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第二章
*黒い鼠
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ガロ達が出て言った後、しばらくして机をたたき悪態をつく緑の竜種の男がいた。太った彼がドカリと無造作に机の前に座ったが、その尻の下には扉を開けていた兎種の男が四つん這いになっていた。
「やはりまたガロが送られてきたか!ホワイトグレータータイガー3匹程度大したことはなかったという顔だったぞ!」
「まぁ、おおむね予想通りです。あれ以上のを呼び寄せるのは我らでは難しいですからね。それに疑われても問題ないぎりぎりのラインでもあります。」
「わかっておる!だからこそ腹立たしい。あれがインフィリアの遠征依頼を受けるようになる前まではいいものが仕入れられたのだぞ!」
どこからともなく部屋に表れたのは片耳の無い太めの黒い鼠種だ。太さは緑の竜種の半分ほどだが、身長が竜種の半分ほどしかなく、その身長にしては太いといえるだろう。毛色だけでなく着こなすものすべてが黒い彼は魔素感知にも引っかからずにずっと部屋にいたのだ。
「ですが今回収穫もありました。ガロのパートナーです。いい顔だったでしょう?」
「あぁ、あれはなかなか上物だな。売って良し、飼って良しというやつだ。だがあのガロがパートナーとは、相当の実力者なのだろ?顔は私は知らなかったが。」
「いえ、冒険者としてのランクはFです。HからFへの昇格はそこそこ早かったようですが、それなりのものなら普通といえるほどです。」
「ほぉ、Fランクをパートナーにしたのか?ガロらしくない行動だな。調べはついているのだろ?」
「いえ、Hのころから面倒を見ていたということはわかっているのですが、つながりは何もわかりませんでした。」
黒ずくめの鼠種は部下を使って王都からだけでなく、ギルドのある町すべてから情報を集める仕事人だ。だがその彼もキオがニンゲンであるとは調べはつかなかった。
「ぬ、何か隠し事があるというわけか。」
「それが何かはわかりませんでしたが。これは憶測になるのですが、彼が今回の戦闘の際に雷の魔法を使っているのを見ました。同じ雷の魔法を使うということで引かれたのかもしれません。」
「それはかなり憶測だな。雷属性など珍しいものでもないだろう。」
雷属性の加護を持っているだけならいくらでもいる。もちろんその中で魔法に昇華できるものも少なくはない。竜種が訝しげに顎を触りながら鼠種に目を向けると軽くうなづきつつ話を続けた。
「そうなのですが、おそらくサンダーショットでしたが一撃でホワイトグレータータイガーを仕留めていました。」
「なぬ!?Fランクレベルの実力ではないのか?」
「どうやらそのようですが、あれは確かにFランクといえるんでしょう。戦い慣れてはいない雰囲気でした。背後から襲われていましたからね。彼一人になれば、攫うのは造作もありません。」
「ほう・・・だがガロをどうさばくつもりだ?」
「自分を使いつぶす覚悟があれば、攫うまでは行けます。」
「なん、だと?」
あからさまに焦ったような表情をする竜種、それもそうだ。ずっと重用してきた黒い鼠種を使いつぶす気でさらわせるのは、いくら相手が顔がよくてももったいないと。
「それだけの価値がありませんか?ガロを奴隷にできるチャンスは。」
「何を言っている?さらうのは付き添いのパートナーだろ?」
「そうです。でも依存度は高いようです。攫い奪い、奴隷にまでできれば、そして条件を飲ませてうまく話を持ち込めば、ガロもついてくる可能性があるほどに。」
「ほぉ、依存度が高いか。ならば私も依存してしまうかもしれないな。そして攫ったお前も。」
「自分はそういうのはないです。主人は飽きっぽいですから、どうでしょうね。その兎ももう椅子のようですし。」
二人が話す間、完全に竜種に体重を乗せられて座られている彼も、元は冒険者だった。だからこそ重くてもぶれることなく、そして奴隷であるために、何も話さず椅子となり続けているのだ。
「だが、お前をつぶすというのはどういうことだ?うまくいかなければの話か?」
「相手はガロですからね。もし奴隷化が済む前につかまれば自分はそこで死ぬでしょう。殺されるか、つかまって何かを吐かされる前に自害するか。」
「リスクは高いな。お前を失えば私とてこの地位を維持できるか。」
「ネズミはたくさんいますよ。自分なんかよりももっと器用に動けるのもたくさんね。」
「お前はいつもそれだな。ならばやるとしても最もお前の後釜にふさわしいというネズミを連れて来い。お前がそれだけ目を付けたということは手に付けたい仕事なんだろ?」
「恐れ入ります。では王都に潜り込ませていたネズミを紹介しますよ。」
「すでに後釜も用意済みか。だがしくじるなよ?」
「できうる限りは。」
