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第1章 異世界転生
第34話
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次の日、朝寝ているとドアをノック音が聞こえる。
「ん?ここはどこだ?」
見知らぬ天井を見て、ここが王都の伯爵閣下の屋敷だと思い出した。…ってお約束の言葉じゃん…慌ててベッドから起きてドアを開けると、メイドさんが俺の顔を見るなり頭を下げる。
「おはようございます。お二方とも、お食事の用意が出来てございます。旦那様が汚れてもいい服を着て食事を摂りにこられるようにとのことです」
「分かりました。直ぐに用意して参ります」
そう返事をするとメイドさんは笑顔で戻って行った。なぜ笑顔なんだと不思議に思ったので、鏡を見てみるとマンガやアニメの様なアホ毛のようになっている。あの笑顔の正体が寝ぐせだと思うと恥ずかしい。
「ジュリエッタ、朝だよ起きて」
隣で寝るジュリエッタを揺すり起こすと、ジュリエッタはまだ眠たいようで目を擦りながら起き上がった。
「ん、あ~おはよう。緊張したせいか、昨晩は2回も目が覚めては魔力操作をして気絶して寝直したわ。ヴェルはそんな事は無かった?」
「うん。夢は見たけど起きなかったかな。それよりも、今メイドさんが来て、朝食は普段着でと伝えにきたよ」
「分かったわ、今日は王族と会うのに、たいした緊張もせずに眠れるなんて、ヴェルは大物ね」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
オレの答えにジュリエッタは呆れ顔をしていた。ジュリエッタが着替えるので先に洗面所に行って身だしなみを整える。風呂に一緒に入った経験はあるけど、お互いに着替えを見られるのは未だに恥ずかしい。
洗面所の鏡を見て、日本にいた時は朝起きたら髭剃りとか面倒だったよな~。子供の体は楽でいい。蒸らしたタオルを頭に乗せて、寝ぐせを直すとジュリエッタと交代した。
着替えてから一緒に食堂へと向うと、既に全員が集まって雑談をしていた。
「おはようございます。遅くなって申し訳ありません」
「ああ、おはよう。良く眠れたようだな。二人とも緊張していないのか?」
朝起きたときにジュリエッタと交わした話題を繰り返して、苦笑いしそうになる。
「僕は、緊張するほどまだ実感は沸いてきません。着替えでもしたら実感するのでしょうが…」
「私は、寝ている時は緊張気味だったけど、普段どおりの朝だから今は緊張してないかな」
「そうか…ならいいんだ。私が一番最初に王城に行く事になった日は、緊張し過ぎて眠れなかったよ。王城に着いたら、緊張して震えがくるし、ガチガチになってた記憶があるよ」
そんな話をされると妙に意識してしまい緊張してきた。伯爵は狙って言っているんじゃないのだろうが、このタイミングで言って欲しくなかったよ…
朝食後、メイドさんに手伝って貰って、新しく仕立てて貰ったスーツに着替える。恥ずかしいから自分で着替えると断ったけど、駄目だと言われ素直に受け入れた。
袖を通した瞬間、仕事に行く朝の事を思い出す。いや…入学式かな…メイドさんが着替えを手伝ってくれる母に見えてきた。今日は朝から妙に日本の事を思い出す。
着替えが済むと別室で着替えているジュリエッタを部屋の前で待つ。こんな時こそエスコートするのが紳士の勤めだ。
そう思っていると、ドアが開く。
「どうヴェル?似合うかな?」
白いドレスを身に纏ったジュリエッタが、その場でくるりと一回転した後に、微笑むジュリエッタの姿を見て思わず息を呑んだ。見惚れて一瞬固まった俺をジュリエッタは見逃さない。
「んっ、どうしたのって言うか、さては見惚れていたな」
図星をつかれた。バレバレか…目線の高さが同じだと、うっかり自分が子供だと忘れてしまう。
