そこは獣人たちの世界

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第一章

パン作り 後編

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時間のことは考えても仕方ないや。今はバターつくりに集中。といってももう瓶の中はなんかうまい具合に固まってるようだけど。

「お、もうできたのか?そういえばこの上の部分だけ掬って残った牛乳も捨てちまうのか?」

「いや、それは普通に飲めるはずだよ。でもパン作りに使いたいんだよね。」

「そうか、すこし牛乳飲みたい気分だったんだけどな・・・」

「全部使うわけじゃないから、コップに入れて飲む?」

「お、じゃあそうさせてもらうわ。」

キッチンの棚からちょっと大きめなコップを取り出すとささっと洗って、僕のほうにコップを渡してくる。ついでってことか。うまくボウルからコップに注ぐ、こういうの結構難しいんだけど、上手くこぼさずにできたな。
そのまま牛乳を渡すとまず軽く一口。なんか驚いた顔してそのままゴクゴクと一気に飲み干してしまった。豪快な飲み方だ。

「なんかいつもよりも味がさっぱりして美味かったな。あっという間に飲み干しちまった。」

「そうなの?てっきりクリームをとったから味が薄くなったかと思ったけど。」

「というか、いつも濃すぎてなんというか舌に絡みつくというかんじで飲みづらかったんだよな。」

うーん、そういうものなのか。まぁ飲みやすくなってクリーム獲れてバターも作れたから結果は最高なのかな。それに残ったホエーとかいう部分はレモンがあればチーズにできるんだっけ。
それは後で確認しよう。塩を混ぜて完全にバターも完成させたからパン作り再開だ。型が無いからボウルで丸いパンになるな。作った種と塩と強力粉に牛乳、少しだけ砂糖を入れて混ぜていく。

「手際いいな、確か初めて作るって言ってたよな?」

「うん、初めて作るよ。でも作り方見ながらだからね。」

「作り方を見るだけでそこまで手際いいなら充分だろ。」

うぅん、手際が必要な作業でもない気がするけど、褒められて悪い気はしないからいいや。もちろん話しながらも混ぜ混ぜと生地をこねる。まとまってきたらバターを入れてさらにコネコネ。それでひとまとまりになったら丸い形に閉じて、とじめを下にしてすこし休ませる。
すぐに生地が倍に膨らむのでガス抜きしてまたすこし休ませる。いい感じに出来上がったっぽいかな?あとはこれを8等分くらいにして焼いていくだけ。

「えっと、これを焼きたいんだけど、例えばオーブンとかはないよね?比で直接焼くんじゃなくって熱で焼くような物なんだけど。」

「火で焼くならそっちのフライパンが置いてあるところで焼けるが、熱ならその下の戸があるだろ?その中で焼くといいぞ。蒸し焼きとかで使う奴なんだが。」

「あー、どうだろ、それでいいのかな。まぁやってみるか。」

まずは8等分した生地の一つだけとって言われたところを開けてみると、中はアニメで見たことあるようなオーブンそのものだった。熱は魔道具で出してるのかな?これなら大丈夫そうだな。

「入れて閉じたけど、熱は閉じたら勝手に出る感じなの?」

「あぁ、それなら魔道具の操作が必要だな。熱とか火とかを出す魔道具は遠隔操作じゃないと危ないからな。下の熱を出す魔道具ならここの魔石を押せば熱が出始める。赤い間は熱が出てるから注意してくれ。もう一度押して完全に赤いのがなくなったら手を入れても大丈夫な熱さになったサインだ。」

「なるほど、了解。」

うーん、問題は完全に閉じちゃうから中の様子が見れないんだよな。蒸し焼きとかの時はどうやってたんだろ?

「これだと中が見れないけど使うときは普通に開けて中を確認してた?」

「あぁ、時々開けて中を確認して大丈夫だ。」

「そっかよかった。初めてだから何度も開けて確認するね?」

「おう、上手くできるといいな。」

どうにも酵母つくりやパン生地が膨らむのが早すぎた。だから焼くのも早い可能性があるから焦げないよう注意しないといけないよね。
少ししたらすぐ開けて確認してみる。おうふ、なんかもういい感じに焦げ目ついてない?多分十分だろうからさっさと熱を止める。

「・・・さすがに早すぎないか?」

「いやだって、なんかもうぼくがみたことあるようなパンの色になってるんだもん。」

熱がやんだのを見て取り出してみると思った通りいい感じの濃い目の小麦色に染まっている。ちょっとちぎってみると表面は少しパリッと、でも中はかなりふわっとした感じだ。
試しにちぎったのを食べてみると、結構おいしい。というか朝食べた黒パンとは大違いと言っていいと思う。

「おぉ、ほんとに柔らかいんだな。なぁ、俺も食べてみていいか?」

「ん、僕は残りも焼いちゃうからよかったらこれ食べちゃっていいよ。」

「お、まじか。じゃあそのままかぶりつかせてもらうぜ?」

そういうとほんとにそのままガブッといってしまった。あ、尻尾がピンと立ってる。駄目だったのかな?そう思ったけどあっという間に僕の両手サイズくらいはあったパンを食べきってしまった。

「・・・うまいなこれ。」

「そ、そう?よかった。尻尾が立ってたから口に合わないのかと。」

「いやいや、これはすごいだろ!これ売りだしたらもしかしてすごいんじゃないか?」

「うーん、僕の技術で作ったのは売れるものじゃないと思うよ?もし売るなら作り方をパン屋に売ったほうがいいと思う。」

自分の料理技術なんて自分が食べるためだけに使ってきたものだ。美味しいと言ってくれるのは嬉しいけど、それを売るとなるとやっぱちょっと躊躇する。
取り敢えずは残りの7つ分も焼いてお昼にしないと、僕もだいぶお腹すいてきたからな。僕はいいけどガロはパンだけだと足りないだろうか?もうちょっとなんか作ろうかな。
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