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第二章
パッスへの馬車
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教会に着くや否やきびきびと歩き出すガロに急いでついていく。話すこともないって言われたし、ほんとに黙ってついていくだけだ。
特に問題もなく結界棒のあるところまで付くとよく漫画とかアニメで見たような屋根代わりに皮ばりがされた馬車が止まっていた。
ただ、今まで王都とかセリーヌの町で見た馬車とは違う。引いているのが馬じゃなくすごく大きな亀だ。何あれ、つまり亀車?しかもその亀の隣にいるのも亀種の人だし。
「少し訪ねたい。パッス行きの馬車だろう?人を乗せるスペースはあるか?」
「およよ?冒険者さんですか?パッスの村にご用事で?」
「いや、パッスは通り道になる。」
「ほう、そうですか。お二人なら、何とか乗れますよ。ささ、どうぞどうぞ。」
「なら助かる。」
馬車の後ろ側を進めてくれた。馬車の上にはすでに大きなカバンがいくつか乗ってて、僕たち二人が乗ったらかなり狭そうだ。でもガロはさっさと乗ってしまったので、僕も続くように乗り込む。
「そんでは出発させてもらいますよ!」
「あぁ!頼む!」
御者席のほうから大きな声が聞こえると、ゆっくりと馬車、いや亀車?が動き出す。なんというか、動き出しからして遅そうだ。こんなんでほんとに二日でつくんだろうか。少し町から離れるとガロが肩をたたいてきた。
「キオ、小さな声ならもう聞こえはしないだろう。」
「あ、うん。ちょっと喋りたいとは思ってたんだ。ねぇ、この亀車?はなに?」
「亀車じゃなくこれも馬車であっている。村の所有する馬車にはあの運搬亀が使われることが多いんだ。」
「なるほど。でもちょっと遅そうなんだけど。」
「速度が出るのに時間がかかるが、スタミナがあるからな。三日か四日程度なら最速を維持し続ける。亀種の奴だと扱いやすいから御者をよくやっているな。」
「そういう利点があるんだね。」
馬だと1日ごとには休んだ方がいいだろうけど、あの亀なら夜も強行できるのか。速度出るのに時間かかるってことは最高速はそこそこ出るのかな?
「あ、もう一つ質問。この馬車、僕たちが来たらすぐ出発したけど?」
「あぁ、冒険者で乗るやつがいないか少し待っていたんだろう。アリストクラットからパッスまでの馬車用の舗装道沿いなら基本襲ってくるような魔物は出ないが、用心にこしたことはない。ギルドで依頼を出すと金がかかるからこうしてただ乗りさせる代わりに無料で護衛させるというわけさ。」
「あーなるほど。」
偶然そっち側に行きたい冒険者がいればこんな風に乗せていくんだろう。しばらく待ってもいなければ、あきらめて冒険者を雇うなり、一人で行くなりと選べるわけか。
そんなちょっとした話をしているうちに馬車がガタガタと少し早くなり始める。そしてあっという間にそこそこの速度を出し始める。ただちょっと、お尻が痛い。
「良い馬車とは言えないからな。酔いは大丈夫か?」
「あ、顔に出てた?うん、酔ったりはしないと思う。大丈夫。でもこれはお尻がきつい。」
「ならこれを使うといい。」
ガロがポーチからバスタオルを3つ束でだし、それを一緒に取り出した麻袋に詰めて渡してくれた。使っていいって言われたし、クッション替わりにお尻に敷けば、少しマシになった。
「うん、少しマシになったよ。」
「慣れないとこればっかりはな。まぁ大事なキオの尻が痛んだら、俺がするときに心地よさが減るかもだろ?」
「な、何言っ、むぐぐ!?」
「声がでかいぞ。」
即座に口を手でふさがれたからあんまり大声を出さずに済んだけど、御者さんを驚かせるところだったかな?危ない危ない。もう大丈夫と手をどかしてもらう。
「ご、ごめん。」
「俺もちょっとからかいすぎたな。」
少しばかりばつの悪そうな顔で笑ったけど、すぐに御者のほうに鋭い目線を流した。あれ、もしかして驚かすとかじゃなくって、あの御者さんも注意人物?
「えっと、あの御者さんも警戒しなきゃなの?」
「そうだな、まぁ小さく話す分には聞こえないだろう。御者の中には運ぶものを選ばないやつもいる。この御者はそういう節は見られなかったがな。」
「え、運ぶものを選ばない?」
王都の馬車とかも危ないものを運んでたりするんだろうか?それともこういう亀の馬車だとあることなんだろうか?
