囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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47話 いつか、写真立てを思い出でいっぱいに

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 週末はいつもと余り変わらないが、ゴロゴロと過ごし腕の療養に勤しんだ。


「響っちープリクラ撮ったんでしょ?見せてっ」
「…なんで知ってるんだ?」
「あやっちが教えてくれたからに決まってんじゃーん」

 月曜日、登校そうそう有咲にだる絡みをされ、いつの間にかプリクラの件がバレておりプリクラをねだられる。

「俺にもプライバシーがあるんだぞ?」
「前あやっちとの愛してるゲームで、『負けたら撮って見せる』って約束したじゃんかー」
「…覚えてたのか」

 しかし、当のプリクラは家に置いてきているため、有咲は響から菖蒲に目標をシフトチェンジする。

「ねねっ、あやっちプリクラ持ってきてる?前の約束通り見せてもらうよー」
『プ、プリクラですか…?』

 菖蒲はぎこちない動きで、生徒手帳の間に入れていたプリクラを有咲に見せる。

「っぷ!何これ?なんか色々とツッコミどころ多すぎるんだけど!」
「生徒手帳に入れてたのか、落としたら恥ずいぞ?」
「…ダメなんですか?」

 菖蒲は自分の髪を後ろから引っ張り、手と髪で頬を包み込こむ。その奥から覗く、上目遣いの菖蒲を見ると『ダメ』など言える訳もなかった。

「…響さんは家に置きっぱなんですか?」
「いや、引越しの時に持ってきたけど使ってなかった写真立てに挟んでるぞ…」

 響は自分で言いながら、だいぶ気持ちの悪い行動だったのではないかと慌てて誤魔化そうとする。

「いやいや!あれだぞ?あれ!机に置いてたら無くすかもしれないし、引き出しに閉まっても中身とごっちゃになっちゃうかもしれないだろ!?」

 朝とは思えないテンション感で菖蒲に訂正をする。

「大事にしてくれてるんですね…」
「っそ、そういうことでも…」

 菖蒲はモジモジとしながら囁く。

「…ならその写真立て…

『いっぱいにする』ということは、これからもこの関係性は続いていくことと同義であり、中学までには出来なかったイベント事などを出来るのだと考えると胸が熱くなる。

「…そうだな、!」

 新しい環境を求めた高校で思いがけない友人と出会い、今までの何ら変わりない日常に一筋の光が刺し、何気ない瞬間が一生の思い出になった。
 そんな時間を一番長く共に過ごしてきた菖蒲の提案に、響は何の深読みもせずに笑顔で答える。

「うちそろそろ戻るねー、プリクラ見せてくれてあんがとっ」

 有咲は二人から離れ、透子の元へ向かう。
 もしかしたら、有咲は空気読んで席を外したのであろうかと考えているうちにホームルームの時間になった。


「響さん、教科書置いてきてしまったので見せて貰ってもいいですか?」

 響は二人の机をくっつけ、その中心に教科書を置いた。
 授業は歴史、ただでさえ教科書の文字はぎゅぎゅぅ詰めなのに、教科書の隅に書いている文字は米粒以下のサイズでとても見にくい。

「響さんここ大事らしいですよ!マーカーとか引かなくていいんですか?」
「ぁあ、ぼーっとしてた」

 先程、菖蒲とこれからについて話してからというもの、やけに菖蒲が気になってしまう。
 艶やかな髪を耳にかけるところも、近づいたことにより香ってくる花の香りも、響の教科書の偉人に落書きをするところも。

「俺の教科書に落書きするんじゃない」
「あぅっ」

 菖蒲の頭を突き、危うく香りに誤魔化され教科書の偉人がパリピになってしまう窮地を脱却させ、冷静になった頭で授業を聞く。


「お昼ですよ!お昼!」
「飯食うか」

 響はクラスメイトからの購買奢りフェーズが終了し、コンビニで買ったサンドイッチを食べていた。

「乙女のピクニックみたいな物食べるんですね」
「健康的だからな」

 健康的で慣れない左手でも簡単に食べれるサンドイッチは、今の響の主食だった。

「響さん卵焼き食べますか?」
「いいのか?やったなっ」

 響は菖蒲の箸を借り、慣れない左手で掴もうとするがのらりくらりと卵焼きに躱され、掴むことができなかった。

「しょうがないですね、…どーぞっ」
「…いや、教室だと目立つぞ?」
「わがままですねー」

 そう言うと菖蒲は、指をパチンと鳴らす。
 すると、佑馬が飛んできて膝立ちの状態で『何がご所望で』と執事のような動きを見せる。

『響さんが『あーん』をして欲しいそうなのでお願いします!』
「任されましたぞ!」

 佑馬は満面の笑みで響の口元に卵焼きを運ぶ。

「ほらー列車さんですよーシュッシュッポッポー!終点は響ー響ー」
 佑馬は、響の閉まっている口に何度も卵焼きでノックをする。
 観念して食べると『また何かあればなんなりと』と言い、消えていった。

「今のはなんだ?」
「佑馬さんですよ」
「いつの間に下僕にしたんだ?」

 菖蒲の話によると、佑馬の発案の『指を鳴らせば遠くからでも簡単にコミニュケーションが取れる』というものを実践したというものであった。
 傍から見れば下僕を使役する悪女に見えるが、面白いため暫くは黙っていようと決意する。
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