「んっ?いつもの反応と違う。ひょっとして、ひょっとするのかな?」
「あ、ごめん。似合う!今まで見たドレスの中で一番似合ってるよ」
「そう。ありがとうね」
そんなあっさりとした返事だが、顔がにやけている。着替えを手伝っていたメイドさんも、こちらを微笑ましく見ている。ごちそうさまって感じかな。
ジュリエッタの手を引いて玄関ホールに向うと、集まっていたみんながこちらを注目をする。
「おっ。馬子にも衣装とはこの事だな」
「お父様!褒め言葉だったら、もっと言い方があるでしょうが!」
「そうだな。すまない。それじゃ行くとしよう。遅刻は厳禁だからな」
ジュリエッタが、プイっと横を向いて拗ね顔になるのを伯爵は見て、慌てて謝り話題を変える。
それにしても、父も今日は正装をしていて見違えるほどカッコいい。伯爵の正装は王城で管理されているそうなので王城で着替えるそうだ。
みんな揃って屋敷の玄関を出ると、正装なので気遣いしながら馬車に乗り込む。今日は馬車1台で行くそうなので少し狭く感じる。
「レリク、やってくれ」
「はっ! では、出発します!」
王城を目指して馬車はゆっくりと進み出すと、いつもと違う雰囲気に呑まれたのか急に緊張してきた。よく考えてみれば、国の王様と会うんだぜ?ゲームか御伽噺の世界じゃないか。
「何だか今頃緊張してきたよ。ジュリエッタはどう?」
「私もよ」
「まぁ、そんなに緊張しなくても陛下はとても気さくな方だ。気楽ってわけにはいかないだろうが、必要以上に気負う必要はない」
「そうは仰いますが国を代表する国王陛下ですよ?緊張するなと言う方が無理です」
「ま、父さんも最初は緊張したけど、今ではそうでもない。いつもの調子なら大丈夫さ」
励まされているうちに丘を登りきって王城の門に辿り着く。城壁はかなり高い。国の象徴である城の存在感をアピールするものだろう。
城壁に挟まれた威圧されそうなぐらい立派な城門に着くと門兵が敬礼をしていて、そのまま馬車は中に入った。
庭園に入るとお約束のように芝生が広がり、人工的に作られた丸池、噴水、花園、正面には王城が屹立している。
王城の左右には、王族達が住まう宮殿が渡り廊下が左右にありそれぞれが正室が住まう後殿と、側室が住まう後殿への通路となっている。
白をベースとした王宮は見た目、神殿のような佇まいをしていて、所々に金の装飾があしらわれていた。その豪華さに圧倒されそうだ。
「さぁ、そろそろ降りる準備をしようか」
伯爵閣下がそう言うので襟を正し身なりを整える。馬車が王城前に停車すると全員が馬車から降りた。もちろんジュリエッタに手を差し伸べてエスコートする。
「ヴェル君やるね~。紳士の鏡だよ」
「そう言っていただけて嬉しいです」
毎回やってるんだから今更なんだけどね。それに今日はジュリエッタはゴージャスなドレスだ。ドレスに足を引っ掛けて転倒なんてシャレにならないからな。
他事を考えていると幾らかは緊張も解れる。王城に入ると、兵士が敬礼をしている横を伯爵の後をついていく。
「誰か案内を待たなくていいの?」
「馬鹿を言え。伯爵閣下は王宮医療技師だろ?勝手も分かるし、信用もあるから自由なんだよ」
「なるほど」
城の中には初めて入ると天井が高い分だけ少し寒い。だが、大理石で作られた柱の一本一本はちゃんとデザインがされていて、壁にはこの国を立ち上げた初代王の肖像画が飾られていた。
王城内の中庭に差し掛かると、大理石で作られた回廊の中心部は中庭になっていて、芝生に囲まれた噴水の水は天気がいいせいで、太陽の光が水面に反射して美しさを強調している。
回廊の突き当たりを左に折れると、それから道なりに歩き、丁度真ん中に奥へと続く通路があったので右に回った。
日が差し込まない暗がりの通路を歩いていると、伯爵閣下は控え室と書かれた扉の前で止まる。
「それでは、私は着替えなくてはならないし、陛下にも報告がある。みんなはこの控えの間に入って待っててくれ」
