死んだらこうなった

藤村託時

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第1章

第5話 不穏

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 映画館でただで映画を見れるのでこの世界もなかなか悪くないのかもしれない。
 そう思いながらも寒さで身体を震わせていた。

 「マジで毛布くらい無いのかよ……」

 そろそろ寝たい所だが、この寒さで寝られるかどうか心配だ。
 生きていたらこの寒さで寝たら凍死してしまうだろう。
 他のみんながどうこの寒さを乗り切っているのか気になったため、リビングに行くことにした。
 リビングには谷井さんがお茶を飲んでいた。

 「木六さん、お茶良かったらお茶でもいかがですか?」
 「いいんですか?お茶飲みたいです!」

 ここでは別に空腹感や喉が渇くことは無いが、何も飲まず食わずだと生きている感覚がしない。まぁ死んでいるのだが。

 「はい、お茶を飲んで身体を暖めてくださいね」
 「ありがとうございます。っていうか地獄でもお茶はあるんですね。どこかで売っているんですか?」
 「はい、意外といろんなものが売ってるんですよぉ」

 地獄にも店は存在するようだ。
 みんなが外に行くのは買い物しに行ってるのかもしれないな。

 「そういえば、谷井さんは毛布とか持ってたりしますか?」
 「ええ、毛布は持っていますよ。そういえば木六さんは毛布がないのでしたね」
 「そうなんですよ。寒くて寒くて仕方なくて……」
 「それでしたら私は毛布余分に持ってるのであげますよ」
 「本当ですか?ありがとうございます」
 「お茶を飲んでいてください。私は自分の部屋から毛布を持ってきますね」

 女神のような人だ。
 なんでこの人が地獄に落ちているのかが分からない。
 基本この家の人たちはみんないい人だから何かおかしさを感じる。
 あれか?
 良い人が少し自分が悪いことをした時に地獄に落ちちゃうって考えすぎて、そのまま地獄に落ちたとかそういうことか?
 だとしたら死後のシステムだいぶ無茶苦茶じゃねぇか。
 そんなことを考えながらお茶を飲んでいたら谷井さんが戻ってきた。

 「こちらの毛布を使ってください」
 「助かります。本当に良い人ですね。地獄に相応しくないですよ」
 「いえいえ、そんな……」
 「生きていた頃、何か悪いこととかしたことあるんですか?」
 「ありますよ。ご飯を時々残したり、遅刻してしまったり……」
 「そんなの全然悪いことに入らないですよぉ」

 やはり、自分に厳しいが故に地獄に来てしまったパターンか……

 「それでは、私はもう部屋に戻りますね」
 「はい、いろいろとありがとうございます」

 谷井さんは会釈をしながらリビングを去って行った。
 俺もお茶が飲み終わった後、湯呑みを洗い部屋に戻ることにした。
 そして部屋ですぐに毛布に包まり、大人しく眠った。

 ──次は暑苦しさで目を覚ました。
 暑すぎる……
 40℃近くの猛暑日に室外にいるような暑さだ。
 気味が悪いのはこんなに暑いのに汗は出てこない所だ。
 この身体は感覚があるだけで、やはり基本的に死んでいる状態に近いのだ。
 腐らない死体的な。
 とりあえず、またリビング1度向かうことにした。

 「あっ、木六君おはよー!」
 「「おはようございます」」
 「みなさん、おはようございます。いやぁ、部屋の中でこんな暑いなんてとんでもないですね」
 「そうなんだよ~。外出たら更に焼けるかと思うくらい暑いよぉ」
 「いや絶対出たくないですね……みなさんは今日も外出するんですか?」
 「まぁね。いろいろここで暮らしているとやることも出てくるからさ」
 「そうなんですね。用事は買い物とかですか?」
 「まぁそんなところかな~」

 入野さんはそう答えながらうちわを扇いでいた。

 「木六君もうちわくらい欲しいよね。私のあげるね」
 「ありがとうございます」
 「じゃあ私たちそろそろ出かけるから」
 「はい、行ってらっしゃい」

 今日もまた3人は外に出かけるらしい。
 この暑さで外に出るなんて嫌すぎるが、さすがにハブられてる感じがして少しもやもやする。
 尾行してみよう。

 3人を追いかけ俺も外に出ることにした。
 絶対にバレてはいけないので、確実に距離を取らねば…………
 外に出たところ初日のような霧は無かった。
 霧があったら尾行は難しかっただろうが、霧があれば見を隠すのが楽でもあっただろう。

 …………さすがに40℃を超えた暑さは今まで経験したことの無い感覚だった。
 身体が焼かれ続けている感じだ。
 どうやらここは地面が赤黒いタイルのようなものできているようだ。
 以前は霧で周りが何も見えなかったが、周りにはあちこちに家が建っている。

 3人の姿を見失わないように家で身を隠しながら尾行していく。
 昨日に引き続き、まさか死んでからストーカーになるとは思わなかった。

 体感15分ほど尾行を続けていたところ3人はビルの中へ入っていった。
 付けていた間、基本的に家しかなかったが所々ビルが建っているのを見かけた。

 3人は階段を登り始めたので、慎重に追いかけて上っていく。
 彼女たちは3階で上るのを辞め、部屋へ入っていった。

 部屋のドアの隙間から会話を聞くことにした。

 「今日は入野さん早めに恩売ってたね」
 「まぁ先にやっちゃうのが楽だしね~」
 「私は昨日リビングに木六さんが来てくれなかったら恩を売れなかったので、危なかったです」

 恩を売る?
 どういうことだ……

 「まぁ、平等に日替わりで恩を売る人を決めているから、外すわけにはいきませんしね」
 「そうなんですよね」

 こいつらマジか……
 地獄に落ちろよ──
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