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第1章
第15話:大人になれないピーターパン①
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暗い、暗い闇の中。
前に進んでいるのか、下に落ちているかもわからなくなる感覚。
足を動かせばかすかに前に進んでいるかのようにも感じるが、
いつもの地面を押し下げるような感覚が無かった。
地面を押し下げるという表現も何か変に思うが、
地面が無いというわけでも重力をまったく感じていないわけでもない。
まるで夢の中で空を歩いているかのような感覚。
本来歩けないような宙を実際に歩いているような感覚なのである。
後ろを振り返っても真っ暗で光はない。
ただ、私の周りだけ微かに明るい。
上を見上げたときに自分を照らす微かな光の正体が、六花の光であることに気が付いた。
自分の周囲30センチも無いような微かな灯りを頼りに進む。
「あいたっ!」
正面に何かにぶつかった衝撃が走った。
足には衝撃はなくちょうど体の中心をまるで電柱にぶつかったような感覚だった。
私はパントマイムのような形で手探りでぶつかった物が何かを確かめようとする。
色もなく、ただ質感だけが手を通じて伝わってくる。
表面をすーっと指でなぞる様に触れると、何か彫られてるような凹凸を感じた。
「…模様?…文字?」
指でなぞった先に矢印らしき形に窪みを感じ取り、このぶつかった物が案内板だということに気がついた。
何度案内板の窪みをなぞろうとも、言語が特殊なのか
指し示す場所の文字を読み取ることができなかったので、とりあえず私は矢印の先へ向かうことにした。
しばらく歩き進むと何やら人の声らしき声がざわざわと複数聞こえるようになった。
何を言っているかはわからないけれど、叫びや悲鳴といった類ではなく、会話のように聞こえた。
そしてその声は近づくにつれて鮮明に聞き取れるようになり
まるで街を目隠ししながら歩いているような感覚がした。
「今日の知らせ聞きました?また減給ですってよ」
「おおっとそりゃひどい。お宅も大変ですな。あーっはっは」
「ほんと、早く死んでくれないかしら。」
「俺だったら真っ先に殺すね。」
何気ない世間話のような空気なのに、
口にする言葉はどれも物騒だったり耳が痛くなる話ばかり。
私は足早に進むことにした。
人らしき存在がこの暗闇にいることはわかった。
とりあえず今はまともに会話できる人を探さないと。
この世界から出るために…!
そう心に強く決めた時だった。
「リッカ。」
背後で自分の名前を確かに呼ばれた。
私は自分の名を知る誰かに自分を見つけたもらえたと安心感をいただきながら振り返る。
『みぃつけた…♥』
その声に背筋がゾクっとするような恐怖と嫌悪感が襲った。
声の先には微かにわかる少女の存在。
目が微かに赤く光っており、形はよく見えないものの
私は確かにこの存在を知っていた。
少女は何か音を出しながらゆっくりと近づいてくる。
ーーグチュグチュ…ベチャベチャ…
アイツだ…!
アイツかもしれないが確信に変わった時、
一気に下あごの辺りが引きつるのを感じ、私は急いで音とは反対方向に走り出す。
私が知っている存在なら、
あのグチュグチュと気持ち悪い音の正体は、恐らくは…
手で握り潰した金魚だ。
「助けて!誰か…!誰か助けて!」
私は精いっぱいの声を挙げて走り続ける。
途中何かやわらかい、人らしきものにぶつかりながらも
それを手で掻き分けるかのようにひたすら前に走った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
どれだけ走っただろう息もだんだん続かなくなってきた。
恐怖と疲労感が同じくらいになったとき、
私は大きな何かとぶつかり走っていた方向とは逆方向に弾き飛ばされた。
そしてぶつかった何かから『ベチャ』と音がが聞こえた。
その瞬間、先ほどまで拮抗していた恐怖と疲労感が一瞬で恐怖一色となった。
私は恐怖で腰がぬけ這いつくばりながら必死で助けを求め、
走ってきた方向も忘れながら逃げようとした。
その時だった。
「こっち!」
急に少年のような声と同時に手を引かれ、私は手を引く先へ走っていた。
そして引かれた手が急停止するとクイッと左右に方向を変え
バタンという音とともに静止した。
先ほどの音と背中に固い感触。
どこかの建物に入ったようだった。
「大丈夫?危ないところだったね。」
姿は見えないけれど私を案じていることはわかった。
私はこちらが見えているか見えていないかわからないけれど
必死で頷いていた。
「キミ、カシオペイアの人だよね?待ってて、今ガゼフを呼んでくるから」
少年はそういうと一旦手を離そうとするが、私は震えながら少年の手を握りしめていた。
「んー。わかった。じゃあ僕といっしょにここでガゼフが戻るのを待っていようか。」
そして私は少年に手を引かれながら、椅子とテーブルらしき前につれていかれ、
かけて休むよう促された。
勧められるがままに腰を椅子に下ろし、片手は少年の手を握ったまま息を整える。
「ここならもう安心だよ。ここには僕とガゼフが認めた人しか入れない家だ。」
「あなたは…?」
「僕はヨゼフ。ガゼフの弟になるのかな。」
「おじいさんの弟…?」
声の若さからしてとても弟と思えなかった。どちらかと言えば孫だ。
「あーうん。見た目はこんなだけどね。って見えてないっか。ははは。
なんて説明すればいいかなー。夢のある言い方をすれば、僕は…大人になれないピーターパン。かな」
「大人になれないピーターパン…。」
確かもともとは大人になりたがらない少年を意味する物語だったような…。
大人にならない街、ネバーランドで空を飛ぶ話だった気がする。
大人になりたがらず、大人にならない街で大人になれないピーターパン。
頭がこんがらがってしまいそうだ。
「まっ僕自身が望んだわけでもないんだけどね。僕のことはさておき…キミはどうしてここへ?」
私はこの世界に迷い込んでしまった経緯とガゼフに届け物があることを伝えた。
「あーそれは直接、ガゼフに渡してあげてよ。僕が渡すと悪い気にさせちゃうからさ。」
手にしたパイプをしまうよう促され、私は大事に懐にしまった。
それからしばらくすると、先ほどの扉らしき方角から、さっきと同じ開閉音が聞こえた。
前に進んでいるのか、下に落ちているかもわからなくなる感覚。
足を動かせばかすかに前に進んでいるかのようにも感じるが、
いつもの地面を押し下げるような感覚が無かった。
地面を押し下げるという表現も何か変に思うが、
地面が無いというわけでも重力をまったく感じていないわけでもない。
まるで夢の中で空を歩いているかのような感覚。
本来歩けないような宙を実際に歩いているような感覚なのである。
後ろを振り返っても真っ暗で光はない。
ただ、私の周りだけ微かに明るい。
上を見上げたときに自分を照らす微かな光の正体が、六花の光であることに気が付いた。
自分の周囲30センチも無いような微かな灯りを頼りに進む。
「あいたっ!」
正面に何かにぶつかった衝撃が走った。
足には衝撃はなくちょうど体の中心をまるで電柱にぶつかったような感覚だった。
私はパントマイムのような形で手探りでぶつかった物が何かを確かめようとする。
色もなく、ただ質感だけが手を通じて伝わってくる。
表面をすーっと指でなぞる様に触れると、何か彫られてるような凹凸を感じた。
「…模様?…文字?」
指でなぞった先に矢印らしき形に窪みを感じ取り、このぶつかった物が案内板だということに気がついた。
何度案内板の窪みをなぞろうとも、言語が特殊なのか
指し示す場所の文字を読み取ることができなかったので、とりあえず私は矢印の先へ向かうことにした。
しばらく歩き進むと何やら人の声らしき声がざわざわと複数聞こえるようになった。
何を言っているかはわからないけれど、叫びや悲鳴といった類ではなく、会話のように聞こえた。
そしてその声は近づくにつれて鮮明に聞き取れるようになり
まるで街を目隠ししながら歩いているような感覚がした。
「今日の知らせ聞きました?また減給ですってよ」
「おおっとそりゃひどい。お宅も大変ですな。あーっはっは」
「ほんと、早く死んでくれないかしら。」
「俺だったら真っ先に殺すね。」
何気ない世間話のような空気なのに、
口にする言葉はどれも物騒だったり耳が痛くなる話ばかり。
私は足早に進むことにした。
人らしき存在がこの暗闇にいることはわかった。
とりあえず今はまともに会話できる人を探さないと。
この世界から出るために…!
