囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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213話 風流

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 思いのままに食べ歩き、どこに入るスペースがあるのか分からないが、菖蒲は響の倍は食べていた。

「響さん次はあれ食べましょ!!」
「っうぷ…まだ食べるのか?」
「当たり前ですよ!ここまできたらコンプリートするしかないですからねっ!」

 あれだけ食べたはずが、一切変わっていない菖蒲の腹に訝しげな視線を送るが、菖蒲は気にせず注文をしに行く。

「響さんにも一口あげますから元気出してくださいっ」
「っいや!もういいかなっ」
「えぇーもったいないですねー?なら全部食べちゃいますよっ?」

 菖蒲は今日初めて食事をしたような素振りで頬を膨らませる。

「そろそろ時間も頃合だし、観光に移らないか?」
「っわぁ、もうこんなに時間が経ってたんですねっ。なら、名残惜しいですが…移動しましょっか」

 どうにか菖蒲を商店街から引き離し、次の目的地へ足先を向ける。


「こんなにはっきり空気が美味いと思えるなんてな」
「やっぱりまだお腹減ってたんじゃないですか?おにぎり食べますか?」

 菖蒲はおにぎりを頬張りながら、もう少しの道をポテポテと着いて来る。

「いや、もう勘弁してくれ」
「響さんは難しいですねぇ。っあ!あれじゃないですか!?」

 菖蒲の指先の方向から糸のように細く落ちる水の音が聞こえてきた。

「ちゃんとした滝なんて初めて見ましたよっ!」

 滝の前に立つと、滴が玉のように光を受けて、微かに虹を描いている。
 そよ風に混ざった水の香りが、体をそっと包む。

「ここの滝は四季折々の顔が見れるらしいぞっ」

 今の時期は桜が満開で、滝の元にはピンク色のグラデーションがされている。

「こうやってぼーっと見てるだけでも心が休まりますねぇ」
「だなぁ」

 旅行といえば目まぐるしいスケジュールに、見知らぬ土地での移動やお土産選びなど、意外と心休まるタイミングというのは少ない。

「そこに茶屋もあるみたいですし、お団子とお抹茶でも買ってきましょうかっ」
「風流だなぁ」

 和を楽しめる環境で、和菓子を楽しむというのは日本人でも体験してる人間は少ないだろう。

「私、これからもずぅぅっとっ!こんな生活をしていきたいですっ」
「その生活の中に俺は居そうか?」
「っさて?」

 いじらしく舌を出す菖蒲は、目を閉じ、滝の音に身を委ねていた。

「夢に出てくる未来の俺の生活には、大抵菖蒲が混入してるんだけどなぁ」
「っひ、人のことを異物みたいに言わないでくださいよっ!これからも響さんの夢をジャックしてやりますからねっ!」
「楽しみしてる」

 三色団子の三色目を食べ終えた響たちは、近くにあるという神社へ移動した。
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