雨と晴

やすを。

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18話 決意した葵

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 一泊二日の旅行を終えて、僕らは自宅に戻ってきた。帰りの車の中では二人揃って寝てしまった。僕は単純に睡眠不足、葵は疲労で眠ってしまったのだろう。

 あの場所での、葵の告白。それは予想をはるかに超える残虐性があった。あの件に関して、葵は何も悪くは無かったはずだ。

 自分の仕事を全うしている最中に、男に襲われ、ありもしない誤解で信頼を失い、そして自分の人生を投げ出そうとしていた。

 両親の勘当という発言。どういう性格の持ち主なのかは、知る由もないが、話も聞かず決めつけだけで娘と絶縁するのは、正気の沙汰とは思えない。僕は、雨森葵という人間に関わるものとして、その真意を問いたい。

 僕らの関係に変化はなかった。正直少し気まずい関係になるのかとヒヤヒヤしていたが、そんな心配は要らなかった。

 普通に笑っていたし、話しかけてくれたし、頼りにしてくれたし。少し目は赤かったけど、二人は何かを察してその話題には触れなかった。流石と言ったところだろう。

 「どうだった旅行。」

 「凄い楽しかったよ。また行きたいしね。」

 葵はそう言って笑った。

 そういえば。と僕は唐突に話を振った。

 「葵のお母さんに電話していいか?」

 「……いいよ。」

 僕は葵から電話番号を教えてもらい、スマホに打ち込んだ。元々、お父さんは娘に無関心で厳しく育てられたそうだ。それを庇っていたのがお母さんで、あの一件も最後まで、葵を庇ってくれていたそう。

 「もしもし。雨森翠さんのお電話出ましょうか。」

 電話がつながり、僕はついに葵のお母さんと話をする。心臓の鼓動がうるさいほど耳に響いていた。

 「どなたでしょうか。」

 「雨森葵さんの友人の者です。少しだけお話させていただいてもよろしいでしょうか。」

 「葵の!? それでご友人さんが何の御用でしょう。」

 「今から葵さんに電話を代わりたいと思うので、どうか最後まで話を聞いてあげてください。」

 「……わかりました。」

 そう言って僕はスピーカーから耳を離した。そして、不安げな面持ちの葵に電話をかわった。

 「もしもしお母さん? 私だよ、葵。……うん…………」

 僕は話始めたのを見計らって、自室に戻った。ここは親子水入らずの会話をするべきだと僕が思ったからだ。

 壁が薄いから、もしかするとあんまり僕の行動の意味はないのかもしれない。それでも同じ部屋に他人がいるより一人の方が、しやすい話もあるはずだ。

 約一時間後。葵が僕の部屋をノックしてそのまま部屋に入ってきた。

 「ありがとう。久しぶりにお母さんと話せて良かったよ。」

 「それで、実家にはいけそう?」

 「うん。お母さんはいつでも来てって言ってた。」

 「そっか、それは良かったよ。あと、自分のスケジュールはこれだから、葵が行きたい日、決めといてね。」

 「えっ、私が決めていいの?」 
 
 「当たり前だろ。その日が君の人生との戦いの日なんだからさ。」

 「うん。そうするね。」

 葵は少し嬉しそうにして、僕の部屋から出ていった。僕はその顔が見られるだけで嬉しかった。

 そして日にちは一週間後に決まった。


 

 






 
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