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一章
あっちもこっちも嫉妬嫉妬
気持ちのいい朝だ。
シリルは心地よい朝日を浴びながら、学園へと入っていく。
昨日の面倒ごとを忘れたわけではない。
忘れたいけれど。
だがもう二度と縁を結ぶことはないはずだ。
相手は王子だ。
いくらクリフの義理の弟とはいえ、雲の上の存在なのだ。
クリフのように前世からの縁があるわけでもない。
とはいえ若干の不安はある。
なのでできればしばらく王宮に行きたくないのだが、果たしてどうなることやらと、大きめなため息を一つこぼした。
「おはよ。シリル……お前今日の放課後も王太子殿下と一緒にいるのか?」
「…………急にどうした?」
教室へと入ったシリルは、自分よりも先にいたレオンにそんなことを言われたのだ。
レオンはシリルとは違って社交性がある。
なので友人も多いのに、なぜかシリルと一番仲良くしてくれていると勝手に思っていた。
そのことに少しだけ鼻高々になっていたのだが、ここにきてまさかの発言に、高くなった鼻がさらに天高くなった気がする。
「ここ最近王太子殿下ばっかりで、私と遊んでないじゃないか」
「…………な、なんだよ? 寂しかったのか?」
ニヤケそうになる顔をなんとか抑える。
からかい半分でそう問えば、レオンはシリルの肩に手を回した。
「そうだよ。今日こそ帰りに街に行くぞ? ずっと気になってた店行くって約束してただろ?」
「そういや……そうだったな」
ここ最近王都の街にできたらしい、おしゃれなカフェ。
カフェといえば女性同士、もしくは男女で行くのが主流だが、そこは男同士でも気軽に行けるらしい。
そういうことなら是非とも行ってみたいと、レオンと話をしていたことを思い出す。
どちらにしろ昨日の今日で王宮には行きたくなかったので、その誘いはありがたい。
「わかった。今日は向こうの誘うは断るよ」
「――まじ? やった!」
心底嬉しそうなレオンに、仕方ないなと思いつつも微笑む。
イケメンで人当たりもよくて気遣いもできる。
もちろん婚約者はいるらしいが、シリルはその女性に会ったことはなかった。
どうやらあまり仲がよくないらしい。
クリフといいレオンといい、婚約者がいるだけでも羨ましいというのに、なにが不服なのか。
まあおかげで友人とこうして遊ぶことができるのだから、まあいいかと納得した。
「カフェ終わりでいいから、買い物も付き合ってくれよ」
「あ、ちょうどいいや。俺も……」
羊皮紙がなくなりそうだったからありがたい。
ついでにインクも買おうかと考えていると、教室にクリフが入ってきた。
途端に女生徒たちに囲まれるその姿に、思わず冷め切った視線を向けてしまう。
「王太子殿下は人気だなぁ。まあ、婚約者と仲良くないってのは有名だもんな」
「そうなのか?」
「シリルはそういううわさ、興味持たなかったもんな?」
「まあな。それで?」
クリフの婚約者ということは、昨日会ったアレンの元婚約者ということになる。
アレンのことを忘れられないのに、親に命令されてしかたなくクリフの婚約者となった女性。
どんな人なのか話を聞いてみたくなった。
「確か公爵令嬢だったはず。綺麗な人だけどきつそうな印象かな? 話したこともないから知らないけど」
「……レオンすら話したことないのか?」
社交性の塊のようなレオンは、同年代はだいたい友だちだと思っていた。
なので驚きの声をあげれば、レオンは肩をすくめる。
「共通の友人がいたから話しかけたことがあるんだけど……」
「ど?」
「…………ちらりと視線を向けてきただけで、声すら発しなかった」
「ふーん……」
なんというかそれは、ずいぶん高飛車なのかと疑ってしまう。
実際会ったこともないのでなんとも言えないが、話しかけられたのに無視するのはいかがなものだろうか?
なるほどそんな女性なら、クリフとも相性が悪いのは納得できた。
ふーんと頷いていると、シリルの元にクリフがやってくる。
「おはよう。あのさ、シリル。実はさ――」
「今日はレオンと遊ぶから、そっちにはいけない。――あ、おはよう」
ついつい要件を急いでしまった。
後付けで挨拶をすれば、クリフはほんの一瞬瞳を細める。
しかし周りの目があるからか、すぐに表情をいつも通りに戻した。
「…………そっか。君が、レオン?」
「そうです。私が――シリルの【親友】のレオンです」
「……そう。わかったよ。じゃあまたね」
クリフはレオンを一瞥すると、踵を返して自分の机へと向かった。
ゾロゾロと女生徒を連れて。
その後ろ姿を羨ましいとは思えないのは、女生徒たちの目が怖いからだろうか?
