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第1章
第14話:真夏の朝の影②
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ーーズズズズ
茶をすする音がドームに響く。
「ど、どうでしょう?」
「ふむ。珍しい味じゃが悪くない。何処と無く懐かしい味のような気もするの」
「よ、良かった~。」
「それで、スミカの話だったかの?」
「はい、おじいさんがスミカに初めて会った時はどんな感じでしたか?」
「ううむ。そうじゃなあ、お嬢ちゃんよりももう少し小さかったかのう。見た目の割にはしっかりしとったわい。」
自分より小さな頃のスミカを想像するだけで
ごくり。と思わず息を飲んでしまうくらい興味深かった。
その年ごろでどれだけの魔法が使えたのか、
どのくらい薬学の知識があったのか、師を追う弟子として気になった。
「スミカもお嬢…お前さんのように誰かに薬学を教わっとったわい。」
言い直したのはきっと話をきいて私が自分とスミカを比べようとしているのを察して、子供扱いしないための配慮だったのだろう。
「スミカにも師匠がいたんですかっ!?」
「さあの。師と呼べる者だったかどうかは知らぬが、魔術師だったことは記憶しておる」
「スミカの師匠…。」
「わしもここにこれる日が限られておるからの、関係性についてはよう知らん。じゃが」
「じゃが…?」
「とても美人だったわい」
(お、おぅ)
内心もっとスミカを知るための裏話が聞けるかと期待していた部分もあったので
少し拍子抜けだった。
「わしが見たのはその一度きりじゃ」
「え?」
目の前の老人は懐からパイプを取り出し
口に咥えて煙を吸いだした。
そしてフーッと息を吐くと煙は輪っかの形となり、
その輪を潜るように細い煙が立ち上った。
「次来た頃にはスミカ一人で切り盛りしとったわい。」
「そう、だったんですね…。」
おじいさんがどれくらいの感覚でカシオペイアに訪れているかはわからなかったが、恐らく、スミカと師匠が共に過ごした期間はとても短かっただろう。
その短い期間でどんな日常をここで送っていたのだろうか…
私は今の自分が送る日常と、
話を聞いて想像したスミカの日常を比べるように思いを巡らせた。
そして話を聞く前より、スミカのことが知りたくなった。
その後、他愛もない会話をいくつか交えながら頼まれた薬を渡した。
「んむ。ありがとう、紅茶もご馳走さん。」
「いえっ、こちらこそお話ありがとうございました!」
「また機会があれば、いずれの」
別れの挨拶をし老人は扉をくぐる。
ーーカラン…。
途中まで扉を空けると老人は思い出したかのように言い残した。
「そうじゃ。忘れておった。スミカにも薬の礼とよろしく伝えておいてくれ。」
「はい!」
笑顔で見送るも、ふと記憶の中からスミカからの言葉を思い出した。
『さっきのお客さん。よく忘れ物をするんだけど‥』
ハッとカウンターの上を見ると、昔話の途中で老人が咥えていたパイプが残されていることに気が付いた。
今なら外の扉のところで渡せるかもしれない、私はパイプを右手で拾い上げ、左手でカウンターを飛び越えるように乗り越えて扉に急ぐ。
飛び越える際、高度が足りずに片足を軽くぶつけてヒヤっとしたが、今は良しとしよう。
ーーガランガラン!
勢いよく一つ目の扉を開くと老人の姿はなく、二つ目の扉がちょうど閉じようとしていた時だった。
二つ目の扉に手をかけ、こちらも勢いよく扉を開くと
老人の姿が前に倒れるように地面に吸い込まれる様子が目に入った。
「え!?」
私の体は前へ前へと動かそうとしていたところに、信じがたい光景が飛び込んできたので
急いで踏みとどまろうと前に突き出した足にグッと力を込めた。
勢いはおさえることができたものの、力を込めた足が先ほどぶつけた方の足だったので私はバランスを崩し、躓く形で前に転倒した。はずだった。
地面に写った自分の影がぐにゃりと歪み、私の体は影の中に吸い込まれていった。
茶をすする音がドームに響く。
「ど、どうでしょう?」
「ふむ。珍しい味じゃが悪くない。何処と無く懐かしい味のような気もするの」
「よ、良かった~。」
「それで、スミカの話だったかの?」
「はい、おじいさんがスミカに初めて会った時はどんな感じでしたか?」
「ううむ。そうじゃなあ、お嬢ちゃんよりももう少し小さかったかのう。見た目の割にはしっかりしとったわい。」
自分より小さな頃のスミカを想像するだけで
ごくり。と思わず息を飲んでしまうくらい興味深かった。
その年ごろでどれだけの魔法が使えたのか、
どのくらい薬学の知識があったのか、師を追う弟子として気になった。
「スミカもお嬢…お前さんのように誰かに薬学を教わっとったわい。」
言い直したのはきっと話をきいて私が自分とスミカを比べようとしているのを察して、子供扱いしないための配慮だったのだろう。
「スミカにも師匠がいたんですかっ!?」
「さあの。師と呼べる者だったかどうかは知らぬが、魔術師だったことは記憶しておる」
「スミカの師匠…。」
「わしもここにこれる日が限られておるからの、関係性についてはよう知らん。じゃが」
「じゃが…?」
「とても美人だったわい」
(お、おぅ)
内心もっとスミカを知るための裏話が聞けるかと期待していた部分もあったので
少し拍子抜けだった。
「わしが見たのはその一度きりじゃ」
「え?」
目の前の老人は懐からパイプを取り出し
口に咥えて煙を吸いだした。
そしてフーッと息を吐くと煙は輪っかの形となり、
その輪を潜るように細い煙が立ち上った。
「次来た頃にはスミカ一人で切り盛りしとったわい。」
「そう、だったんですね…。」
おじいさんがどれくらいの感覚でカシオペイアに訪れているかはわからなかったが、恐らく、スミカと師匠が共に過ごした期間はとても短かっただろう。
その短い期間でどんな日常をここで送っていたのだろうか…
私は今の自分が送る日常と、
話を聞いて想像したスミカの日常を比べるように思いを巡らせた。
そして話を聞く前より、スミカのことが知りたくなった。
その後、他愛もない会話をいくつか交えながら頼まれた薬を渡した。
「んむ。ありがとう、紅茶もご馳走さん。」
「いえっ、こちらこそお話ありがとうございました!」
「また機会があれば、いずれの」
別れの挨拶をし老人は扉をくぐる。
ーーカラン…。
途中まで扉を空けると老人は思い出したかのように言い残した。
「そうじゃ。忘れておった。スミカにも薬の礼とよろしく伝えておいてくれ。」
「はい!」
笑顔で見送るも、ふと記憶の中からスミカからの言葉を思い出した。
『さっきのお客さん。よく忘れ物をするんだけど‥』
ハッとカウンターの上を見ると、昔話の途中で老人が咥えていたパイプが残されていることに気が付いた。
今なら外の扉のところで渡せるかもしれない、私はパイプを右手で拾い上げ、左手でカウンターを飛び越えるように乗り越えて扉に急ぐ。
飛び越える際、高度が足りずに片足を軽くぶつけてヒヤっとしたが、今は良しとしよう。
ーーガランガラン!
勢いよく一つ目の扉を開くと老人の姿はなく、二つ目の扉がちょうど閉じようとしていた時だった。
二つ目の扉に手をかけ、こちらも勢いよく扉を開くと
老人の姿が前に倒れるように地面に吸い込まれる様子が目に入った。
「え!?」
私の体は前へ前へと動かそうとしていたところに、信じがたい光景が飛び込んできたので
急いで踏みとどまろうと前に突き出した足にグッと力を込めた。
勢いはおさえることができたものの、力を込めた足が先ほどぶつけた方の足だったので私はバランスを崩し、躓く形で前に転倒した。はずだった。
地面に写った自分の影がぐにゃりと歪み、私の体は影の中に吸い込まれていった。
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