51 / 59
51話 初詣
しおりを挟む
「寒いね、外。」
「そうだな、左手はあったかいけど、やっぱり右手はやばいな……」
「私も左手やばい。」
やはり彼女と繋がっている手は暖かかった。彼女の温もりが手全体を包み込んでいるようで、僕は優しい安心感を覚えた。
何故僕らが今外に出ているのか。それは、今日が元旦だからだった。
「翔太、今年の初詣はいつ行くの?」
突然リビングで、葵と勉強していたタイミングで、母さんが話しかけてきた。
「今は…………嘘!? もう日付変わってんじゃん!」
「そうよ。だから聞きにきたのに。」
「どうしようかな。」
僕がそう悩んでいると母さんが提案をしてきた。
「じゃあさ、今行ってきちゃいなさいよ、2人で。」
「ああ、良いなそれ。どうする? 葵は。」
「翔太が行くなら行く。」
「そんじゃ、行きますか!」
そんな軽いノリで決まったのだ。というのも、この時間帯になって、眠気に襲われ始めた頃だったから、母さんの提案はちょうど良かった。もしかすると、それまで見越して僕らを外に出させたのかもしれない。どっちにしても、さすが我が母親と言ったところだ。
「こうして家族以外の誰かと、初詣行くの初めてかも。」
「そうなのか?」
「うん。お父さんがさ、結構厳しくて。元旦は家族でって決まってたんだよね。」
なんかイメージできるな。話せば、意外と物腰の柔らかい人だったけど、そこら辺の行事はちゃんとしてそう。偏見かもしれないけど、実際葵がそう言っている訳だし、僕の第一印象が当たっていたわけだ。
「結構立派な神社だね。」
「ああ。僕もそう思うよ。」
ここは天神様を祀る神社で、受験生がよく足を運ぶ姿を目にする。僕らも一年早いが、そろそろ受験のことを考えて参拝することにしたのだ。
「人多いな。」
「そうだね。ちょっとだけ緊張する……」
そっか。まだ少し残ってるんだな、君のトラウマ。前に葵は消えないって言ってたけど、一生付き合っていくしかないみたいだ。
「大丈夫。僕がいるから。」
「うん。ありがとう。」
葵は可愛い笑顔を浮かべて、僕にそう言った。暗がりの中にいる葵の笑顔は、どこかエモく感じた。
僕らは長蛇の列に並んで自分たちの番を待った。その間はスマホをいじったり、会話が盛り上がったり、長かった待ち時間も苦にならずに待っていられた。
そして僕らの番がやってきた。二つの鐘を1人ずつ鳴らす。お賽銭に50円玉を投げ入れ、鐘を鳴らし、慣わし通りにやった後、手を合わせてお願い事をした。
……受験勉強上手くいきますように。あと、葵と楽しく暮らせますように
僕の願いはそれだけだった。僕らは、上がってきた階段とは別の階段を降りて、甘酒を飲んだりおみくじを引いたり、お守りを買ったりと、例年通りの初詣を過ごしていた。
そして僕らは帰路につく。何もないただの初詣、こうしたイベント系はなぜかいつもトラブル続きで、嫌になってきたところだから、ちょうど良かったと思うのだった。
「そうだな、左手はあったかいけど、やっぱり右手はやばいな……」
「私も左手やばい。」
やはり彼女と繋がっている手は暖かかった。彼女の温もりが手全体を包み込んでいるようで、僕は優しい安心感を覚えた。
何故僕らが今外に出ているのか。それは、今日が元旦だからだった。
「翔太、今年の初詣はいつ行くの?」
突然リビングで、葵と勉強していたタイミングで、母さんが話しかけてきた。
「今は…………嘘!? もう日付変わってんじゃん!」
「そうよ。だから聞きにきたのに。」
「どうしようかな。」
僕がそう悩んでいると母さんが提案をしてきた。
「じゃあさ、今行ってきちゃいなさいよ、2人で。」
「ああ、良いなそれ。どうする? 葵は。」
「翔太が行くなら行く。」
「そんじゃ、行きますか!」
そんな軽いノリで決まったのだ。というのも、この時間帯になって、眠気に襲われ始めた頃だったから、母さんの提案はちょうど良かった。もしかすると、それまで見越して僕らを外に出させたのかもしれない。どっちにしても、さすが我が母親と言ったところだ。
「こうして家族以外の誰かと、初詣行くの初めてかも。」
「そうなのか?」
「うん。お父さんがさ、結構厳しくて。元旦は家族でって決まってたんだよね。」
なんかイメージできるな。話せば、意外と物腰の柔らかい人だったけど、そこら辺の行事はちゃんとしてそう。偏見かもしれないけど、実際葵がそう言っている訳だし、僕の第一印象が当たっていたわけだ。
「結構立派な神社だね。」
「ああ。僕もそう思うよ。」
ここは天神様を祀る神社で、受験生がよく足を運ぶ姿を目にする。僕らも一年早いが、そろそろ受験のことを考えて参拝することにしたのだ。
「人多いな。」
「そうだね。ちょっとだけ緊張する……」
そっか。まだ少し残ってるんだな、君のトラウマ。前に葵は消えないって言ってたけど、一生付き合っていくしかないみたいだ。
「大丈夫。僕がいるから。」
「うん。ありがとう。」
葵は可愛い笑顔を浮かべて、僕にそう言った。暗がりの中にいる葵の笑顔は、どこかエモく感じた。
僕らは長蛇の列に並んで自分たちの番を待った。その間はスマホをいじったり、会話が盛り上がったり、長かった待ち時間も苦にならずに待っていられた。
そして僕らの番がやってきた。二つの鐘を1人ずつ鳴らす。お賽銭に50円玉を投げ入れ、鐘を鳴らし、慣わし通りにやった後、手を合わせてお願い事をした。
……受験勉強上手くいきますように。あと、葵と楽しく暮らせますように
僕の願いはそれだけだった。僕らは、上がってきた階段とは別の階段を降りて、甘酒を飲んだりおみくじを引いたり、お守りを買ったりと、例年通りの初詣を過ごしていた。
そして僕らは帰路につく。何もないただの初詣、こうしたイベント系はなぜかいつもトラブル続きで、嫌になってきたところだから、ちょうど良かったと思うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる