そこは獣人たちの世界

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第一章

*じじいに渡す昼食

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キオのことでじじいに会いに行くことが増えた。じじいのとっていろいろと対応が増えてきついことだろう。だが今回のことはキオのことを思ってやってくれたこととはいえじじいが突っ込んできたから会いに行くわけだから、気にしすぎることはないか。
ノックしてはいるといつものように書類に埋もれて仕事をしている。他のギルドマスターも大体書類仕事に埋もれてるから仕方ないことなんだろうが、もう少し下の奴らに振り分けてもいいだろうに。

「じじい、持ってきたぞ。」

「ぬ、ガロか。昨日の今日で済まぬな。キオ君は何を作ってくれたのじゃ?」

「サンドイッチっていってたものだな。パンに肉と野菜挟んだものだな。」

「ふむ、キオ君の昨日の料理を思うとかなりシンプルじゃな。」

「だがいつも俺は昼はこれだぜ?からあげにしないかといったんだが、昨日の夕飯が揚げ物だからなしって言われちまったぜ。」

少しだが期待していたんだが、こればっかりはキオのこだわりもあるだろうし、揚げ物でもすぐできるといってはくれるが、作ってるのを見れば大変そうではある。作ってもらってる身で無理には言えない。

「まぁそれは予想済みじゃ。しかし、このパンはやはり昨日食べたパンの切ってない状態かの?」

「あぁ、そうだな。バケットとか言ってたか?」

瓶箱を出して見せるとさすがじじいというべきか、すぐに昨日のパンと同じものだと分かったらしい。切った状態で出してたはずのパンだったのにな。

「昨日は言わなかったのじゃが、これがすごいものなのはガロはわかっておるかの?」

「すごいもの?確かに柔らかくてうまいが硬い食感が好きなやつも多いだろ?」

「それはそうじゃが、焼いたというのにあの柔らかさと、パン自体のほのかな甘み。味付けなしでこれだけうまいのじゃ。そして今日のは焼いてないようじゃが、こうしてパンに具材を挟んだだけでもかなりうまいのじゃろ?」

「あぁ、うまいな。」

キオの作ったものだからとも思ったが、じじいとしてはかなりこのパンを注視しているようだ。確かに王都でもこんなパンは味わったことはないんだが。

「いいかガロ、以前にもニンゲンが来ていたという話はしたじゃろ?これも仮説じゃが、3000年よりも前も1000年ごとに来ていた可能性はあるのじゃぞ?それ以前の歴史は戦乱のせいでほぼ消えておるからわからないだけでの。」

「んな、そんなことありえるのか?」

「じゃが以前よりもニンゲンが現れていたというならば、キオ君が何も問題なくこの世界に順応できている理由になる。」

「なるほどな・・・」

確かに食材に関してはかなりキオは順応している。野菜や果物なんて触れたことない素材ならどういう調理に向いているかもわからないはずだ。俺たちの先祖がニンゲンから何かを得て野菜や果物を育てていたのだとしたら、キオが困惑しない説明がつく。

「でもそれならキオ以外のニンゲンがこういうパンとかだけじゃなく、料理だっていろいろ広めたんじゃないのか?」

「その可能性は大いにあるが、キオ君はまだこの町しか知らぬから何とも言えぬの。それに外食もしておらぬじゃろ?」

「あぁ、兎串くってダメだって断念してからはほぼ自分で作ってるな。」

あの一件があったせいで俺も強くは言えなくなっちまったってところはある。しかもキオががっかりする顔はあの時よりも見たくない気持ちは強い。

「もう少しキオ君に色々見せて回ったほうがいいじゃろうな。それで分かることも増えるじゃろう。」

「それは一応王都でやるつもりだ。この町よりは王都の食事処のほうがいいだろ?」

「まぁの。」

じじいが言ってるのはキオのことをわかるというよりも、ニンゲンについてわかるって言ってるのが気にかかるがしょうがない。キオのことをいろいろと気にかけてくれてるとはいえ、ギルドマスターなのだから。
だがこういう話題になったからこそ聞けることもある。おそらく求める答えは返ってこないだろうが。

「なぁじじい。キオはニンゲンばかりの世界から来たといっていたんだ。元の世界に、帰れると思うか?」

「それを聞いてくるか。儂はその質問には答えたくないぞ。」

「あぁ、その答えだけで十分だ。」

つまりはわからないということだが、おそらくは帰れない可能性のほうが強いのだろう。だがそれはキオにとってはいいことなのかもしれない。

「昨日にでもキオ君からそういう話があったのかの?」

「逆だじじい。よくわからないが、帰りたいという気持ちを一切感じねぇんだ。」

そう、あいつからは全く帰りたいという気持ちを感じない。むしろこの世界にい続けたいと本気で思っているようにしか見えない。そう、来た直後のあの日からずっと。

「なにか、元の世界で抱えていた不安や不満があったのかもしれぬの。」

「やっぱそうなんだろうな。それはなんとなく感じてる。」

聞いてやってその不安や不満をほぐしてやりたいような、どうせこの世界では関係ないのだから蒸し返すのはよくないような、難しいところだな。

「今のキオ君はかなり楽しそうじゃからの。話してくれるのを待つのがよいじゃろう。」

「・・・そうだな。」

「それにしても、もしかするとじゃが、他のニンゲンもそうした向こうでの不満、不安があってこの世界に着た可能性もあるかもしれぬな。それならばずっとこの世界にいたいと思う気持ちになるじゃろうからの。」

「それは、3000年前のニンゲンの話か?」

「詳しくはギルドグランドマスターに聞くとよい。ほら、儂もそろそろ書類を片付けるのに集中しないといかぬ。キオ君のところに言ってやりなさい。」

はぐらかされちまったが、こればかりはじじいから聞いちゃいけない話ってことだろう。だがすぐ出ていくわけにはいかないんだよな。

「おい、一応その瓶箱は使ったら洗って帰せよ?」

「ぬ、そうじゃったな。儂の瓶箱を3つ渡す。明日からはそれに詰めてきてくれ。これはきちんと王都に旅立つ前は返そう。」

すっと渡された瓶箱は俺の瓶箱よりも大きめだ。じじい、どんだけ食うつもりだ?いや、余裕を持たせた箱を用意しただけと思っておこう。

「わかった。また明日なじじい。」

「うむ。」

今日はこれでじじいと話は終わりだ。明日にまた届けに来るからなんかあったらその時でいいだろ。そこそこ話し込んじまったが、キオの火の属性はどのくらい進んでるんだろうか。
あんまり進んでなくとも、魔法よりも近接戦闘に重視しなくちゃいけない。危険な状況の時に剣で防げた方が確実にダメージは軽減できる。いくら魔素で体を覆っていてもダメージを完全に防ぐことはまずできないのだから。
キオは魔法を重点に置きたいようだが、せめて防御手段だけでも形にはしてやらなきゃいけない。そのためにも昨日あんな風に脅しを込めて防御させたんだからな。
あぁ、忘れてた。昨日そのペナルティができなかったんだった。今日も同じようにやるつもりだったんだが、うまく防ぎきれなかったら今日は二倍だな。ダメなときは早めに切り上げるか。
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