帝国へ来る事」
ルシアン様がそう言った途端に、グレッグの表情が冷たくなった。
気の所為か、体感温度まで下がった気がする。
「待て待て待て。
そんな、射殺しそうな目で見るなよ。
父上がそう希望しているから、ダメ元で言ってみただけなんだから」
苦笑いのルシアン様は、慌てて一つ目の選択肢を取り下げた。
グレッグの殺気が少しだけ緩む。
「二つ目は、カルヴァート公爵家の養女になって帝国へ来る事。
この場合、誕生日の関係で俺の義妹って事になるんだろうな。
カルヴァート家の娘として、外交の仕事を手伝って貰う」
う~ん・・・、せっかく家を出たのに、また公爵令嬢になるのか。
養女の立場で社交に出るのは、色々と苦労しそうだ。
それに、高位貴族の令嬢になれば、やはり政略結婚は避けて通れないだろう。
そんな事になったら、グレッグが何をするか分からない。
考えただけで、ちょっと怖い。
グレッグも同じ事を考えているのか、先程までは消えていた冷気が再び漏れ始める。
「あの~、養女になったら、縁談とかは・・・」
「今の所、俺も父上もアビゲイルを政略の駒にはしないつもりだけど、絶対にとは言えないかもね。
いくらカルヴァート公爵家でも、断れない縁談は多少はあるから」
そうだよね・・・。
例えば皇帝からの命であれば、いくらカルヴァート家が名家でも断る事は難しい。
やっぱり貴族は厄介だ。
「・・・ですよね。
では、三つ目の選択肢も聞かせて下さい」
「三つ目は、俺か父上の秘書として、公爵家に仕える事。
外遊の際には一緒に付いて来て貰うから色々な国に行けるし、住み込みで働く事も可能だ。
まあ、これが一番安全で無難かな」
どうだろう?
労働条件を細かく確認しなければ分からないが、良い話の様な気もする。
何よりも、見知らぬ土地で平民として独り暮らしするのに比べて、安全面が保証されているのが嬉しい。
さっき、グレッグに叱られて実感したのだ。
やっぱり貴族令嬢の独り暮らしは危険だよね。
前世の記憶があるからって油断してたけれど、ここは平和な日本とは違うのだ。
なんてったって私の見た目は公爵令嬢アビゲイルなんだし、もっと自覚を持たなければ。
帝国行きにかなり気持ちが傾き始めている私に、ルシアン様は更に追い込みをかける。
「今ならグレッグさんも護衛騎士兼従者として雇っちゃうよ。
二人とも高待遇をお約束。
ウチの邸は広いから、グレッグさんも住み込み可能だしね。
仕事中もアビゲイルと一緒にいられることが多いよ」
その言葉にグレッグがピクリと反応した。
「もう一声!」
こんな感じの場面、前世で見たことがあるな。
ああ、深夜のテレビショッピングだわ。
ア○ミカとかが出てるみたいなヤツ。
「じゃあ・・・・・・、アビゲイルが外遊とかに出る時には、必ずグレッグさんを護衛に付けるって契約でどう?」
「乗った!!
決まりです。
帝国へ行きますよ、アビー」
いや、お前が決めるんかいっっ!!
「ん~、まあ、詳しい労働条件について折衝しないと何とも言えませんが、お話を聞いてみる価値はあるかと思います。
一度、カルヴァート公爵家へ伺ってみてから決めてもよろしいですか?」
「やった!
勿論、最終的な判断は、契約の内容を確認してからで構わないよ。
実はもう君達の迎えの馬車を呼んであるんだ。
さっき、この場所を通信用の魔道具で御者に知らせたから、多分あと十五分位で来ると思う。
俺は先に馬で帰っているから、帝国に入ったら、帝都のタウンハウスの方へ来てくれ」
わ~ぉ、用意周到過ぎない?
囲い込まれている感が半端無い。
ルシアン様は、グレッグと固い握手を交わすと、再びヒラリと馬に飛び乗り、来た時と逆の方向へ去って行った。
嵐みたいな人だな。
本当は、せっかく自由になったんだから、辻馬車を乗り継いで、のんびりと寄り道とかしながら向かおうかと思ってたのに・・・・・・。
まあ、帝国の公爵家が用意してくれた馬車ならば、辻馬車とは乗り心地が段違いだろう。
道のりは長いのだから、その方が良かったのかもしれない。
623
あなたにおすすめの小説
無実ですが、喜んで国を去ります!
霜月満月
恋愛
お姉様曰く、ここは乙女ゲームの世界だそうだ。
そして私は悪役令嬢。
よし。ちょうど私の婚約者の第二王子殿下は私もお姉様も好きじゃない。濡れ衣を着せられるのが分かっているならやりようはある。
━━これは前世から家族である、転生一家の国外逃亡までの一部始終です。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
捨てられた令嬢と、選ばれなかった未来
鍛高譚
恋愛
「君とは釣り合わない。だから、僕は王女殿下を選ぶ」
婚約者アルバート・ロンズデールに冷たく告げられた瞬間、エミリア・ウィンスレットの人生は暗転した。
王都一の名門公爵令嬢として慎ましくも誠実に彼を支えてきたというのに、待っていたのは無慈悲な婚約破棄――しかも相手は王女クラリッサ。
アルバートと王女の華やかな婚約発表の裏で、エミリアは社交界から冷遇され、"捨てられた哀れな令嬢"と嘲笑される日々が始まる。
だが、彼女は決して屈しない。
「ならば、貴方たちが後悔するような未来を作るわ」
そう決意したエミリアは、ある人物から手を差し伸べられる。
――それは、冷静沈着にして王国の正統な後継者、皇太子アレクシス・フォルベルト。
彼は告げる。「私と共に来い。……君の聡明さと誇りが、この国には必要だ」
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる