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1話 暗い夜の下で
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僕は背伸びをした。誰もいない図書室で変な声を漏らしながら体の力を緩めた。
僕は徐に席を立った。いつものお決まりで集中力が切れた時に屋上の空気を吸って、眺めのいい景色をぼんやりと眺めて、それから再び勉強に手をつけるのだ。
図書室を後にして、静かな廊下をゆったりと歩いてゆく。既に陽が落ちていることを窓から見える風景を頼りに確認した。
ーーガチャ。
静かに扉を開け、徐々に外の空気を感じていた。
今日も気持ちいいな。溜まっていた疲れが取れていくようだ……。
扉を開け切り、目を閉じたまま新鮮な風を感じていた。
しかし、次の瞬間に僕はいきなり現実に引き戻された。
ーーガチャガチャ、ガチャ……
僕は咄嗟に目を開いた。飛び込んできた光景に僕は唖然とした。
「な、何をしてるんだよ……。」
何で、飛び降りようとしてるんだよ。というか、何でうちの学校の制服着てないのに、屋上にいるわけ?
「危ないだろ! 早く戻ってこい!」
僕は叫んだ。でも相手は何故か冷静な顔をしていた。
「止めないで。私は今日でこの世からおさらばするんだからさ。あんまり、時間かけたくないんだ。」
その女子はそう言うと向き直して、フェンスを超えると、屋上の縁に立った。
これじゃあ、本当に飛び降りてしまう。どうしたものか……。
「あのさ、じゃあ1つだけ話しを聞いてもらっても良いか?」
僕は苦し紛れに言った。もう手立てがなかった。
「なに?」
「君ってさ、自己中じゃない?」
これは賭けだ。彼女がこれに乗ればまだ勝てる見込みはある。
「何を言い出すかと思えば。君は私の何を知ってる訳?」
「何も知らないよ。でも、君が今ここで自殺をしようとしていることくらいは知ってる。」
「うん、それだけでしょ? 何を根拠に私が自己中なのよ。」
お。これはいけるかもしれない。
「そうやってさ、僕の前で自殺しようとしてる事。」
「は?」
彼女は少しずつ僕の話に興味を示してくれているようだ。
「とりあえず、戻ってこい。話はそれからだ。自殺なんて別に僕がいなくなった後でもできるだろ。」
ぼくは突き放すように言った。勿論わざとだ。彼女は渋々フェンスを乗り越えて戻ってきてくれた。
よしよし。これで、何とか自殺は止められそうだな。あとはどう思いとどまらせるかだが……。
「戻ってきたよ。さあ、話して。」
「ああ。何で自己中か。それくらいは想像つくんじゃないか?」
挑発気味に聞いてみたが、女子は少し苛立った様子のまま首を傾げていた。
「君が、ここで自殺をする事によって、僕の心に傷が付くんだよ。」
どうだ。少しは納得させられたか。しかし、そんな現実は甘くはなかった。
「何言ってるの? 別に私の親戚でも友達でも無いのに、何で貴方が傷つくのよ。」
呆れたように彼女は言った。
「考えてみろ。君が自殺を目撃してしまったら、多少なりともショックはうけるだろ?」
「まあ、そうだけど。だからって自己中になるの?」
「なると思うぞ。」
「なんで?」
「自分がされた行為を他の人のもやってるから。」
彼女は僕の言葉に対して少しムッとしたような表情を浮かべた。
「私が? 君に? 同じようなことをするだって? あーあ、聞いた私が馬鹿だったよ。」
「ちょ、待ってくれ。最後まで話しを聞け!」
僕は何とか彼女が足を止めるように頼み込んだ。
危ねー。もう少しで僕の努力が水の泡になるところだったよ。
「何でよ。最後まで、私は冷たいことを言われ続けなきゃいけないの!」
彼女の声色がブルーに変わった。流石にこれ以上の刺激は不味そうだった。
「でも、君もさ同じことを今ここでしようとしてたんだよ。これが僕の人生のトラウマになったら、君は責任取れるの?」
「そんなの……。君が感じなきゃいいことでしょ……。」
でた。やっぱり続けていれば出てくると思ったよ。
「な、今の発言が、自己中だって言ってんだよ。」
「まあ、今のは確かにそうね……。」
そして、ここから僕の言いたかった事がようやく出てくるのだ。
「だからさ、僕が言いたかったのは、人を傷つけて終わる人生でいいのかってこと。」
どうなんだろう。正直反応が読めないな。名前すら知らない彼女がどんなん人生を歩んできたかなんて、知るわけなもいからさ、少し怖い。
「良い訳ないよ。本当だったらもっとさ、人の役に立って、色鮮やかな人生を送りたかったよ。」
「でも……、叶いそうにないんだよ。」
彼女は息ほどの声でそう言った。僕もその雰囲気でなんとなく背景が掴めそうな気がした。
「じゃあさ、僕を幸せにしてよ。」
「幸せにって……。それ、プロポーズ?」
違うわ! なんて返しもできた。でも、今はそんな言葉が必要とされている訳ではない様に思われた。
「そうとってもいいよ。何でもいいから、君が僕を幸せな気分にしてよ。代わりと言っては難だけど、僕も君を幸せにする。」
「これでどうかな?」
僕の提案は、正気の沙汰とは思えないモノだと、自分でも思っていた。
「……分かった。そこまで言うのなら、責任とってね。言っとくけど、自殺願望があるのは変わらないから。それだけは覚えておいて。」
「ああ。今その決断に至ってくれただけでも、嬉しいよ。ありがとう。」
何とか、思いとどまらせられたが、これからどうしようか。ノープランで、発した言葉だから大ピンチだな……。
「とりあえず、屋内に入ろう。」
「ちょっと、待……。」
僕は彼女の手をとって強引に校舎の中に連れ込んだ。これが僕らの出会いだった。
僕は徐に席を立った。いつものお決まりで集中力が切れた時に屋上の空気を吸って、眺めのいい景色をぼんやりと眺めて、それから再び勉強に手をつけるのだ。
図書室を後にして、静かな廊下をゆったりと歩いてゆく。既に陽が落ちていることを窓から見える風景を頼りに確認した。
ーーガチャ。
静かに扉を開け、徐々に外の空気を感じていた。
今日も気持ちいいな。溜まっていた疲れが取れていくようだ……。
扉を開け切り、目を閉じたまま新鮮な風を感じていた。
しかし、次の瞬間に僕はいきなり現実に引き戻された。
ーーガチャガチャ、ガチャ……
僕は咄嗟に目を開いた。飛び込んできた光景に僕は唖然とした。
「な、何をしてるんだよ……。」
何で、飛び降りようとしてるんだよ。というか、何でうちの学校の制服着てないのに、屋上にいるわけ?
