そこは獣人たちの世界

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第一章

訓練後の一間

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もうほんとにへとへとだ。歩くのもきついほどに。それでも帰りにおぶってくれたりはしない。お姫様抱っことはいえ運んでくれたこともあったのに。帰るまでが訓練だと鼻息一つで却下されちゃった。
でもほんときつかった。何度あのハンマーを受け流したか。魔素纏いのために何度も何度も全力で纏ったり解除したりを繰り返した。解除しなくてもいいじゃないかと思うだろうけど、連撃訓練じゃなく一撃一撃ごとの打ち込み訓練の時は一撃ごとに解除するのを何度もやってた。
そして今回のハンマーはその一撃ごとになっていたわけだ。いやでも多分ガロならあのハンマーでも何度も振りかぶってくることができるんだろう。つまりわざとこういう訓練にしたんだと思う。
さらに言えばだんだんと振りかぶりの威力や速度も上がっていって、最終的には受け流し切れずにわき腹に直撃もした。もちろんその受けた瞬間はとてつもなく痛かったけど、なぜかすぐ引く痛みだった。
ガロ曰く、痛みが残るような打ち込み方はしてないそうだ。器用すぎる。そしてそのあとに行ったのが、今受け流せるのはここまでかだった。受け流せないぎりぎりを見られていたらしい。
まぁわかるよ?僕が受け流し切れないようなのを受けそうになったら助けてくれるためなんだろうと。でもさ、何もあんなハンマーでやることはないだろうに。いつもの木刀にしてほしかったよ・・・

「うなだれてるが、まだ大丈夫だろ?家まで歩くくらいの体力は残ってるはずだ。」

「うぅ、それって今日の訓練、僕の耐力計算も織り込み済みってこと?」

「いつも織り込み済みだ。帰ってから飯も作ってほしいからな。」

あぁ、そういえばそんなのもあったね。僕がご飯、作るのかあ。今日はもう、簡単なので済まそう。うん。

「さっとできるのでいいよね。さすがに疲れちゃってて。」

「あぁ、かまわない。それでもいつもうまいからな。楽しみにしてる。」

思わずため息が出る。いや、そんな風に楽ししてるなんて言われたら、頑張らなきゃって思っちゃうじゃん。それがわかってて言ってるのかな。
とぼとぼと歩きながらなんとか家に到着。そういえばあからさまに歩くの遅かったけど、遅いからもっと早く歩けとかはいわれなかったし、合わせて歩いてくれてたな。前にぐったりしてたら一度言われたけど、今日の訓練はさすがに体にだいぶきてるのがわかったからかな?
ほんとはソファーにでも寝転びたいけど、そんなことしたら動けなくなるからさっさとキッチンに入る。パンのストックは、ある。トマトも、ある。よし、ブルスケッタにしよう。あれならチーズ載せて焼いて、トマトを乗せるだけでおいしい。
それだけだとガロが足りないだろうから、付け合わせに豚冷しゃぶ。これも結構すぐできるし、さっぱりしたほうが疲れた僕の体でも入るだろう。
作るのが決まったらお湯を沸かせつつ、バケット型のパンを切って、チーズをのせてオーブンへ。焼いてる間に沸騰した湯に薄く切った豚をしゃぶしゃぶして、冷水で冷まして水けをきる。レタスをしいてその上に豚しゃぶを盛り付けたらちょっと塩をかけて、その上からレモンを生絞りで完成。
焼きあがったチーズ載せパンにトマトをのせて、こっちも塩をかけて完成。ほんとはオリーブオイルとかあればトマトを和えることができるからもっと本格的でいいんだろうけど。まぁこれでも十分おいしいのは食べてわかってるからね。
盛り合わせは二人分をそれぞれ一皿ずつにしちゃってるから、冷しゃぶが先になくなっちゃうかもしれないけど、まぁ僕はブルスケッタメインでいいかな。

「できたよガロ。」

「おぉ、今日は一段と早いな。」

「さっとできるのでいいって聞いたでしょ?ブルスケッタと冷しゃぶ。前も食べたけど、ちょっと空いたから、いいよね?」

「あぁ、全然かまわない。いただきますだな。」

「うん、いただきます。」

まずはブルスケッタから。トマトの汁が染みすぎちゃうとパンがふやけすぎちゃって悲しくなるからね。サクリと一口。チーズの風味とトマトの酸味、塩で際立つトマトの甘みが合わさっていい感じ。
僕がブルスケッタを食べてる間に、ガロは冷しゃぶから手を付けててあっという間に8割がたなくなるけど、一応残しておいてくれてるみたいだ。ブルスケッタもほどほどに冷しゃぶにも手を付ける。
レモンと塩だけの味付けだけど、十分おいしい。でもそのうちポン酢とかゴマダレとかもこの世界で挑戦したいところだ。ポン酢は難しそうだけど、ゴマならゴマさえ手に入ればすぐ作れるんだけどな。

「ごちそうさまでした。」

「あぁ、ごちそうさまだな。」

同じ皿同士なので同時に食べ終わることになる。ちょっとこの感じが好きでわざと同じ皿にしたわけだ。でもガロが遠慮しちゃうところもあるから、たまにしかやらないけど。
食後の待ったりした気分を味わいたいけど、まったりしちゃうと片付けがおっくうになる。踏ん張って椅子から立ち上がろうとしたらガロが待ったをかけた。

「いや、今日は俺が全部片づけよう。皿も二つだしな。」

「いいの?」

「あぁ、夜もあるから少しだけ休ませとけ。」

「え?」

「ん?」

「え?よるも、あるって、いった?さすがに今日は休みだよね?」

「あぁ、言ったな。あるぞ。むしろ今日は絶対にやる。」

絶句というのはこういうのを言うんだ、と思った。きっと今明日かは僕の体は動かなくなるんじゃないだろうか。このまま眠ってしまおうかと、椅子の背に寄りかかって目をつぶって現実逃避することにした。
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