それぞれが「はい」と返事をすると、伯爵は扉を開けて通路を歩いて行った。
「ん?ここはどこだ?」
見知らぬ天井を見て、ここが王都の伯爵閣下の屋敷だと思い出した。…ってお約束の言葉じゃん…慌ててベッドから起きてドアを開けると、メイドさんが俺の顔を見るなり頭を下げる。
「おはようございます。お二方とも、お食事の用意が出来てございます。旦那様が汚れてもいい服を着て食事を摂りにこられるようにとのことです」
「分かりました。直ぐに用意して参ります」
そう返事をするとメイドさんは笑顔で戻って行った。なぜ笑顔なんだと不思議に思ったので、鏡を見てみるとマンガやアニメの様なアホ毛のようになっている。あの笑顔の正体が寝ぐせだと思うと恥ずかしい。
「ジュリエッタ、朝だよ起きて」
隣で寝るジュリエッタを揺すり起こすと、ジュリエッタはまだ眠たいようで目を擦りながら起き上がった。
「ん、あ~おはよう。緊張したせいか、昨晩は2回も目が覚めては魔力操作をして気絶して寝直したわ。ヴェルはそんな事は無かった?」
「うん。夢は見たけど起きなかったかな。それよりも、今メイドさんが来て、朝食は普段着でと伝えにきたよ」
「分かったわ、今日は王族と会うのに、たいした緊張もせずに眠れるなんて、ヴェルは大物ね」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
オレの答えにジュリエッタは呆れ顔をしていた。ジュリエッタが着替えるので先に洗面所に行って身だしなみを整える。風呂に一緒に入った経験はあるけど、お互いに着替えを見られるのは未だに恥ずかしい。
洗面所の鏡を見て、日本にいた時は朝起きたら髭剃りとか面倒だったよな~。子供の体は楽でいい。蒸らしたタオルを頭に乗せて、寝ぐせを直すとジュリエッタと交代した。
着替えてから一緒に食堂へと向うと、既に全員が集まって雑談をしていた。
「おはようございます。遅くなって申し訳ありません」
「ああ、おはよう。良く眠れたようだな。二人とも緊張していないのか?」
朝起きたときにジュリエッタと交わした話題を繰り返して、苦笑いしそうになる。
「僕は、緊張するほどまだ実感は沸いてきません。着替えでもしたら実感するのでしょうが…」
「私は、寝ている時は緊張気味だったけど、普段どおりの朝だから今は緊張してないかな」
「そうか…ならいいんだ。私が一番最初に王城に行く事になった日は、緊張し過ぎて眠れなかったよ。王城に着いたら、緊張して震えがくるし、ガチガチになってた記憶があるよ」
そんな話をされると妙に意識してしまい緊張してきた。伯爵は狙って言っているんじゃないのだろうが、このタイミングで言って欲しくなかったよ…
朝食後、メイドさんに手伝って貰って、新しく仕立てて貰ったスーツに着替える。恥ずかしいから自分で着替えると断ったけど、駄目だと言われ素直に受け入れた。
袖を通した瞬間、仕事に行く朝の事を思い出す。いや…入学式かな…メイドさんが着替えを手伝ってくれる母に見えてきた。今日は朝から妙に日本の事を思い出す。
着替えが済むと別室で着替えているジュリエッタを部屋の前で待つ。こんな時こそエスコートするのが紳士の勤めだ。
そう思っていると、ドアが開く。
「どうヴェル?似合うかな?」
白いドレスを身に纏ったジュリエッタが、その場でくるりと一回転した後に、微笑むジュリエッタの姿を見て思わず息を呑んだ。見惚れて一瞬固まった俺をジュリエッタは見逃さない。
「んっ、どうしたのって言うか、さては見惚れていたな」
図星をつかれた。バレバレか…目線の高さが同じだと、うっかり自分が子供だと忘れてしまう。
「んっ?いつもの反応と違う。ひょっとして、ひょっとするのかな?」
「あ、ごめん。似合う!今まで見たドレスの中で一番似合ってるよ」
「そう。ありがとうね」