「危ないだろ! 早く戻ってこい!」
僕は叫んだ。でも相手は何故か冷静な顔をしていた。
「止めないで。私は今日でこの世からおさらばするんだからさ。あんまり、時間かけたくないんだ。」
その女子はそう言うと向き直して、フェンスを超えると、屋上の縁に立った。
これじゃあ、本当に飛び降りてしまう。どうしたものか……。
「あのさ、じゃあ1つだけ話しを聞いてもらっても良いか?」
僕は苦し紛れに言った。もう手立てがなかった。
「なに?」
「君ってさ、自己中じゃない?」
これは賭けだ。彼女がこれに乗ればまだ勝てる見込みはある。
「何を言い出すかと思えば。君は私の何を知ってる訳?」
「何も知らないよ。でも、君が今ここで自殺をしようとしていることくらいは知ってる。」
「うん、それだけでしょ? 何を根拠に私が自己中なのよ。」
お。これはいけるかもしれない。
「そうやってさ、僕の前で自殺しようとしてる事。」
「は?」
彼女は少しずつ僕の話に興味を示してくれているようだ。
「とりあえず、戻ってこい。話はそれからだ。自殺なんて別に僕がいなくなった後でもできるだろ。」
ぼくは突き放すように言った。勿論わざとだ。彼女は渋々フェンスを乗り越えて戻ってきてくれた。
よしよし。これで、何とか自殺は止められそうだな。あとはどう思いとどまらせるかだが……。
「戻ってきたよ。さあ、話して。」
「ああ。何で自己中か。それくらいは想像つくんじゃないか?」
挑発気味に聞いてみたが、女子は少し苛立った様子のまま首を傾げていた。
「君が、ここで自殺をする事によって、僕の心に傷が付くんだよ。」
どうだ。少しは納得させられたか。しかし、そんな現実は甘くはなかった。
「何言ってるの? 別に私の親戚でも友達でも無いのに、何で貴方が傷つくのよ。」
呆れたように彼女は言った。
「考えてみろ。君が自殺を目撃してしまったら、多少なりともショックはうけるだろ?」
「まあ、そうだけど。だからって自己中になるの?」
「なると思うぞ。」
「なんで?」
「自分がされた行為を他の人のもやってるから。」
彼女は僕の言葉に対して少しムッとしたような表情を浮かべた。
「私が? 君に? 同じようなことをするだって? あーあ、聞いた私が馬鹿だったよ。」
「ちょ、待ってくれ。最後まで話しを聞け!」
僕は何とか彼女が足を止めるように頼み込んだ。
危ねー。もう少しで僕の努力が水の泡になるところだったよ。
「何でよ。最後まで、私は冷たいことを言われ続けなきゃいけないの!」
彼女の声色がブルーに変わった。流石にこれ以上の刺激は不味そうだった。
「でも、君もさ同じことを今ここでしようとしてたんだよ。これが僕の人生のトラウマになったら、君は責任取れるの?」
「そんなの……。君が感じなきゃいいことでしょ……。」
でた。やっぱり続けていれば出てくると思ったよ。
「な、今の発言が、自己中だって言ってんだよ。」
「まあ、今のは確かにそうね……。」
そして、ここから僕の言いたかった事がようやく出てくるのだ。
「だからさ、僕が言いたかったのは、人を傷つけて終わる人生でいいのかってこと。」
どうなんだろう。正直反応が読めないな。名前すら知らない彼女がどんなん人生を歩んできたかなんて、知るわけなもいからさ、少し怖い。
「良い訳ないよ。本当だったらもっとさ、人の役に立って、色鮮やかな人生を送りたかったよ。」
「でも……、叶いそうにないんだよ。」
彼女は息ほどの声でそう言った。僕もその雰囲気でなんとなく背景が掴めそうな気がした。
「じゃあさ、僕を幸せにしてよ。」
「幸せにって……。それ、プロポーズ?」
違うわ! なんて返しもできた。でも、今はそんな言葉が必要とされている訳ではない様に思われた。
「そうとってもいいよ。何でもいいから、君が僕を幸せな気分にしてよ。代わりと言っては難だけど、僕も君を幸せにする。」
「これでどうかな?」
僕の提案は、正気の沙汰とは思えないモノだと、自分でも思っていた。
「……分かった。そこまで言うのなら、責任とってね。言っとくけど、自殺願望があるのは変わらないから。それだけは覚えておいて。」
「ああ。今その決断に至ってくれただけでも、嬉しいよ。ありがとう。」
何とか、思いとどまらせられたが、これからどうしようか。ノープランで、発した言葉だから大ピンチだな……。
「とりあえず、屋内に入ろう。」
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