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第二章
ばれたことより
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じっと僕のことを見る目はさっきの好気的な色もあるけど、それよりもミサアメル色のほうが強い気がする。明らかにじっと僕のことを見ているのに、ガロが軽く胸の前を手で守ってくれるだけで、ディバンさんに何も言わないのはそのせいだろう。
少しの沈黙がかなり長く感じられた。ずっと付き合いのあるはずのセリスさんもディバンさんのほうを軽く見ているけど、さっきまでの何もわからなかったのと違い、何を言い出すのかというような焦りがあるようにも見える。
ディバンさんがちらっとガロのほうを見ると、はぁと大きくため息をついて、仕方なさそうに深くソファーに座りなおした。それでちょっとだけ重い雰囲気は消えた。
「しょうがない、俺から聞こう。そっちから話してくれればよかったが、そうもいかないようだしな。」
「聞かれればできうるかぎり答えるが、俺としてはできれば話したくないといっただろ。」
「そうだな、キオ君も今の圧に耐えられず話してくれるかと思ったんだが、鍛え方がいいんだろうな。」
いや、圧でしゃべるかどうかっていわれても、しゃべるんだって言ってるようには感じなあったんだけど、むしろ詰まって声を出していいのか不安になるような圧だったんだけど。そそう思いながら僕は軽く顔を横に振ることしかできなかった。
「それで、キオ君はどういう存在かという見当がついてるとは?」
「あぁ、そうだったな。核心を突くぞガロ?キオ君は、ニンゲンだろ?」
うっ、とちょっと声が出てしまって、思わず自分の口を手でふさいだ。どうやら本当に検討がついてたみたいだ。隠し事できそうにないよと思いながらガロを見る。こっちを軽く見たガロも大きく息を吐いた。
「はぁ、そうだ。キオは本来はニンゲンだ。」
「ニンゲン?あのニンゲンですか!?3000年前の再来・・・」
そういって僕のことをまじまじと見つめていたけど、ディバンさんは軽く手を振りながらあきれるように溜息を吐いた。
「セリス、取り繕う必要はないぞ。ビャクラクから種族変異の考察が届いてるだろ。おそらくキオ君で感づいたんだ。ちゃんと俺たち以外が見ないように届けててよかったけどな。」
「あぁ、なるほど、どう返すか悩んでいたのですが、納得です。」
そういうと僕を見る目をあっけなくやめて深く座りなおした。どういうことだろう?
「どういうことだ?何を知っている?」
「セリスから話してやれ。そのほうがわかってるんだと伝えやすい。」
「そうですね。つまり1000年ごとにニンゲンがこの世界にあらわれるということですよ。3000年前は初代グランドマスターのもとへ。2000年前は淫行の魔族として、そして1000年前は魔道武具開発部門のもとにですね。」
「じじいが話したって言い方じゃなかったな。知っていたのか、ギルドの上層部は。」
「いや、俺とセリスだけだ。王族のほうまで話が流れると誘拐事件が増えそうだったからな。特に俺たちの代はラミリスの事件から約1000年になる。どこかで事件は起こるだろう時にはかけてたが、まさかガロが保護していたとはな。」
「ですがよかったです。王族の手のものでもなく、研究機関のものでもなく、危険な手のものでもなく、ガロの手によって保護されたなら、私たちも内密に補佐できますから。」
「ちょ、ちょっとまて、まさかニンゲンのことをそこまで調べていたってことは、種族変異事件も当てがついてたっていうのか?」
「半分は正解で、半分は外れだ。セリス。」
「私が説明するのですか?まぁいいでしょう。確かに種族変異が起こりやすいのは混種で性行為を行った場合ですね。鹿と犬の混種で鹿の見た目であったのに犬種との行為後に犬になったことでかなり問題視されました。」
「なんだと!じゃあなんで・・・」
「全体周知していないのは、4代先までさかのぼっても正式に猫種の血統の奴が、虎種と交わって虎種になったからだ。明らかな毛並みと毛色の変化だけじゃなく、体格変化も起こって結構問題になったんだぞ。」
鹿から犬だとかなり変わるなら問題になりそうだけど、猫と虎ってかなり似てる種だからそこまでと一瞬思ったけど、毛並みや毛色が変わったら驚くのは無理もないだろう。ただそれでも聞いてるだけでも混種の人は行為するとき気を付けるようにと呼びかけ暗いhで来たと思うんだけど。
「だがそれでも、混種の奴への注意喚起はできただろう。」
「本気で言ってるのかガロ?混種差別は王都ですらまだある思想だぞ。」
「ぐっ、それは、そうだが・・・」
混種差別と聞いて、結構この世界の人は温厚で道を譲るような人が多いと思っていたけど、未知に対する差別、いや人によっては区別といえるのか、そういう思想もないわけじゃないのを知ると、ニンゲンである僕は気をつけなきゃいけない気がしてきた。王族へのらちが不安とはいえガロが過度なほどに気を付けてるのも納得がいく。
「私たちギルドがそれを発表してしまえば、行為後に変種したものは混種だと言っているようなものになってしまいます。猫種が虎種になったとしてもですよ。」
「・・・あぁ、そうだな。」
そうはならないと言いたかったけど、そうなってしまうんだろう。もちろん平気な人もいるだろう。でも拒絶する人はとことん拒絶する。なら原因不明のままのほうが、言い訳は聞くのかもしれない。
「先代にも言われましたが、これは調べるべき案件ではなかったのですよ。むしろもみ消さなければいけない案件だったのです。」
「いうな、俺が勝手にやったことだ。何かあったら責任はとる。」
「それでは困るので言ってるのですよ。今の王族に権力を渡すわけにはいきません。絶対に。」
「・・・あぁ、そうだったな。」
なんか僕が人間だって話よりも厄介な種族変異事件の話から、さらに厄介な王族関連の話まで始まっちゃったんだけど、なんでこっちをちらっと見るの?いや、巻き込まれ、ないよね?