そう心に強く決めた時だった。
「リッカ。」
背後で自分の名前を確かに呼ばれた。
私は自分の名を知る誰かに自分を見つけたもらえたと安心感をいただきながら振り返る。
『みぃつけた…♥』
その声に背筋がゾクっとするような恐怖と嫌悪感が襲った。
声の先には微かにわかる少女の存在。
目が微かに赤く光っており、形はよく見えないものの
私は確かにこの存在を知っていた。
少女は何か音を出しながらゆっくりと近づいてくる。
ーーグチュグチュ…ベチャベチャ…
アイツだ…!
アイツかもしれないが確信に変わった時、
一気に下あごの辺りが引きつるのを感じ、私は急いで音とは反対方向に走り出す。
私が知っている存在なら、
あのグチュグチュと気持ち悪い音の正体は、恐らくは…
手で握り潰した金魚だ。
「助けて!誰か…!誰か助けて!」
私は精いっぱいの声を挙げて走り続ける。
途中何かやわらかい、人らしきものにぶつかりながらも
それを手で掻き分けるかのようにひたすら前に走った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
どれだけ走っただろう息もだんだん続かなくなってきた。
恐怖と疲労感が同じくらいになったとき、
私は大きな何かとぶつかり走っていた方向とは逆方向に弾き飛ばされた。
そしてぶつかった何かから『ベチャ』と音がが聞こえた。
その瞬間、先ほどまで拮抗していた恐怖と疲労感が一瞬で恐怖一色となった。
私は恐怖で腰がぬけ這いつくばりながら必死で助けを求め、
走ってきた方向も忘れながら逃げようとした。
その時だった。
「こっち!」
急に少年のような声と同時に手を引かれ、私は手を引く先へ走っていた。
そして引かれた手が急停止するとクイッと左右に方向を変え
バタンという音とともに静止した。
先ほどの音と背中に固い感触。
どこかの建物に入ったようだった。
「大丈夫?危ないところだったね。」
姿は見えないけれど私を案じていることはわかった。
私はこちらが見えているか見えていないかわからないけれど
必死で頷いていた。
「キミ、カシオペイアの人だよね?待ってて、今ガゼフを呼んでくるから」
少年はそういうと一旦手を離そうとするが、私は震えながら少年の手を握りしめていた。
「んー。わかった。じゃあ僕といっしょにここでガゼフが戻るのを待っていようか。」
そして私は少年に手を引かれながら、椅子とテーブルらしき前につれていかれ、
かけて休むよう促された。
勧められるがままに腰を椅子に下ろし、片手は少年の手を握ったまま息を整える。
「ここならもう安心だよ。ここには僕とガゼフが認めた人しか入れない家だ。」
「あなたは…?」
「僕はヨゼフ。ガゼフの弟になるのかな。」
「おじいさんの弟…?」
声の若さからしてとても弟と思えなかった。どちらかと言えば孫だ。
「あーうん。見た目はこんなだけどね。って見えてないっか。ははは。
なんて説明すればいいかなー。夢のある言い方をすれば、僕は…大人になれないピーターパン。かな」
「大人になれないピーターパン…。」
確かもともとは大人になりたがらない少年を意味する物語だったような…。
大人にならない街、ネバーランドで空を飛ぶ話だった気がする。
大人になりたがらず、大人にならない街で大人になれないピーターパン。
頭がこんがらがってしまいそうだ。
「まっ僕自身が望んだわけでもないんだけどね。僕のことはさておき…キミはどうしてここへ?」
私はこの世界に迷い込んでしまった経緯とガゼフに届け物があることを伝えた。
「あーそれは直接、ガゼフに渡してあげてよ。僕が渡すと悪い気にさせちゃうからさ。」
手にしたパイプをしまうよう促され、私は大事に懐にしまった。
それからしばらくすると、先ほどの扉らしき方角から、さっきと同じ開閉音が聞こえた。
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