そこは獣人たちの世界

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第二章

テントで休憩

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林二日目の空が暮れてきたころ、あからさまに僕の歩く速度が落ちてきてる。狼の体になって1日通しで歩けるように放ったけど、さすがに2日目からは無理だったようだ。
昼過ぎくらいまではそこそこ軽快に歩けてたから明らかにニンゲンだった時よりも身体的には上だ。ガロとの打ち合いでの特訓でスタミナも上がったんだろう。

「さすがに休んだ方がいいな。」

「うん、ごめんね。でも手伝わなくていいの?」

「あぁ、慣れてるからな。」

ちょっとぼーっと立ってる間に慣れた手つきでささっと二人用テントを組み立てきってしまった。多分僕が手伝わなかったからこそこの速さだったんだろう。
テントの中に入り込んで座ると、どっと疲れがのしかかってくる。大きく深呼吸するけど、こりゃひと眠りしないとダメそうかも。でもご飯をまだ食べてない。こんな調子でインフィリアでは大丈夫なんだろうかと少し不安になる。

「もっと進めると思ったんだけどなぁ・・・」

「いや、予測できたことだ。今回の依頼はある程度急げばいい。村が襲われたというような本当に急ぎの依頼なわけではないからな。」

「結界棒あるのにそういうこともあるんだ。」

「まぁな。ほとんどの場合が襲われても結界が守ってくれるが、守られたとしても結界棒が大きく消耗する。何度も魔物が襲ってきたら崩壊しかねないからな。Sランクの冒険者が2名以上行き、取り換えるんだ。」

「なるほど、それで襲ってきた魔物も倒すと。」

「そういうことだな。」

一度や二度くらい街に入ろうとされても大丈夫なんだろうけど、何度もあると危ないってことだよね。まぁよほどの魔物でもない限りは入ろうともしないようだけど。

「でもそんな強い魔物がそもそもめったにいないんだよね?今回のホワイトグレータータイガーだって村は襲ってないんでしょ?」

「まぁヘビーボアを食い荒らしてはいるだろうが、人のいるところに結界があるのは魔物たちも気配で分かっているようだからな。そこにあえて突っ込んでくる魔物は魔素暴走がおきて異常化し、自信を制御できなくなった魔物か、何かあくどいことを考える魔族の差し金だろうな。」

「魔族の差し金、そんなこともあるんだね。魔素暴走ってのは一度本で見たあれだね?」

「あぁ、そうだな。」

どんな魔物の本にも最後に乗っているらしい魔物の魔素暴走。魔物が魔素の靄から現れる時は個体が制御できる魔素しか保有していないが、本来魔物が発生するために出た魔素の靄を発生済みの魔物が多く吸い込み起こる現象だそうだ。
自身の魔素保有量を超えた魔素を吸収してしまい、制御が効かなくなって暴走し、本来ある縄張りもなにもなくなるのだそうだ。そんな暴走したのが町や村にぶつかることがあるってことだろう。

「確かめったに起こることじゃないんだよね?」

「まぁな。まず、魔物でもかなり大きい体の魔物にしか発生しない。ある程度の体格がなければ魔素保有量以前に体が耐えられなくなり、魔素の靄に同化して消えるだろうな。」

ちょっと想像すると怖いけど、角兎とかどころか、暴れ牛なんかも発生しない部類に入るらしい。今回討伐するホワイトグレータータイガーは発生しうるくらいには大きいはずだけど。

「今回のが暴走個体じゃないってわかってるの?」

「あぁ、暴走しているなら一か所に留まったりはしない。本当に無差別なんだ。」

「なるほど。」

それはそれで探すのが大変そうだ。でも留まったりしないなら町や村としては何度も襲われる心配は少ないからいいんだろうか。

「もう一つの魔族のほうも、まぁまずありえない話だ。魔族にまで成長すると本来なら結界棒を素通りできるからな。町や村を混乱させたいなら魔物を使わず一人で入ってくるだろう。」

「えっ!?そうなの!?それって危険なことじゃないの?」

勝手に魔族が入ってきてるなんて初耳だ。それじゃあ防御として役に立っていないとも言えちゃうんじゃないか?

「魔族の奴で好戦的なのが町や村に入ってきたならな。そもそも奴らで結託しているようなやつらは自分たちで町や村とは違う集落を作っている。リザードビーストなんかはそういうのだな。」

「リザードビースト?聞いたことないけど。」

「魔物のなかでも魔族になりやすいやつらだ。魔物としてはリザードビーストだが、魔族になるとそれぞれ個々に種族名を付けたほうがいいんだろうな。リザードシャーマントカ、リザードウォリアーとか、そんなところか。人の蜥蜴種にも似たところがあるから町や村に紛れられたら見分けがつかないかもな。」

それってつまりリザードマンってことだよね?え?そんなのいたら蜥蜴種の人がほんとに人なのかって不安になってくるんだけど。

「ね、ねぇ、そんなに町とか村にいるものなの?」

「町にはあんまいないかもしれねぇな。だが村ならあり得る。俺たち冒険者だって何か起こらなければ村は放置さ。」

「町の場合は?」

「簡単な見分け方がある。舌だ。人はみんな舌が赤い。魔物や魔族は青、紫、緑で赤はいない。」

「おぉ、そんな見分け方があるんだね。そういわれると角兎の血も赤じゃなくって紫だったかも。」

じっと見るのが嫌で目をそらすこともあってはっきりとは覚えていないけど、真っ赤とか赤黒いとかそういう色じゃなかったような気がする。今ならもう少しは魔物相手なら血も見れると思うけど。

「まぁそういうことだ。ところで、夕飯はどうする?作るのもおっくうならまたサンドイッチかおにぎり済ませるんだが。」

「あー、せっかく持ち運び用の買ったし、スープくらいは作ってもいい?」

「もちろん。ならサンドじゃなく普通のパンがいいな。」

「ところで、料理しても魔物が寄ってきたりはしない?」

「テントに刺した杭に魔物除けの効果がある。それに俺が気配が寄ればわかる。問題は何もないさ。」

「そっか、じゃあ頼っちゃって作るね。」

ちょっと気合を入れて立ち上がる。体の疲労感はあるけど、あるからこそあったかいスープが飲みたかったので頑張るしかない。まぁ簡単なジャガイモのスープを作ればいいだろう。
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