まだ日も出ているのに部屋の陰にと黒い鼠は消えていく。もう彼の気配は部屋の中になく、にやにやと皮算用する緑の竜種だけか残る。しくじるなよと言いつつ、鼠がしくじるとは露程にも思っていないのだ。竜種のコンプレックスである卓球ラケットほどの大きさしかない翼がピコピコゆれて赤いローブを揺らした。
「やはりまたガロが送られてきたか!ホワイトグレータータイガー3匹程度大したことはなかったという顔だったぞ!」
「まぁ、おおむね予想通りです。あれ以上のを呼び寄せるのは我らでは難しいですからね。それに疑われても問題ないぎりぎりのラインでもあります。」
「わかっておる!だからこそ腹立たしい。あれがインフィリアの遠征依頼を受けるようになる前まではいいものが仕入れられたのだぞ!」
どこからともなく部屋に表れたのは片耳の無い太めの黒い鼠種だ。太さは緑の竜種の半分ほどだが、身長が竜種の半分ほどしかなく、その身長にしては太いといえるだろう。毛色だけでなく着こなすものすべてが黒い彼は魔素感知にも引っかからずにずっと部屋にいたのだ。
「ですが今回収穫もありました。ガロのパートナーです。いい顔だったでしょう?」
「あぁ、あれはなかなか上物だな。売って良し、飼って良しというやつだ。だがあのガロがパートナーとは、相当の実力者なのだろ?顔は私は知らなかったが。」
「いえ、冒険者としてのランクはFです。HからFへの昇格はそこそこ早かったようですが、それなりのものなら普通といえるほどです。」
「ほぉ、Fランクをパートナーにしたのか?ガロらしくない行動だな。調べはついているのだろ?」
「いえ、Hのころから面倒を見ていたということはわかっているのですが、つながりは何もわかりませんでした。」
黒ずくめの鼠種は部下を使って王都からだけでなく、ギルドのある町すべてから情報を集める仕事人だ。だがその彼もキオがニンゲンであるとは調べはつかなかった。
「ぬ、何か隠し事があるというわけか。」
「それが何かはわかりませんでしたが。これは憶測になるのですが、彼が今回の戦闘の際に雷の魔法を使っているのを見ました。同じ雷の魔法を使うということで引かれたのかもしれません。」
「それはかなり憶測だな。雷属性など珍しいものでもないだろう。」
雷属性の加護を持っているだけならいくらでもいる。もちろんその中で魔法に昇華できるものも少なくはない。竜種が訝しげに顎を触りながら鼠種に目を向けると軽くうなづきつつ話を続けた。
「そうなのですが、おそらくサンダーショットでしたが一撃でホワイトグレータータイガーを仕留めていました。」
「なぬ!?Fランクレベルの実力ではないのか?」
「どうやらそのようですが、あれは確かにFランクといえるんでしょう。戦い慣れてはいない雰囲気でした。背後から襲われていましたからね。彼一人になれば、攫うのは造作もありません。」
「ほう・・・だがガロをどうさばくつもりだ?」
「自分を使いつぶす覚悟があれば、攫うまでは行けます。」
「なん、だと?」
あからさまに焦ったような表情をする竜種、それもそうだ。ずっと重用してきた黒い鼠種を使いつぶす気でさらわせるのは、いくら相手が顔がよくてももったいないと。
「それだけの価値がありませんか?ガロを奴隷にできるチャンスは。」
「何を言っている?さらうのは付き添いのパートナーだろ?」
「そうです。でも依存度は高いようです。攫い奪い、奴隷にまでできれば、そして条件を飲ませてうまく話を持ち込めば、ガロもついてくる可能性があるほどに。」
「ほぉ、依存度が高いか。ならば私も依存してしまうかもしれないな。そして攫ったお前も。」
「自分はそういうのはないです。主人は飽きっぽいですから、どうでしょうね。その兎ももう椅子のようですし。」
二人が話す間、完全に竜種に体重を乗せられて座られている彼も、元は冒険者だった。だからこそ重くてもぶれることなく、そして奴隷であるために、何も話さず椅子となり続けているのだ。
「だが、お前をつぶすというのはどういうことだ?うまくいかなければの話か?」
「相手はガロですからね。もし奴隷化が済む前につかまれば自分はそこで死ぬでしょう。殺されるか、つかまって何かを吐かされる前に自害するか。」
「リスクは高いな。お前を失えば私とてこの地位を維持できるか。」
「ネズミはたくさんいますよ。自分なんかよりももっと器用に動けるのもたくさんね。」
「お前はいつもそれだな。ならばやるとしても最もお前の後釜にふさわしいというネズミを連れて来い。お前がそれだけ目を付けたということは手に付けたい仕事なんだろ?」
「恐れ入ります。では王都に潜り込ませていたネズミを紹介しますよ。」
「すでに後釜も用意済みか。だがしくじるなよ?」
「できうる限りは。」
まだ日も出ているのに部屋の陰にと黒い鼠は消えていく。もう彼の気配は部屋の中になく、にやにやと皮算用する緑の竜種だけか残る。しくじるなよと言いつつ、鼠がしくじるとは露程にも思っていないのだ。竜種のコンプレックスである卓球ラケットほどの大きさしかない翼がピコピコゆれて赤いローブを揺らした。
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