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第1章 異世界転生
第39話
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翌朝、父が朝食後領地に発つ前に挨拶を済ませる。念のため確認すると野盗を退治仕立てとあって街道の治安は問題無いようだ。
「お父様。道中気を付けてお帰り下さい」
「ああ。ヴェルもあまり無理をするんじゃないぞ」
「ええ。その辺はわきまえております」
「アルフォンスも道中気をつけてな。また領地で会おう」
父とウォーレスさんはがっちり握手を交わした。
「それじゃヴェル。今度は母さんを連れてくるからな。がんばるんだぞ」
「お父様こそ、息災で」
「ジュリエッタも息災でな」
「はい。義父さま。またお会いできる時を楽しみにしております。お気を付けて」
父は馬に跨ると「それではレリクさん。子供の事は宜しくお願いします」と頭を下げた。
「最善を尽くします」
父は安堵の表情を浮かべ、馬はゆっくりと走り出した。
「お父様、息災で!!」
振り返らず手を上げる父を見送ると、ウォーレスさんは仕事に戻るため屋敷の中へと入って行った。
俺達は今日この後陛下から賜る仮住まいの屋敷を閲覧することになっているので、玄関ホールのソファーにでマイアを待つ事にした。
それにしても、いくら大人びているとは言え9歳と10歳の3人暮らしとはな。中学から全寮制ってのは聞いたことあるけどその歳で親元を離れさせて不安はないんかね。
そこそこ早熟でも普通親から離れて暮らしたら泣き叫んで嫌がるものじゃないのかな。さっき父は颯爽と帰って行ったけどカケラの悲壮感も無かったし。
ソファーに座りそんな事を考えているとメイドさんが、コーヒーと紅茶を用意してくれた。
「今から行く新居がどんな屋敷なのか楽しみね」
ジュリエッタは紅茶で喉を潤すと、笑顔でそう問いかける。ふむ。ジュリエッタも伯爵と離れることに何の不安も無いようだ。
「そうだね。でもあまり大きい屋敷じゃない方がいいかな」
「あらどうして?」
「ほら、自分が住んでた屋敷はこの屋敷みたいに大きくなかったからさ。あまり広すぎると落ち着かないいんじゃないかなと思ってさ。それにさ、大きいと掃除とか屋敷の管理が面倒そうじゃない?」
日本で一人暮らしの経験が頭の中で蘇る。心臓を患いながら生活していたことを差し引いてもこじんまりした所で充分だ。
「どんなおうちでも住めば都よ。じきに慣れるわ。それに大きな屋敷じゃないと思うわよ。本来なら王都の屋敷は別邸でしかないんだから。各領地の騎爵達や文務官が泊まる事は無いし、実務は王城で執り行う事になってるからね」
「と言ってもこの屋敷もジェントの町の屋敷に比べたら随分と小さいとは言え一般的な感覚から言えば豪邸なんだけどね」
そんなやり取りをしていると馬の鳴き声と馬車が止まる音がした。
「あっ。着いたみたいよ」
「ほんとだ。それじゃ行くとしようか」
急いで飲みかけのコーヒーを飲むと、丁度ウォーレスさん階段から下りて来た。
「お父様、マイアが到着したようなのでこれから出かけてきます」
「そうか。ついて行ってやりたいのは山々だが王城での宴の準備に呼ばれたのでそちらの方へ行かなくてはならない。それから、今日はマイアの護衛が付いてきてくれるそうなのでレリクは私が連れていくぞ」
「ええ。王室の護衛ってさぞかし凄いのでしょうね」
「それはそうだろう。姫殿下の護衛だからな。おっと、こうしてゆっくり話をしている場合ではなかった。気をつけて行って来い」
「はい、ウォーレスさん。行って参ります」
「お父様それでは」
「それでは、また。王城で会おう」