少しの沈黙がかなり長く感じられた。ずっと付き合いのあるはずのセリスさんもディバンさんのほうを軽く見ているけど、さっきまでの何もわからなかったのと違い、何を言い出すのかというような焦りがあるようにも見える。
ディバンさんがちらっとガロのほうを見ると、はぁと大きくため息をついて、仕方なさそうに深くソファーに座りなおした。それでちょっとだけ重い雰囲気は消えた。
「しょうがない、俺から聞こう。そっちから話してくれればよかったが、そうもいかないようだしな。」
「聞かれればできうるかぎり答えるが、俺としてはできれば話したくないといっただろ。」
「そうだな、キオ君も今の圧に耐えられず話してくれるかと思ったんだが、鍛え方がいいんだろうな。」
いや、圧でしゃべるかどうかっていわれても、しゃべるんだって言ってるようには感じなあったんだけど、むしろ詰まって声を出していいのか不安になるような圧だったんだけど。そそう思いながら僕は軽く顔を横に振ることしかできなかった。
「それで、キオ君はどういう存在かという見当がついてるとは?」
「あぁ、そうだったな。核心を突くぞガロ?キオ君は、ニンゲンだろ?」
うっ、とちょっと声が出てしまって、思わず自分の口を手でふさいだ。どうやら本当に検討がついてたみたいだ。隠し事できそうにないよと思いながらガロを見る。こっちを軽く見たガロも大きく息を吐いた。
「はぁ、そうだ。キオは本来はニンゲンだ。」
「ニンゲン?あのニンゲンですか!?3000年前の再来・・・」
そういって僕のことをまじまじと見つめていたけど、ディバンさんは軽く手を振りながらあきれるように溜息を吐いた。
「セリス、取り繕う必要はないぞ。ビャクラクから種族変異の考察が届いてるだろ。おそらくキオ君で感づいたんだ。ちゃんと俺たち以外が見ないように届けててよかったけどな。」
「あぁ、なるほど、どう返すか悩んでいたのですが、納得です。」
そういうと僕を見る目をあっけなくやめて深く座りなおした。どういうことだろう?
「どういうことだ?何を知っている?」
「セリスから話してやれ。そのほうがわかってるんだと伝えやすい。」
「そうですね。つまり1000年ごとにニンゲンがこの世界にあらわれるということですよ。3000年前は初代グランドマスターのもとへ。2000年前は淫行の魔族として、そして1000年前は魔道武具開発部門のもとにですね。」
「じじいが話したって言い方じゃなかったな。知っていたのか、ギルドの上層部は。」
「いや、俺とセリスだけだ。王族のほうまで話が流れると誘拐事件が増えそうだったからな。特に俺たちの代はラミリスの事件から約1000年になる。どこかで事件は起こるだろう時にはかけてたが、まさかガロが保護していたとはな。」
「ですがよかったです。王族の手のものでもなく、研究機関のものでもなく、危険な手のものでもなく、ガロの手によって保護されたなら、私たちも内密に補佐できますから。」
「ちょ、ちょっとまて、まさかニンゲンのことをそこまで調べていたってことは、種族変異事件も当てがついてたっていうのか?」
「半分は正解で、半分は外れだ。セリス。」
「私が説明するのですか?まぁいいでしょう。確かに種族変異が起こりやすいのは混種で性行為を行った場合ですね。鹿と犬の混種で鹿の見た目であったのに犬種との行為後に犬になったことでかなり問題視されました。」
「なんだと!じゃあなんで・・・」
「全体周知していないのは、4代先までさかのぼっても正式に猫種の血統の奴が、虎種と交わって虎種になったからだ。明らかな毛並みと毛色の変化だけじゃなく、体格変化も起こって結構問題になったんだぞ。」
鹿から犬だとかなり変わるなら問題になりそうだけど、猫と虎ってかなり似てる種だからそこまでと一瞬思ったけど、毛並みや毛色が変わったら驚くのは無理もないだろう。ただそれでも聞いてるだけでも混種の人は行為するとき気を付けるようにと呼びかけ暗いhで来たと思うんだけど。
「だがそれでも、混種の奴への注意喚起はできただろう。」
「本気で言ってるのかガロ?混種差別は王都ですらまだある思想だぞ。」
「ぐっ、それは、そうだが・・・」
混種差別と聞いて、結構この世界の人は温厚で道を譲るような人が多いと思っていたけど、未知に対する差別、いや人によっては区別といえるのか、そういう思想もないわけじゃないのを知ると、ニンゲンである僕は気をつけなきゃいけない気がしてきた。王族へのらちが不安とはいえガロが過度なほどに気を付けてるのも納得がいく。
「私たちギルドがそれを発表してしまえば、行為後に変種したものは混種だと言っているようなものになってしまいます。猫種が虎種になったとしてもですよ。」
「・・・あぁ、そうだな。」
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「・・・あぁ、そうだったな。」
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