「あぁ、さっきも話したろ?アリストクラットは町長がいる。おっと、この辺で呼ぶなら領主様と呼んだ方がいいかもな。」
「う、もしかして呼ばれ方とか気にするようなタイプなの?」
「まぁ、そうだろうな。その領主様の神龍種の息のかかった貴族なんて呼ばれてるようなやつらがやばいんだ。」
「貴族・・・」
この世界にはいないのかと思ってたけど、やっぱ王族がいるなら貴族もいるんだ。そういうところは物語と同じものなんだろう。
「貴族の連中は神龍種たち王族連中よりも危険だ。王族連中は表立ってはギルドとの対立を避けて奴隷を所有してないことになってるが、貴族の奴らは表立って奴隷を所持しているからな。」
「え、えっと、表立ってるとかたってないとかより、奴隷っているんだねそれすら初めて知ったよ。」
「そういえば説明していなかったな。もっとも王都には奴隷はいない。一部の町や村にいるくらいなもんだ。んで、それが正規の犯罪奴隷や貧困奴隷ならまだいいんだが、インフィリアでは少し違う。」
「少し違う?それ以外の奴隷がいるってこと?」
「あぁ。インフィリアでは顔とか出身とかがいいやつを狙って奴隷落ちさせるやつらがいる。」
思わず生唾を飲んでしまった。それって無理やり借金作らせてとか犯罪を起こさせてって意味じゃなく、多分捕まえて無理やり奴隷に落とすってことなんだろう。
「インフィリア以外でもそういうことをやってる村はあるが、インフィリアはかなり顕著だ。だから気を付ける必要がある。」
「うん、余計に気を引き締めるよ。」
「ま、俺についていてくれれば大丈夫さ。それに、万が一が起こってもインフィリアにいるまでの間ならいいんだ。」
「それって、どういうこと?」
「インフィリアで真名を無理やり引き出させる。そのあとパッスへの馬車ににもつに混ぜてのせ、さらにアリストクラットの貴族に秘密裏に渡される。そこで引き出されたマナを使われたら完全な奴隷に落ちる。そうなったらまず助からねぇ。」
かなり声を潜めた話に、思わず苦い顔になる。アリストクラットではギルドの目があるからそういう手を使ってるんだろうってのがひしひしと伝わるからだ。
「・・・パッスの村って、それをわかってるの?」
「そうだな、そういうことをしてると知ってるやつも少なくはないだろう。だがそれがなければパッスはアリストクラットから支援を受けづらくなる。インフィリアの大事な中継役なのさ。」
「なるほどね。」
だからインフィリアまでの直通の馬車がないんだ。ギルドが抑え込んでるのか、はたまたないことで増長してるのかはわからないけど。
かなりインフィリアに行くのが気が重くなってきた。周りにはとにかく注意して、ガロから離れない。これを徹底しないといけないな。
特に問題もなく結界棒のあるところまで付くとよく漫画とかアニメで見たような屋根代わりに皮ばりがされた馬車が止まっていた。
ただ、今まで王都とかセリーヌの町で見た馬車とは違う。引いているのが馬じゃなくすごく大きな亀だ。何あれ、つまり亀車?しかもその亀の隣にいるのも亀種の人だし。
「少し訪ねたい。パッス行きの馬車だろう?人を乗せるスペースはあるか?」
「およよ?冒険者さんですか?パッスの村にご用事で?」
「いや、パッスは通り道になる。」
「ほう、そうですか。お二人なら、何とか乗れますよ。ささ、どうぞどうぞ。」
「なら助かる。」
馬車の後ろ側を進めてくれた。馬車の上にはすでに大きなカバンがいくつか乗ってて、僕たち二人が乗ったらかなり狭そうだ。でもガロはさっさと乗ってしまったので、僕も続くように乗り込む。
「そんでは出発させてもらいますよ!」
「あぁ!頼む!」
御者席のほうから大きな声が聞こえると、ゆっくりと馬車、いや亀車?が動き出す。なんというか、動き出しからして遅そうだ。こんなんでほんとに二日でつくんだろうか。少し町から離れるとガロが肩をたたいてきた。
「キオ、小さな声ならもう聞こえはしないだろう。」
「あ、うん。ちょっと喋りたいとは思ってたんだ。ねぇ、この亀車?はなに?」
「亀車じゃなくこれも馬車であっている。村の所有する馬車にはあの運搬亀が使われることが多いんだ。」
「なるほど。でもちょっと遅そうなんだけど。」
「速度が出るのに時間がかかるが、スタミナがあるからな。三日か四日程度なら最速を維持し続ける。亀種の奴だと扱いやすいから御者をよくやっているな。」
「そういう利点があるんだね。」
馬だと1日ごとには休んだ方がいいだろうけど、あの亀なら夜も強行できるのか。速度出るのに時間かかるってことは最高速はそこそこ出るのかな?