宴の手伝いか。上級貴族も大変だなと思いながら挨拶を交わしてから外に出ると、真っ白な2頭の馬に引かれる、御伽噺で出てきそうな、金細工を施した真っ白な馬車が止まっていた。
護衛の兵士が頭を下げ、馬車の扉が開くとマイアと執事さんが降りて来た。こんなに目立つ馬車では誘拐するなって言うのが間違ってるような気がする。
「おはようございます。ヴェル。ジュリエッタ」
マイアが満面の笑みで挨拶をすると挨拶を返して馬車に乗り込む。
「それでは今から新居に向けて出発をしましょう」
執事さんがにこやかにそう言って馬車の前の窓を叩くと馬車はゆっくりと進み始めた。
両脇に美少女二人に挟まれるのは役得だと思うけど、マイアは王女だ。接し方がまだ慣れてないからどう話題を振ったら良いのか分からない。黙ってるとマイアがこちらを見て話しかける。
「昨日はワクワクして眠れませんでしたわ。あっ、そうだ。お父様が入用なものがあったらこの紙に書いておくようにと言われています」
マイアは、ペンと紙をポーチから取り出すと、オレに見せてくれた。
「んじゃ僕が預かりましょうか?」
「いえ、これは私が言われているので自分で書きます。だから遠慮なく言って下さいね」
「ならばそれでお願いします」
そう言って頭を下げると、マイアは頬を膨らませる。
「ヴェル、あなたは私の騎士であり婚約者なのです。もう敬語はやめて下さい」
「すいません。いや、ごめん。まだ慣れてないから許して。つーか、ジュリエッタの時も同じようなやり取りをしたね」
「ふふふ。あの時のヴェルもグズグズ言ってお父様を巻き込んでいたわね」
「今度敬語を使ったら、罰ゲームとして頭を撫でてもらいますからね」
「その罰いいわね。私も今度からそうしよっかな~」
それ、罰じゃなくてご褒美だろ?
「へいへい。で。その物件は近いの?」
「ええ。2年前に新しい屋敷に移り住んで今は使われていない侯爵家の屋敷だそうです」
「侯爵家か~。そりゃさぞかし立派な屋敷だろうな。でかすぎたらどうしよう」
「素ではそういう話し方なのですね。まあいちいち言葉を選んでいたらストレスが溜まります。私も今からそうしますから」
「そうよヴェル。いつもの口調が気に入ってるのに、また元どおりなんて嫌よ」
「と言うわけだマイア。王宮では聞かないような言葉使いになるかもしれないけど目に余るなら言って欲しいな」
「そうね。じいや、それでいいわね」
それまで微笑ましく俺達の会話を聞いていたじいやさんは突然話を振られて真顔になった。
「はい。私は口を挟まないように陛下から仰せつかっておりますから、私からは何もありません」
無いの?執事さんと俺は同年代じゃないかな。言葉遣いには思うところがあると思うんだけど無いと言うならまあいっか。
「ちなみにじいやさんは執事の仕事だけをやっているのですか?」
「いえ、そう言えば、私としました事が名前を名乗るのを忘れていました。私は姫様専属の教育係兼執事のレバルと申します。じいやとお呼び下さい」
『そこはレバルさんだろ!!』
まさかじいやと呼べとは。ツッコミたい。いや声に出してツッコミたい。ジュリッタもツボったのか笑いを堪えてる。
「それでじいやさん。マイアと一緒に住む事になったら、一緒に生活されるのですか?」
「もちろんですとも。私は姫様が生まれた時からご一緒でしたから、姫様の事なら何でも知ってございます」
最後の一言は駄目だろ。まるでストーカーじゃないか。色々とツッコミ甲斐があるじいさんだ。失礼だが俺と同じ匂いがする。
「そろそろ、屋敷が見えて参りますぞ」
じいやさんが指を差す方向を見ると、伯爵家と同じ大きさの屋敷が見えて来た。門もあるし、広い中庭付きの立派な屋敷だった。
「え?わざわざ新築しなくてもここで充分じゃないのか?」