若干呆れた顔をしながらその様子を見ていると、レオンが耳打ちしてくる。
「なんか……王太子殿下怒ってなかった?」
「……腹でも壊してんじゃないか?」
嫉妬。
だなんて考えたくもない。
シリルがクリフよりもレオンを優先したことに、怒っているなんて想像もしたくなかった。
だってそんなの、めんどくさいじゃないか。
だからそう答えれば、レオンは微妙な顔をした。
「……シリル、だから女子にモテないんだぞ?」
「はあ!? 今それ関係なくないか!?」
シリルは心地よい朝日を浴びながら、学園へと入っていく。
昨日の面倒ごとを忘れたわけではない。
忘れたいけれど。
だがもう二度と縁を結ぶことはないはずだ。
相手は王子だ。
いくらクリフの義理の弟とはいえ、雲の上の存在なのだ。
クリフのように前世からの縁があるわけでもない。
とはいえ若干の不安はある。
なのでできればしばらく王宮に行きたくないのだが、果たしてどうなることやらと、大きめなため息を一つこぼした。
「おはよ。シリル……お前今日の放課後も王太子殿下と一緒にいるのか?」
「…………急にどうした?」
教室へと入ったシリルは、自分よりも先にいたレオンにそんなことを言われたのだ。
レオンはシリルとは違って社交性がある。
なので友人も多いのに、なぜかシリルと一番仲良くしてくれていると勝手に思っていた。
そのことに少しだけ鼻高々になっていたのだが、ここにきてまさかの発言に、高くなった鼻がさらに天高くなった気がする。
「ここ最近王太子殿下ばっかりで、私と遊んでないじゃないか」
「…………な、なんだよ? 寂しかったのか?」
ニヤケそうになる顔をなんとか抑える。
からかい半分でそう問えば、レオンはシリルの肩に手を回した。
「そうだよ。今日こそ帰りに街に行くぞ? ずっと気になってた店行くって約束してただろ?」
「そういや……そうだったな」
ここ最近王都の街にできたらしい、おしゃれなカフェ。
カフェといえば女性同士、もしくは男女で行くのが主流だが、そこは男同士でも気軽に行けるらしい。
そういうことなら是非とも行ってみたいと、レオンと話をしていたことを思い出す。
どちらにしろ昨日の今日で王宮には行きたくなかったので、その誘いはありがたい。
「わかった。今日は向こうの誘うは断るよ」
「――まじ? やった!」
心底嬉しそうなレオンに、仕方ないなと思いつつも微笑む。
イケメンで人当たりもよくて気遣いもできる。
もちろん婚約者はいるらしいが、シリルはその女性に会ったことはなかった。
どうやらあまり仲がよくないらしい。
クリフといいレオンといい、婚約者がいるだけでも羨ましいというのに、なにが不服なのか。
まあおかげで友人とこうして遊ぶことができるのだから、まあいいかと納得した。
「カフェ終わりでいいから、買い物も付き合ってくれよ」
「あ、ちょうどいいや。俺も……」
羊皮紙がなくなりそうだったからありがたい。
ついでにインクも買おうかと考えていると、教室にクリフが入ってきた。
途端に女生徒たちに囲まれるその姿に、思わず冷め切った視線を向けてしまう。
「王太子殿下は人気だなぁ。まあ、婚約者と仲良くないってのは有名だもんな」
「そうなのか?」
「シリルはそういううわさ、興味持たなかったもんな?」
「まあな。それで?」
クリフの婚約者ということは、昨日会ったアレンの元婚約者ということになる。
アレンのことを忘れられないのに、親に命令されてしかたなくクリフの婚約者となった女性。
どんな人なのか話を聞いてみたくなった。
「確か公爵令嬢だったはず。綺麗な人だけどきつそうな印象かな? 話したこともないから知らないけど」
「……レオンすら話したことないのか?」
社交性の塊のようなレオンは、同年代はだいたい友だちだと思っていた。
なので驚きの声をあげれば、レオンは肩をすくめる。
「共通の友人がいたから話しかけたことがあるんだけど……」
「ど?」
「…………ちらりと視線を向けてきただけで、声すら発しなかった」
「ふーん……」
なんというかそれは、ずいぶん高飛車なのかと疑ってしまう。
実際会ったこともないのでなんとも言えないが、話しかけられたのに無視するのはいかがなものだろうか?
なるほどそんな女性なら、クリフとも相性が悪いのは納得できた。
ふーんと頷いていると、シリルの元にクリフがやってくる。
「おはよう。あのさ、シリル。実はさ――」
「今日はレオンと遊ぶから、そっちにはいけない。――あ、おはよう」
ついつい要件を急いでしまった。
後付けで挨拶をすれば、クリフはほんの一瞬瞳を細める。
しかし周りの目があるからか、すぐに表情をいつも通りに戻した。
「…………そっか。君が、レオン?」
「そうです。私が――シリルの【親友】のレオンです」
「……そう。わかったよ。じゃあまたね」
クリフはレオンを一瞥すると、踵を返して自分の机へと向かった。
ゾロゾロと女生徒を連れて。
その後ろ姿を羨ましいとは思えないのは、女生徒たちの目が怖いからだろうか?
若干呆れた顔をしながらその様子を見ていると、レオンが耳打ちしてくる。
「なんか……王太子殿下怒ってなかった?」
「……腹でも壊してんじゃないか?」
嫉妬。
だなんて考えたくもない。
シリルがクリフよりもレオンを優先したことに、怒っているなんて想像もしたくなかった。
だってそんなの、めんどくさいじゃないか。
だからそう答えれば、レオンは微妙な顔をした。
「……シリル、だから女子にモテないんだぞ?」
「はあ!? 今それ関係なくないか!?」
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