そんなあっさりとした返事だが、顔がにやけている。着替えを手伝っていたメイドさんも、こちらを微笑ましく見ている。ごちそうさまって感じかな。
ジュリエッタの手を引いて玄関ホールに向うと、集まっていたみんながこちらを注目をする。
「おっ。馬子にも衣装とはこの事だな」
「お父様!褒め言葉だったら、もっと言い方があるでしょうが!」
「そうだな。すまない。それじゃ行くとしよう。遅刻は厳禁だからな」
ジュリエッタが、プイっと横を向いて拗ね顔になるのを伯爵は見て、慌てて謝り話題を変える。
それにしても、父も今日は正装をしていて見違えるほどカッコいい。伯爵の正装は王城で管理されているそうなので王城で着替えるそうだ。
みんな揃って屋敷の玄関を出ると、正装なので気遣いしながら馬車に乗り込む。今日は馬車1台で行くそうなので少し狭く感じる。
「レリク、やってくれ」
「はっ! では、出発します!」
王城を目指して馬車はゆっくりと進み出すと、いつもと違う雰囲気に呑まれたのか急に緊張してきた。よく考えてみれば、国の王様と会うんだぜ?ゲームか御伽噺の世界じゃないか。
「何だか今頃緊張してきたよ。ジュリエッタはどう?」
「私もよ」
「まぁ、そんなに緊張しなくても陛下はとても気さくな方だ。気楽ってわけにはいかないだろうが、必要以上に気負う必要はない」
「そうは仰いますが国を代表する国王陛下ですよ?緊張するなと言う方が無理です」
「ま、父さんも最初は緊張したけど、今ではそうでもない。いつもの調子なら大丈夫さ」
励まされているうちに丘を登りきって王城の門に辿り着く。城壁はかなり高い。国の象徴である城の存在感をアピールするものだろう。
城壁に挟まれた威圧されそうなぐらい立派な城門に着くと門兵が敬礼をしていて、そのまま馬車は中に入った。
庭園に入るとお約束のように芝生が広がり、人工的に作られた丸池、噴水、花園、正面には王城が屹立している。
王城の左右には、王族達が住まう宮殿が渡り廊下が左右にありそれぞれが正室が住まう後殿と、側室が住まう後殿への通路となっている。
白をベースとした王宮は見た目、神殿のような佇まいをしていて、所々に金の装飾があしらわれていた。その豪華さに圧倒されそうだ。
「さぁ、そろそろ降りる準備をしようか」
伯爵閣下がそう言うので襟を正し身なりを整える。馬車が王城前に停車すると全員が馬車から降りた。もちろんジュリエッタに手を差し伸べてエスコートする。
「ヴェル君やるね~。紳士の鏡だよ」
「そう言っていただけて嬉しいです」
毎回やってるんだから今更なんだけどね。それに今日はジュリエッタはゴージャスなドレスだ。ドレスに足を引っ掛けて転倒なんてシャレにならないからな。
他事を考えていると幾らかは緊張も解れる。王城に入ると、兵士が敬礼をしている横を伯爵の後をついていく。
「誰か案内を待たなくていいの?」
「馬鹿を言え。伯爵閣下は王宮医療技師だろ?勝手も分かるし、信用もあるから自由なんだよ」
「なるほど」
城の中には初めて入ると天井が高い分だけ少し寒い。だが、大理石で作られた柱の一本一本はちゃんとデザインがされていて、壁にはこの国を立ち上げた初代王の肖像画が飾られていた。
王城内の中庭に差し掛かると、大理石で作られた回廊の中心部は中庭になっていて、芝生に囲まれた噴水の水は天気がいいせいで、太陽の光が水面に反射して美しさを強調している。
回廊の突き当たりを左に折れると、それから道なりに歩き、丁度真ん中に奥へと続く通路があったので右に回った。
日が差し込まない暗がりの通路を歩いていると、伯爵閣下は控え室と書かれた扉の前で止まる。
「それでは、私は着替えなくてはならないし、陛下にも報告がある。みんなはこの控えの間に入って待っててくれ」
それぞれが「はい」と返事をすると、伯爵は扉を開けて通路を歩いて行った。
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