囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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46話 囁き少女と寄り道、頬に着いた薄いピンクの謎

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 高校に入ってから一週間が過ぎるのが早く感じると、ふと思いながら金曜最後の授業が終わった。
 するとソワソワした様子の菖蒲が声をかけてきた。

「響さん、今日は特に用事はありませんか?無いようでしたら少し寄り道して帰りませんか?」
「特に予定は無いな、最近身体が訛ってたからちょうどいいな」

 菖蒲は響の返答を聞き、教科書をさっさとカバンに詰め、帰る準備をする。
 響も同じくカバンに詰め、菖蒲と校門を出る。

「寄り道って言っても、どっか目星はあるのか?」
「目的がないから寄り道なんですよ、最近の響さん忙しそうにして、私を放置してばっかりでつまんないです!」

 菖蒲はぷいっと顔を響から逸らし、リップを塗っているのか薄いピンク色の唇を尖らせる。

「なら今日は、徹底的に菖蒲に付き合うからそれで許してくれ」
「…言質取りましたからねっ」

 菖蒲は響の鼻に指を当て、不出来なウインクをする。


 二人は特に目的も決めず、街の方向へ歩みを進めた。
 その道中で菖蒲が飲みたいとタピオカを所望し、移動販売のタピオカ屋で一つ注文した。

「…今月は出費がかさむなぁ…」

 響は財布の軽さに涙していると、菖蒲がその財布にタピオカ代を入れる。

「奢らなくても寄り道に付き合ってくれるだけで十分ですよっ」
「こういうのって男が奢るもんじゃないのか…?」
「他のカップルは知りませんが、私は男女平等主義なのでそんな常識ありません!」

 菖蒲の素晴らしい考え方に心を打たれる響であったが『他・の・カ・ッ・プ・ル・』という発言に訝しげな顔を浮かべる。

「んー!!美味しいです!響さんも一口どうぞ!」

 差し出されたタピオカに刺さるストローを見つめ、動きを止める。
 響のその反応に、菖蒲は慌ててタピオカを持った手を引こうとする。
 しかし、それよりも早く響の口がストローを咥えていた。

「初めて飲んだけど美味いな!ん、どうしたんだ?そんなに飲んでないから心配するな」
「響さんは鈍感か鈍感じゃないのかどっちなんですか!?」

 菖蒲の言っている意味がよく分からなかった響は、とりあえず親指を立てた。
 菖蒲は響の意味不明な行動で落ち着きを取り戻したのか、タピオカを飲もうとする。
 しかし、響同様一瞬動きが固まる。

「飲まないのか?飲まないなら俺飲むけ…」
「うるさいです!飲むに決まってます!」

 菖蒲は勢いよくストローを咥え、ものすごい吸引力でタピオカを飲み干す。
 その顔は一気に吸い込んだためなのか分からないが、真っ赤に染っていた。

「そんなに喉乾いてたのか、もう一杯頼むか?」
「もう色々お腹いっぱいなので大丈夫です!」

 一瞬で飲みきった容器をタピオカ屋のゴミ袋に入れると、定員さんが驚きと嬉しさが混じった顔で『また来てくださいねー』と二人に声をかけ、見送ってくれた。

「それじゃあ次はどこ行くか」
「私プリクラ撮りたいです!」
「…プ、プリクラかぁー」

 つい先日プリクラで恥を晒したばかりなため、如実に嫌な顔をする響を引っ張りゲームセンターへと連れ込んだ。

「ほらほら行きますよ!」
「一旦話し合おう!なぁ!?話し合ぉぅー!!」

 響の懇願虚しく、憎きプリクラの幕を再びくぐった。
 前回は一華と透子が率先して操作をしてくれたため、特に何もしなくて良かったのだが、菖蒲はプリクラを撮ったことが無いらしく、二人で試行錯誤しながら操作をする。

『何人で撮るのかな?』
「二人だな」
『二人の関係性は何かなー?』
「…関係性…」

 プリクラのアナウンスの声と共に、画面に『友達』『親友』『カップル』の選択が表示された。
 響は『友達』の枠を選択しようとすると、ものすごい速さで何かが画面を押した。

『OKー!二人はカップルなんだね!それじゃあーカップルモードで開始ー!!』
「今、何が起きたんだ?目にも留まらぬ速さで何かが勝手に選択したんだが、菖蒲は見えたか?」
「いえ?私にはなーんにもっ、あれじゃないですか?夏ですし、カブトムシが押したんじゃないですかー?」

 菖蒲にも見えていなかったらしく、カップルモードで始まったプリクラのアナウンスに何を命令されるのかと身構えする。

『それじゃあ最初は顎乗せポーズ!』
「なんだ顎乗せポーズって?」
「なんでしょう…あ、画面に例が表示されてますよ!」

 画面には相手の手に顎を乗せているイメージ写真が表示されており、それと同時に制限時間が残り十秒とカウントダウンが始まっていた。

「あぁ、響さん急いで急いで!手をこうやってください!」
「悪い聞いてなかった、それに顎を乗せればいいんだな!?」

 パシャリと写真が撮られ、画面には真顔の菖蒲の手に顎を乗せる響が表示されていた。

『いいね!次は恋人繋ぎのポーズだよー?』
「恋人繋ぎって手を繋ぐやつだろ?」
「え、響さん知ってたんですか?以外ですね」
「俺だってこれくらい知ってる」

 響は自信満々にを菖蒲とする。
 再びシャッターが切られ、画面には大統領同士のような固い握手をする二人が写っていた。

「これくらいは知ってて当然だろ?」
「そーですねー」

 菖蒲は何か不服だったのか、撮られた写真を真顔で見つめていた。

『うん!ラブラブだね!最後は二人でちゅー!!』
「「は!?」」

 プリクラのイカれた発言に二人は声を合わせる。

「…最後の最後でやばいの来たな…」
「ち、ち、ちゅ、ちゅ、ちゅ…」

 菖蒲は『はわわっ』とした身振り手振りで頭から煙を出していた。

『それじゃあ行くよー?三、二、一!』
「ど、どうする!?」
「どうしましょう!?!」

 二人で慌てていると菖蒲は響の靴に躓き、背中から転びかける。
 響は怪我をしていない方の手で力いっぱい引き上げる。
 思っていたよりも菖蒲は軽く、勢い余って菖蒲を抱えたまま響は背中から転んでしまう。

「…大丈夫か?どこもぶつけてないか?」
「どこかにをぶつけた気がしますが、それ以外は大丈夫です。響さんこそ大丈夫ですか!?」

 響はカバンがクッションとなり、特に怪我はせず、背中に付いた埃を払いながらプリクラから出た。
 プリクラの撮った写真は出てくるまで少し時間がかかるようだったため、響は二人分の飲み物を買いに行った。


「菖蒲の分のジュースも買ってきた…ぞ?」
「……これ響さんの分のシールです…」

 菖蒲から渡されたプラントシールは不自然に一枚欠けており、ちょうど最後の写真撮影の時のものが無かった。

「これ一枚足りなく無いか?」
「…なく無いです…今日はそろそろ帰りましょうか」

 遊び疲れたのか、いきなりしおらしくなった菖蒲と共に帰路に着く。


 菖蒲と別れ、暇つぶしにスマホを見ると自分の頬に汚れのようなものが付いていることが分かり、セルフィーモードで確認する。

「なんだこれ、血か?にしては薄いよな…」

 響の頬にはがされていた。
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