「駄目です。新居ですよ。私の第二の人生なのですから、新築の方がいいに決まっています」
そうなの?税金は節約した方がいいよ?オレの第二の人生はここでも広過ぎるんだけど。女子の感覚は分からん。
「お父様。道中気を付けてお帰り下さい」
「ああ。ヴェルもあまり無理をするんじゃないぞ」
「ええ。その辺はわきまえております」
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父とウォーレスさんはがっちり握手を交わした。
「それじゃヴェル。今度は母さんを連れてくるからな。がんばるんだぞ」
「お父様こそ、息災で」
「ジュリエッタも息災でな」
「はい。義父さま。またお会いできる時を楽しみにしております。お気を付けて」
父は馬に跨ると「それではレリクさん。子供の事は宜しくお願いします」と頭を下げた。
「最善を尽くします」
父は安堵の表情を浮かべ、馬はゆっくりと走り出した。
「お父様、息災で!!」
振り返らず手を上げる父を見送ると、ウォーレスさんは仕事に戻るため屋敷の中へと入って行った。
俺達は今日この後陛下から賜る仮住まいの屋敷を閲覧することになっているので、玄関ホールのソファーにでマイアを待つ事にした。
それにしても、いくら大人びているとは言え9歳と10歳の3人暮らしとはな。中学から全寮制ってのは聞いたことあるけどその歳で親元を離れさせて不安はないんかね。
そこそこ早熟でも普通親から離れて暮らしたら泣き叫んで嫌がるものじゃないのかな。さっき父は颯爽と帰って行ったけどカケラの悲壮感も無かったし。
ソファーに座りそんな事を考えているとメイドさんが、コーヒーと紅茶を用意してくれた。
「今から行く新居がどんな屋敷なのか楽しみね」
ジュリエッタは紅茶で喉を潤すと、笑顔でそう問いかける。ふむ。ジュリエッタも伯爵と離れることに何の不安も無いようだ。
「そうだね。でもあまり大きい屋敷じゃない方がいいかな」
「あらどうして?」
「ほら、自分が住んでた屋敷はこの屋敷みたいに大きくなかったからさ。あまり広すぎると落ち着かないいんじゃないかなと思ってさ。それにさ、大きいと掃除とか屋敷の管理が面倒そうじゃない?」
日本で一人暮らしの経験が頭の中で蘇る。心臓を患いながら生活していたことを差し引いてもこじんまりした所で充分だ。
「どんなおうちでも住めば都よ。じきに慣れるわ。それに大きな屋敷じゃないと思うわよ。本来なら王都の屋敷は別邸でしかないんだから。各領地の騎爵達や文務官が泊まる事は無いし、実務は王城で執り行う事になってるからね」
「と言ってもこの屋敷もジェントの町の屋敷に比べたら随分と小さいとは言え一般的な感覚から言えば豪邸なんだけどね」
そんなやり取りをしていると馬の鳴き声と馬車が止まる音がした。
「あっ。着いたみたいよ」
「ほんとだ。それじゃ行くとしようか」
急いで飲みかけのコーヒーを飲むと、丁度ウォーレスさん階段から下りて来た。
「お父様、マイアが到着したようなのでこれから出かけてきます」
「そうか。ついて行ってやりたいのは山々だが王城での宴の準備に呼ばれたのでそちらの方へ行かなくてはならない。それから、今日はマイアの護衛が付いてきてくれるそうなのでレリクは私が連れていくぞ」
「ええ。王室の護衛ってさぞかし凄いのでしょうね」
「それはそうだろう。姫殿下の護衛だからな。おっと、こうしてゆっくり話をしている場合ではなかった。気をつけて行って来い」
「はい、ウォーレスさん。行って参ります」
「お父様それでは」
「それでは、また。王城で会おう」
宴の手伝いか。上級貴族も大変だなと思いながら挨拶を交わしてから外に出ると、真っ白な2頭の馬に引かれる、御伽噺で出てきそうな、金細工を施した真っ白な馬車が止まっていた。
