【完結】愛を拒絶した王女に捧げる溺愛

miniko

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11 余所行き

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「こちらが、私が開発したカラフルなイチゴです。
 如何ですか?意外と鮮やかな色になっているでしょ?」

 リベリオ様が誇らし気にイチゴの見た目の感想を問うと、オーナーさんは面白そうにニヤリと笑った。

「おう、随分気取ってるじゃないか。
 お前が自分の事を『私』と言う日が来るなんてなぁ」

 ふ~ん……、成る程。
 本来の彼の一人称は『私』ではないのか。

 私と接している時の彼は、余所行きの顔なのかもしれないと思うと、少しだけ寂しい様な気がした。
 まだ知り合ったばかりだし、婚約者と言っても契約結婚になる可能性もあるのだから、無理に距離を縮める必要は無いのかも知れないけど……。


「お前、ちょっと煩い!」

 リベリオ様はオーナーさんに向かってぞんざいに言い放つと、シッシッと手で追い払う動作をした。

「ハイハイ、そんなに睨むなって。デートのお邪魔は致しませんよ~。
 では失礼致します、王女殿下。どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ」

 リベリオ様には揶揄う様に、私にはペコリと頭を下げて、オーナーさんは店の奥へと再び消えて行った。
 代わりに先程の女性店員さんがやって来て、紅茶をカップに注いでくれる。
 トポトポという音と共に、大好きな香りが広がった。

「アールグレイですね。一番好きな紅茶なんです」

「知ってます。カリーナさんが教えてくれましたから。
 イチゴのタルトもお好きなんですよね?」

「はい。私の情報は色々と筒抜けなのですね」

「いいえ、彼女達はとても口が固くて苦労しています。
 この店のクッキーを賄賂として渡して、漸く貴女の情報を少しだけ聞き出しましたが、それでも好きな食べ物くらいしか教えてもらえませんでしたから」

 悲しそうな表情を作って肩をすくめるリベリオ様に、思わず笑みが零れる。

「そんなの私に直接聞けば良いのに」

「本人に聞かずに、さり気無く提供するから粋なんじゃないですか」

「ふふっ。カリーナから聞いたってネタバレしてしまっては、全然さり気無くないですよ」

「確かに。以後気を付けます」

 真面目くさった顔で頷くリベリオ様。

「さあ、ではリベリオ様のご自慢のイチゴを頂きましょうか。
 紅茶が冷めない内に」

「どうぞ召し上がれ。私の自信作です」


 初めて食べた不思議な色のイチゴは、普通の物より少し果肉がしっかりしていて、甘酸っぱい味がした。



 帰りも店から馬車まで、リベリオ様に手を繋がれてゆっくりと歩く。
 彼はいつも、私と手を繋いだり、頭を撫でたりする程度の、軽いスキンシップを取ってくる。

 それは、私達が夫婦生活を出来そうかどうかを確かめる為の行動なのだとか。
 白い結婚にするかどうかは、婚姻迄の間に実際私と交流してみてから決めるとの事。
 お互いを知ってから方針を決めると言うのは合理的だし、私も賛成だ。
 彼の視線や態度には、一瞬たりとも私に対する欲や熱が感じられないので、今の所は触れられても怖いと思った事はない。

 寧ろ、彼のゴツゴツした大きな手に触れられるのは、何故か安心する。
 そんな自分の気持ちに、少しだけ戸惑いを覚えていた。


 そうやって彼との穏やかな日々を過ごす中で、あの事件は起きたのだ。

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