そこは獣人たちの世界

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第二章

*取り返したもの

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俺の行動はほとんど条件反射だった。キオを狙った雇い主だとか、まぁ聞いたところではかないだろうが、捕縛しようとするべきだった。何もなく、殺すべきではなかったはずだ。

「あ、あぁ、が、ガロ・・・ごめん・・・」

「・・・何を、謝ってる?キオは悪いことなどしていない。」

か細く力なくも意識があるようだ。キオのいきり立つものに、すでに俺が殺したやつの尾が刺さりっぱなしで、痛々しく立ち上がり続けている。普通の感情ならキオのを見て興奮していたのかもしれないが、今は怒りのみで興奮している。
早く抜いてやって楽にしてやりたいが、無理に引き抜くのも危険そうだ。かなり深くはいってる、半分よりもさらに入ってるから、おそらくキオの根元あたりまで侵食しているだろう。俺が触れることもできないような場所を犯しやがって。
それにしても、俺が首を飛ばした場面は見ていたはずだ。一瞬目を見開いていた。すぐに閉じて、今もつぶったまま。おそらく、かなり衝撃的な光景だったんだろう。そこも含めて、こうするべきではなかった。あと後に残らなければいいんだが。

「でも、ガロに人殺し、させちゃった。僕がもっと、注意していれば・・・」

「それは俺もだ。いや、むしろこんなことになって、謝るべきは俺なんだ。悪かった。すぐに引き抜く。痛いかもしれないが、我慢できるか?」

「うっ、できる限り、がんばる。」

冷たい壁に枷で貼り付けられつつも、その壁にできうる限り腰を引いていたキオが、そっとこちらに腰を差し出してくる。立ち上がったキオのにそっと触れるとびくりと軽く動くが、突き刺さる尾があるからか、状況が状況だからかいつもよりは小さめだった。
だが感触で、くそネズミの尾が中を通てるのがわかっちまって、余計にイラついてくる。といっても一気に引き抜いたりはしない。キオのを動かないようにしっかりと握り、尾をまっすぐにさせてそっと引き抜いていく。

「んん、んっ!」

「きついか、我慢しろ。」

あぁ、こんな声を聴いても性的には高ぶりきらない。この忌々しい尾によって快楽を感じてしまっていると思うとむしろイラついてくる。それでも自分を抑えて、ゆっくりゆっくり引き抜いていく。

「んぁ!・・・ご、ごめん。」

「気にするな。」

何とか抜ききったが、その瞬間にキオのが白濁液を吐き出して、よせて高尾にぶっかけられちまったが、口元のを軽く舐めとる。味は変わりなく、どことなく甘い。
それにしてもほんとに長い尾だった。こりゃ完全にキオの根元部分まで入り込んでたな。だがこれでも4分の3ほど、残りまで入り込もうとしていたっぽいんだよな。もしそうなってたら、どうなってたのか・・・

「よ、よかった。全部入れられる前で・・・」

「ん?どういうことだ?」

「そいつが言ってたの。尻尾を全部入れきった時、僕は落ちているって。」

「っ!くそネズミが、残りの体もバラバラにしてやりたいくらいだ。」

まだキオが目を閉じているのを確認したうえで、引き抜いた尻尾を切り捨てた。せめてもの報復だ。あぁ、こんなことをしたのはいつぶりだろうか。またこんな感情になるとはキオと会う前は思わなかったな。
首も尻尾も切り落としたが、キオ自身は血では汚していない。そんなへまはさすがにしない。殴られた跡も鞭打されたも跡もない。外部には何も残らないか。それがせめてもの救いだ。ただ、首落としを見せちまったことで、俺に対して恐怖を抱くかもな。

「え、えっと、その、ガロ、僕の服とか、部屋の外にあった?」

「いや、見る暇もなく突入したな。キオ自体は、それほど汚れてはいない。服さえあれば外を歩いても平気そうだな。」

「うん、で、今見てないけど、死体残ってるんでしょ?どうするの?」

あぁ、まぁ気にするところだよな。もう一度は見たくないだろうし、どうしたものか。一番いいのは放置だが、それを説明するしかないな。

「放置だな。ポーチに入れられなくもないが、人の死体を入れると後でギルドで問題になる可能性がある。それにそもそも入れたくはない。」

「それもそうだよね。じゃあとりあえず、降ろしてくれる?このまま目をつぶって部屋から出ちゃうよ。」

「おっと、確かに降ろさないとだったな。」

とりあえず枷を調べると、魔力干渉が極端にできなくなる魔方陣が書かれている。ここまでやるのか。この部屋自体だって魔素纏いがやっとだ。まぁ魔法さえ封じればどうにかなる相手は確かに多いんだろうが。
このくらいの枷ならば普通に腕力だけで壊せる。思い切り力を入れればガキンとはずれてくれた。もう少し頑丈なつくりかと思ったんだがな。

「うっ、すごいねガロ。」

「そうか?」

「僕はびくともしなかったよ。」

「確かにキオだと魔素纏いの身体強化をしていなければ難しいかもな。魔素纏いもできない状態だったろ?仕方ない。」

「まぁそうかもだけど、自分自身の筋力も鍛えなきゃ、ってちょっと思ったよ。」

キオは解放されてもやはり目をつぶったままだが軽く腕と足を振ってならす。魔素纏いだけに頼らない肉体強化は確かに必要だったかもしれないが、いかんせん時間がなかった。というよりも、最低限を教えておけば時間を稼げるし、何より俺が守れると思いあがっていた。

「そうか、なら王都に帰ったら改めて特訓だな。」

「うっ、思わなきゃよかったよ。」

「はっ、気持ちが揺れすぎだな。」

「はぁ、でも鍛えてればこんなことにはならなかったもんね。」

話ながらもさっさとネズミの死骸は置いたまま部屋を出る。鉄扉を閉めた音で、ようやくキオも目を開けてこちらを困った顔で見る。多分だが、かなり真剣な顔に見えるだろうな。おもむろにぎゅっと抱きしめる。

「キオ、いいか。今回は俺のミスだ。宿でなく外にしていても襲撃はあったかもしれないが、こんなあっさり攫われることはなかったはずだ。宿もそうだ。無理やり同じ部屋で寝てもよかった。とにかく、無事でよかった。」

「・・・うん、すぐに助けに来てくれて、ありがとう。でも、ガロのミスだけってわけじゃないでしょ?僕たち、パートナーなんだから。」

そういって抱き着き返してきてくれた。服越しにも、温かいキオの感触が伝わってくる。何より、奴隷化もさせられず、本当にある程度無事に間に合って取り返せてよかった。それだけはいえる。
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