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赤の乱舞
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新月
鬼が一番に力を持つ日。妖が蠢く日。
殺気が溢れている。気を抜けば喰われる。
どこもかしこも、獲物を狙う目が見つめている。
喰えば強くなれる。それが全て。
ドオンと轟音が鳴り、森の木々が倒れていく。
ギャアギャアと鳥が羽ばたいていく。
ゾワゾワと蟲達が獲物を求めて蠢いている。
断末魔が聞こえる。
誰かが喰われ、誰かが強くなった。
飢餓に近い渇望。全ての化け物達は空腹だった。
そんな中、黒鬼の屋敷は静かに見えて、小鬼達もキュイキュイと酒を運んでは、他の小鬼と戯れあっている。
「今夜は、喧しいな」
「新月か。お前も五月蝿いなあ」
「そんなん、知るかい」
闇しかない夜。
闇を持つ黒鬼は、溢れる闇が抑えられない。
赤鬼は闇は持たぬが、瘴気が強い。
平穏な屋敷に見えるが、おどろおどろしい気配があちこちで踊っていた。
瘴気と闇がぶつかり、弾ける。
空腹で狂った妖が迷い込んで捕り込まれる。
ペロリと黒鬼が唇を舐めた。
「ツマミにもならんな」
「もう此処に来る阿呆は、なにも知らん弱い妖だけだろうよ」
赤鬼は酒を煽り、退屈そうにチラリと外を見る。
「……ん?」
ジッと遠くを見る。口元がゆっくりと弧を描く。
「まだ阿呆がいたようだなあ」
黒鬼は興味無さそうに酒を呑む。
「阿呆の相手はする気ないわ」
チャキリと刀を握り、赤鬼は立ち上がる。
「じゃあ、俺は遊んでくるわ」
楽しげに外へ向かって歩き出す。
キュウ?
小鬼は黒鬼を見つめて首を傾げる。
「ワタシは行かん。闇が増えるだけだわ」
鬱陶しそうに黒鬼は闇を動かす。
屋敷を壊されないように結界を張る。
その瞬間、炎が混ざった衝撃が屋敷一面を包み込んだ。
ビリビリと屋敷を揺るがす。
黒鬼は眉を顰めた。
「チッ、あの馬鹿。遠くでやれや」
ドオンドオンと、まるで花火のように辺りが明るく輝く。
小鬼達は驚いて、キャアキャアと部屋を走り回る。
闇が蠢く新月なのに、まるで祭りのように騒がしい。
「あはははは!逃げろ逃げろお!そら、見つけた!」
赤鬼が大笑いしながら刀を振り、切り付ける。
ゾロゾロ現れたのは、何百もの妖。
轟音と共に赤鬼に喰らいつこうと飛び掛かる。
「なんだなんだ! 遅すぎて寝ちまうぞ! もっと早よお来いや!」
ヒラリと避けて、蹴り上げる。
切り付け、殴り、蹴り上げてーー
赤鬼は楽しくて仕方ないと笑っていて、まるで踊っているようだ。
木々が倒れて、土が抉れる。数え切れない足音が響く。
妖共はグルグルと赤鬼を追いかけて、勝てないとわかると仲間を喰い散らかして力をつける。ゾワゾワと塊になっていく。
「イイねえ。やっと産まれたか?」
立ち止まり、刀をヒュンと振って血を落としながら、空を見上げて赤鬼は笑った。
全てを飲み込み、大きな大きな妖が産まれ、浮かんだ。
数え切れない腕が生えた、一つ目の妖。
ギョロリと赤鬼を睨む。
ギチギチと目の下が裂け、ギザギザの牙がずらりと並んだ口ができた。
「アカオニ…クワセロォオ!!」
「あはははは! 赤子は乳を飲んでろよ!」
赤鬼は業火を妖に纏わせ、焦がして切り付け、踏み付けた。
ドオオォンと地響きを立て、ひれ伏せさせる。
じわりと力を吸い取られて妖はボロボロと崩れていく。
赤鬼は、ギラギラと輝く目を細め、ニンマリ笑い、味わう。
「美味いねえ」
「おい」
「あん?」
「なにしてくれんだ。山をボロボロにしおって」
中庭の廊下に立ってる黒鬼に言われて、赤鬼は周りを見た。
山は抉れ、木々は倒れ、屋敷の周りはまるで土砂崩れでも起きたかのようだった。
「ははっ、やり過ぎたわ」
赤鬼はヘラリと笑う。黒鬼はビキリと怒る。
闇が轟轟と赤鬼に向かって動き出す。
「お前を喰らってやるわ」
「俺の方が強い」
「笑わせんな」
騒ぐ妖は全て消えた。闇と炎が弾けて踊る。
静かな新月は騒がしいお祭り騒ぎ。