護衛の兵士が頭を下げ、馬車の扉が開くとマイアと執事さんが降りて来た。こんなに目立つ馬車では誘拐するなって言うのが間違ってるような気がする。
「おはようございます。ヴェル。ジュリエッタ」
マイアが満面の笑みで挨拶をすると挨拶を返して馬車に乗り込む。
「それでは今から新居に向けて出発をしましょう」
執事さんがにこやかにそう言って馬車の前の窓を叩くと馬車はゆっくりと進み始めた。
両脇に美少女二人に挟まれるのは役得だと思うけど、マイアは王女だ。接し方がまだ慣れてないからどう話題を振ったら良いのか分からない。黙ってるとマイアがこちらを見て話しかける。
「昨日はワクワクして眠れませんでしたわ。あっ、そうだ。お父様が入用なものがあったらこの紙に書いておくようにと言われています」
マイアは、ペンと紙をポーチから取り出すと、オレに見せてくれた。
「んじゃ僕が預かりましょうか?」
「いえ、これは私が言われているので自分で書きます。だから遠慮なく言って下さいね」
「ならばそれでお願いします」
そう言って頭を下げると、マイアは頬を膨らませる。
「ヴェル、あなたは私の騎士であり婚約者なのです。もう敬語はやめて下さい」
「すいません。いや、ごめん。まだ慣れてないから許して。つーか、ジュリエッタの時も同じようなやり取りをしたね」
「ふふふ。あの時のヴェルもグズグズ言ってお父様を巻き込んでいたわね」
「今度敬語を使ったら、罰ゲームとして頭を撫でてもらいますからね」
「その罰いいわね。私も今度からそうしよっかな~」
それ、罰じゃなくてご褒美だろ?
「へいへい。で。その物件は近いの?」
「ええ。2年前に新しい屋敷に移り住んで今は使われていない侯爵家の屋敷だそうです」
「侯爵家か~。そりゃさぞかし立派な屋敷だろうな。でかすぎたらどうしよう」
「素ではそういう話し方なのですね。まあいちいち言葉を選んでいたらストレスが溜まります。私も今からそうしますから」
「そうよヴェル。いつもの口調が気に入ってるのに、また元どおりなんて嫌よ」
「と言うわけだマイア。王宮では聞かないような言葉使いになるかもしれないけど目に余るなら言って欲しいな」
「そうね。じいや、それでいいわね」
それまで微笑ましく俺達の会話を聞いていたじいやさんは突然話を振られて真顔になった。
「はい。私は口を挟まないように陛下から仰せつかっておりますから、私からは何もありません」
無いの?執事さんと俺は同年代じゃないかな。言葉遣いには思うところがあると思うんだけど無いと言うならまあいっか。
「ちなみにじいやさんは執事の仕事だけをやっているのですか?」
「いえ、そう言えば、私としました事が名前を名乗るのを忘れていました。私は姫様専属の教育係兼執事のレバルと申します。じいやとお呼び下さい」
『そこはレバルさんだろ!!』
まさかじいやと呼べとは。ツッコミたい。いや声に出してツッコミたい。ジュリッタもツボったのか笑いを堪えてる。
「それでじいやさん。マイアと一緒に住む事になったら、一緒に生活されるのですか?」
「もちろんですとも。私は姫様が生まれた時からご一緒でしたから、姫様の事なら何でも知ってございます」
最後の一言は駄目だろ。まるでストーカーじゃないか。色々とツッコミ甲斐があるじいさんだ。失礼だが俺と同じ匂いがする。
「そろそろ、屋敷が見えて参りますぞ」
じいやさんが指を差す方向を見ると、伯爵家と同じ大きさの屋敷が見えて来た。門もあるし、広い中庭付きの立派な屋敷だった。
「え?わざわざ新築しなくてもここで充分じゃないのか?」
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