「あ、もう一つ質問。この馬車、僕たちが来たらすぐ出発したけど?」
「あぁ、冒険者で乗るやつがいないか少し待っていたんだろう。アリストクラットからパッスまでの馬車用の舗装道沿いなら基本襲ってくるような魔物は出ないが、用心にこしたことはない。ギルドで依頼を出すと金がかかるからこうしてただ乗りさせる代わりに無料で護衛させるというわけさ。」
「あーなるほど。」
偶然そっち側に行きたい冒険者がいればこんな風に乗せていくんだろう。しばらく待ってもいなければ、あきらめて冒険者を雇うなり、一人で行くなりと選べるわけか。
そんなちょっとした話をしているうちに馬車がガタガタと少し早くなり始める。そしてあっという間にそこそこの速度を出し始める。ただちょっと、お尻が痛い。
「良い馬車とは言えないからな。酔いは大丈夫か?」
「あ、顔に出てた?うん、酔ったりはしないと思う。大丈夫。でもこれはお尻がきつい。」
「ならこれを使うといい。」
ガロがポーチからバスタオルを3つ束でだし、それを一緒に取り出した麻袋に詰めて渡してくれた。使っていいって言われたし、クッション替わりにお尻に敷けば、少しマシになった。
「うん、少しマシになったよ。」
「慣れないとこればっかりはな。まぁ大事なキオの尻が痛んだら、俺がするときに心地よさが減るかもだろ?」
「な、何言っ、むぐぐ!?」
「声がでかいぞ。」
即座に口を手でふさがれたからあんまり大声を出さずに済んだけど、御者さんを驚かせるところだったかな?危ない危ない。もう大丈夫と手をどかしてもらう。
「ご、ごめん。」
「俺もちょっとからかいすぎたな。」
少しばかりばつの悪そうな顔で笑ったけど、すぐに御者のほうに鋭い目線を流した。あれ、もしかして驚かすとかじゃなくって、あの御者さんも注意人物?
「えっと、あの御者さんも警戒しなきゃなの?」
「そうだな、まぁ小さく話す分には聞こえないだろう。御者の中には運ぶものを選ばないやつもいる。この御者はそういう節は見られなかったがな。」
「え、運ぶものを選ばない?」
王都の馬車とかも危ないものを運んでたりするんだろうか?それともこういう亀の馬車だとあることなんだろうか?
「あぁ、さっきも話したろ?アリストクラットは町長がいる。おっと、この辺で呼ぶなら領主様と呼んだ方がいいかもな。」
「う、もしかして呼ばれ方とか気にするようなタイプなの?」
「まぁ、そうだろうな。その領主様の神龍種の息のかかった貴族なんて呼ばれてるようなやつらがやばいんだ。」
「貴族・・・」
この世界にはいないのかと思ってたけど、やっぱ王族がいるなら貴族もいるんだ。そういうところは物語と同じものなんだろう。
「貴族の連中は神龍種たち王族連中よりも危険だ。王族連中は表立ってはギルドとの対立を避けて奴隷を所有してないことになってるが、貴族の奴らは表立って奴隷を所持しているからな。」
「え、えっと、表立ってるとかたってないとかより、奴隷っているんだねそれすら初めて知ったよ。」
「そういえば説明していなかったな。もっとも王都には奴隷はいない。一部の町や村にいるくらいなもんだ。んで、それが正規の犯罪奴隷や貧困奴隷ならまだいいんだが、インフィリアでは少し違う。」
「少し違う?それ以外の奴隷がいるってこと?」
「あぁ。インフィリアでは顔とか出身とかがいいやつを狙って奴隷落ちさせるやつらがいる。」
思わず生唾を飲んでしまった。それって無理やり借金作らせてとか犯罪を起こさせてって意味じゃなく、多分捕まえて無理やり奴隷に落とすってことなんだろう。
「インフィリア以外でもそういうことをやってる村はあるが、インフィリアはかなり顕著だ。だから気を付ける必要がある。」
「うん、余計に気を引き締めるよ。」
「ま、俺についていてくれれば大丈夫さ。それに、万が一が起こってもインフィリアにいるまでの間ならいいんだ。」
「それって、どういうこと?」
「インフィリアで真名を無理やり引き出させる。そのあとパッスへの馬車ににもつに混ぜてのせ、さらにアリストクラットの貴族に秘密裏に渡される。そこで引き出されたマナを使われたら完全な奴隷に落ちる。そうなったらまず助からねぇ。」
かなり声を潜めた話に、思わず苦い顔になる。アリストクラットではギルドの目があるからそういう手を使ってるんだろうってのがひしひしと伝わるからだ。
「・・・パッスの村って、それをわかってるの?」
「そうだな、そういうことをしてると知ってるやつも少なくはないだろう。だがそれがなければパッスはアリストクラットから支援を受けづらくなる。インフィリアの大事な中継役なのさ。」
「なるほどね。」
だからインフィリアまでの直通の馬車がないんだ。ギルドが抑え込んでるのか、はたまたないことで増長してるのかはわからないけど。
かなりインフィリアに行くのが気が重くなってきた。周りにはとにかく注意して、ガロから離れない。これを徹底しないといけないな。
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