もうすぐ祭りが終わる。
笑う月がそろりと現れた。
鬼が一番に力を持つ日。妖が蠢く日。
殺気が溢れている。気を抜けば喰われる。
どこもかしこも、獲物を狙う目が見つめている。
喰えば強くなれる。それが全て。
ドオンと轟音が鳴り、森の木々が倒れていく。
ギャアギャアと鳥が羽ばたいていく。
ゾワゾワと蟲達が獲物を求めて蠢いている。
断末魔が聞こえる。
誰かが喰われ、誰かが強くなった。
飢餓に近い渇望。全ての化け物達は空腹だった。
そんな中、黒鬼の屋敷は静かに見えて、小鬼達もキュイキュイと酒を運んでは、他の小鬼と戯れあっている。
「今夜は、喧しいな」
「新月か。お前も五月蝿いなあ」
「そんなん、知るかい」
闇しかない夜。
闇を持つ黒鬼は、溢れる闇が抑えられない。
赤鬼は闇は持たぬが、瘴気が強い。
平穏な屋敷に見えるが、おどろおどろしい気配があちこちで踊っていた。
瘴気と闇がぶつかり、弾ける。
空腹で狂った妖が迷い込んで捕り込まれる。
ペロリと黒鬼が唇を舐めた。
「ツマミにもならんな」
「もう此処に来る阿呆は、なにも知らん弱い妖だけだろうよ」
赤鬼は酒を煽り、退屈そうにチラリと外を見る。
「……ん?」
ジッと遠くを見る。口元がゆっくりと弧を描く。
「まだ阿呆がいたようだなあ」
黒鬼は興味無さそうに酒を呑む。
「阿呆の相手はする気ないわ」
チャキリと刀を握り、赤鬼は立ち上がる。
「じゃあ、俺は遊んでくるわ」
楽しげに外へ向かって歩き出す。
キュウ?
小鬼は黒鬼を見つめて首を傾げる。
「ワタシは行かん。闇が増えるだけだわ」
鬱陶しそうに黒鬼は闇を動かす。
屋敷を壊されないように結界を張る。
その瞬間、炎が混ざった衝撃が屋敷一面を包み込んだ。
ビリビリと屋敷を揺るがす。
黒鬼は眉を顰めた。
「チッ、あの馬鹿。遠くでやれや」
ドオンドオンと、まるで花火のように辺りが明るく輝く。
小鬼達は驚いて、キャアキャアと部屋を走り回る。
闇が蠢く新月なのに、まるで祭りのように騒がしい。
「あはははは!逃げろ逃げろお!そら、見つけた!」
赤鬼が大笑いしながら刀を振り、切り付ける。
ゾロゾロ現れたのは、何百もの妖。
轟音と共に赤鬼に喰らいつこうと飛び掛かる。
「なんだなんだ! 遅すぎて寝ちまうぞ! もっと早よお来いや!」
ヒラリと避けて、蹴り上げる。
切り付け、殴り、蹴り上げてーー
赤鬼は楽しくて仕方ないと笑っていて、まるで踊っているようだ。
木々が倒れて、土が抉れる。数え切れない足音が響く。
妖共はグルグルと赤鬼を追いかけて、勝てないとわかると仲間を喰い散らかして力をつける。ゾワゾワと塊になっていく。
「イイねえ。やっと産まれたか?」
立ち止まり、刀をヒュンと振って血を落としながら、空を見上げて赤鬼は笑った。
全てを飲み込み、大きな大きな妖が産まれ、浮かんだ。
数え切れない腕が生えた、一つ目の妖。
ギョロリと赤鬼を睨む。
ギチギチと目の下が裂け、ギザギザの牙がずらりと並んだ口ができた。
「アカオニ…クワセロォオ!!」
「あはははは! 赤子は乳を飲んでろよ!」
赤鬼は業火を妖に纏わせ、焦がして切り付け、踏み付けた。
ドオオォンと地響きを立て、ひれ伏せさせる。
じわりと力を吸い取られて妖はボロボロと崩れていく。
赤鬼は、ギラギラと輝く目を細め、ニンマリ笑い、味わう。
「美味いねえ」
「おい」
「あん?」
「なにしてくれんだ。山をボロボロにしおって」
中庭の廊下に立ってる黒鬼に言われて、赤鬼は周りを見た。
山は抉れ、木々は倒れ、屋敷の周りはまるで土砂崩れでも起きたかのようだった。
「ははっ、やり過ぎたわ」
赤鬼はヘラリと笑う。黒鬼はビキリと怒る。
闇が轟轟と赤鬼に向かって動き出す。
「お前を喰らってやるわ」
「俺の方が強い」
「笑わせんな」
騒ぐ妖は全て消えた。闇と炎が弾けて踊る。
静かな新月は騒がしいお祭り騒ぎ。
もうすぐ祭りが終わる。
笑う月がそろりと現れた。
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