着ぐるみ刑

ごむらば

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着ぐるみ刑

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人権を剥奪するかのようにラバースーツを着せられ肌の露出がなくされて黒一色となり、リアルな怪獣の着ぐるみへと押し込まれていく。
怪獣の着ぐるみの中には私の小さな体と着ぐるみの隙間を埋めるべく、大量の詰め物がしてあった。
あまりに詰め物が多いため、私の肌の露出を全く失くしてしまった黒いラバースーツが、怪獣の着ぐるみの中への侵入を妨げる。
滑りが悪いためか、ラバースーツに何か液体のようなモノが塗られ、ラバースーツ越しにその液体の冷たさが伝わってくる。
足、体、頭と私の体は怪獣の着ぐるみの中へとどんどん押し込められていく。
そんな私は必死に自分は何もしていない無実だと訴えようとするが、口にはボールギャグがラバースーツの上から嵌められ、ただ行き場のない私の叫びと涎はラバースーツの中へと消えていった。
その後、グイグイ押し込められた私の体は怪獣の中へ完全に収まったようで、息苦しさが増す。
そして、追い討ちをかけるように、背中をグッと強い力で押された後、ファスナーを閉める様な音がだんだん耳へ近づいてきた。

さて、私が何故怪獣の着ぐるみを着ることになったかをご説明します。
私の身近で起こった事件がきっかけで、私は容疑者に挙げられました。
その後、刑事たちの作り上げられたストーリーに沿うように進められ、冤罪であったが無期懲役の判決を受け刑務所へ。
その刑務所では収監される囚人が、あまりにも多く収監が困難になったことから無期懲役の囚人は動きが著しく制限される着ぐるみへと押し込められた上、着ぐるみを脱ぐことができないようにして一般社会の中でスーツアクターとして働かせるシステムになっていた。
このシステムの事は口外できないように口にはボールギャグを嵌めて言葉を奪い、ラバースーツと一体となっているマスクは、鼻のところの呼吸穴しか開いておらず、黒いラバーで覆われているため視覚も奪われていた。
残った聴力も怪獣の着ぐるみに押し込められて外の様子がほとんど分からなくなってしまった。
なので今、感じられことといえば体の感覚のみ、手を引かれされるがまま誘導に従うことしかできなかった。

暑い真夏の炎天下、私は屋外へ連れてこられたようで、着ぐるみの中の温度はどんどん上昇していく。
私の毛穴という毛穴から汗が噴き出ている感覚がし、間も無くラバースーツの中に汗が溜まり不快感が増してくる。
「暑い!出して!」
両手を前に出し周りにいるであろう人に助けを求める。
人がいると感じられるのは微かに悲鳴のような声が聞こえてくるから。
その方へと歩みを進めて助けを求めたが、女の私の体力はゴツい怪獣の着ぐるみと夏の暑さですぐに体力を奪われて動けなくなった。
そして、ついには力なく倒れた。
受け身を取ることなく前倒しに。



体を強く揺さぶられる感覚がして、気がついた。
目を開けても真っ暗で何も見えない。
体中にすごい汗をかいていることから、着ぐるみの中である事は間違いない。
そして今の自分の置かれた状況から暑さで気を失ってしまったことは何となく理解できた。
相変わらず、ラバースーツを着ているようで溜まった汗が冷えてさらに不快に感じる。
このままずっと着ぐるみに閉じ込められるのかと思うと、もう何もかもどうでもよくなって抵抗する気も体を動かす気力もなくなってしまった。
バタバタと抵抗することなく、その場にひっくり返える。
そのまま時間が過ぎる。

不意に手を引かれ体を起こされた。
そして2度と開かれることのないはずのファスナーが開かれた。
今まで私を強く圧迫していた感覚が緩む。
そして怪獣の着ぐるみの中へと手が入ってきて私の体を着ぐるみの外へと引き出す。
冤罪であることが分かったんだと思うと急に涙が止まらない、ボールギャグのせいで嗚咽する。
全身真っ黒なラバースーツのまま、外へと引き出されたが、力なく床に寝そべるようにして動けない私のマスクが外される。
「大丈夫ですか?」
そこには私の知っている顔がいくつも並んでいた。
私はホッとしてそのまま気を失ってしまった。



実はこれは大学の卒業レポートとして自分自身が被験者となったもの。
”人は触覚以外すべて感覚を奪われるとどれくらいの時間で無気力になるのか”というもの。
催眠術で冤罪で着ぐるみに閉じ込められる設定としてあった。
ラバースーツを着せられた後からはすべてビデオに収められていた。

怪獣の着ぐるみを着せられた私はおぼつかない足取りで歩く。
怪獣の中身が自分であることは分かっているが、何とも迫力がない。
そのまま、校舎の外へ手を引かれて出ていく。
中庭をグルッと一周して、校舎へ戻る途中で怪獣は前方にゆっくりと倒れてしまった。
回りに付き添ってくれていた人たちは慌てて校舎の中へと運び入れ、怪獣から私を出していた。
時間にして30分程度。
しかし、私自身気を失っていたのもあるが、少なくとも半日以上は怪獣の着ぐるみの中で過ごした感覚だった。


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