そこは獣人たちの世界

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第一章

疾走豚討伐 前編

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南の舗装道をしばらく進んだ後、西のほうにと草原に入り少し進むと、緑の草原にたたずむ白い姿が遠めに見える。どうやらあれが疾走豚のようだ。兎よりも少し大きいくらいでそれほどの大きさがあるわけではない。

「ねぇ、あれが疾走豚、なんだよね?」

「あぁ、図鑑の資料で呼んだとおりだろ。小柄な白い豚。」

「確かにそう書いてあったね・・・」

豚と聞いてそれなりの大きさを覚悟していた。でも実際見るとほんと小さい。遠いからそう感じるんじゃなく、この間の兎よりは大きい程度なのがわかるからだ。資料でみた他の魔物も小柄ってのはあんなもんだってことかな。

「一応聞くけど、あれで成体なんでしょ?」

「そうだ。それにしてもだいぶ道に近いところにいるな。駆除するぞ。」

「ちょっとまって。戦うのはいいんだけど、道に近いとまずいの?」

「あぁ。基本的に疾走豚はセリーヌの町だと西側方面にしか生息していない。だが町を大回りによけて道を通っちまうやつもいる。」

「なんか東側に行くと問題があるの?」

西側だけに生息していて東に行くと変異して危険とかだろうか?そんなことは図鑑には書いてなかったけど。

「いや、別に東側に行く分にはいい。だが生態で見たはずだ。あいつらは疾走中に邪魔なものがあると体当たりする。馬車とかが体当たりされると危ないだろ?」

「なるほど。それはそうだね。」

なんか知らないけど疾走豚は突然疾走を始めるらしい。今見ているやつはのんきにぼけーっと突っ立ってるけど、走り始めるとちょっと厄介だから走り始める前に肩を付けたほうがいいようだ。

「早速やってみろ。魔法でも剣でもいいが、刺激するだけだとこっちに走ってくる。できれば一撃で仕留めろよ。」

「それ、魔法より剣がいいって言ってるようなもんじゃん。まぁいいけど。」

一応気づかれて体当たりでもされたらたまったもんじゃないので、魔素纏いを体中にかけて一気に突っ込む。ガロはたぶん失敗したら手は貸してくれるだろうけど、基本的には僕一人でって思ってるはずだ。
僕が接近したことに気づいたようで、ビギ、とちょっと豚らしくない声をあげながらこちらに振り向いた。剣をもって振りかぶろうとしてるのは見えてるはずだ。
生存本能からか、向かってくるためか、後ろ足で地面を二回蹴り上げる。走る前の予備動作だ。図鑑の資料も役に立つ。走らせる前に仕留める!

「おりゃ!」

ビギィィと、今度もあまり豚らしくない変な悲鳴を上げて倒れる。僕の剣が後ろ足を切り落したからね。でもその場で倒れてもまだ少し息がある。
ちょっとかわいそうな気もしたが、こいつが本能のせいで人に突っ込んでいく可能性もあったんだ。これもこの世界の摂理。せめてこれ以上苦しまないようにと美日を落としてとどめを刺した。

「いい手際だ。こういう足の速い相手には足から狙うのは有効だからな。」

「うん、それも資料で読んだなって思い出したよ。あの地面を蹴り上げる動作の跡走るんだよね。」

「そうだな。走られると厄介だ。といってもこいつはこうしてぼーっと突っ立てる時のほうが多く、その時なら今みたいに素早く対応すれば簡単に倒せる。」

資料通りっちゃ資料通りだけど、なんで突っ立てるんだろうか。まぁ元の世界の野生動物でもそういうのがいたし、考えてもしょうがないんだろうけど。

「それで、この死体はどうするの?」

「兎の時と一緒だ。いったん普通の皮袋に入れて解体は解体屋に頼む。」

そういうと兎の時も出してくれた薄茶色の皮袋を渡されたので、仕留めた豚を切り落とした部分も含めて詰めていく。

「ふーん。ちなみにさ、その袋に入らないような大きい魔物はどうするの?」

「そういうのにはこっちの縮小の魔石を付けた青い袋を使う。これはこの魔石のついたひもを外すと力を発揮する。近づけて口を向ければその方向のものを吸い込んで収納してくれる。この袋の見た目に反してすごい収納能力で、大きい相手でも何十匹かは収納できるぞ。」

「おぉ、すごいね。・・・でもそれ、人とかに向けたら危なそうだね。」

「人に向けたかは知らないが、魔物の死体以外に使おうとするやつがいたのは確かだな。だがこれは魔物の魔石の反応があるものしか吸いこまない。」

「魔物の魔石?」

魔石についてはなんとなくわかってたけど、魔物にも魔石がついてるのはまだ聞いたことない。資料で見た範囲では一部の魔物に魔石収穫可能の記載はあったけど。

「ん、いってなかったか。魔石は自然のものと魔物が体内で育てたものとある。他にも人工魔石なんかもあったか?まぁそれはいい。魔物や魔族は大きさはまちまちだが体内に魔石を保有してる。その魔石は自然のものとは全然違う反応があるからそれを感知して収納するんだ。」

「なるほど。じゃあ人が吸い込まれる心配はないんだね?」

「どうだとうな?俺たちにも魔石ができるやつがいる。体内じゃなく体外の奴もいるが。そいつらなら吸えちまうのかもな。これが魔物の魔石だけじゃなく、生物全般の魔石に反応していればだが。」

「おっそろしいこと言うね。生物全般の魔石に反応するんじゃないことを祈るよ。」

人にも魔石ができるっていうのは初めて聞いたけど、もし僕の体に魔石ができたら吸われちゃうかもしれないってことだからね。そういう怖いことは起こらないでほしいもんだ。

「さて、おしゃべりはここまでだ。あっちの方にまた道のほうに歩く影が見えた。駆除しに行くぞ。」

「よく見えるね。僕は見えなかったや。」

ガロの言う方に少し進むと確かに遠目に豚の姿が見えた。ただし、今度は走ってる豚だ。すごく早いというほどじゃないけど、なかなかの疾走具合。
あの調子で走って行ったら確実に舗装道に出る。そして偶然その時に馬車が通ってなんて事故が起こるかもしれないわけだ。そうなる前にここで止めなくちゃならない!
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