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第三章
手下役教官
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さて、近寄るのはいいけど、この場合初めから教官として相手すればいいのか。それとも窃盗犯関連として対応すればいいのか。そう思ってたらとりあえず教官がフードをかぶりなおして、わざと僕と逆側を向いた。じゃあ後者だな。
「すいませんそこの人、この森は魔物もいて危ないですが、そんなフードをかぶりどこに行くのですか?」
「んっ!あ、あぁ、いや、なんでもないんだ。なんでもな。」
「そうなのですか?ではお手数ですが、顔を見せていただいても?」
「ちっ!冒険者風情が!もう面まで割れてるってか!?」
さっきかぶりなおしたはずのフードを脱ぎ捨てる両手に片刃のダガーを構えてきた。顔を出してくれたからさっきの距離ではわからなかったけど虎種の人だとわかる。声色からも雄だろう。まぁこっちは種族も性別も知らなかったけれど。
「おちついてください。争う気はないです。ここで冒険者の殺害まで行ったりしたら罪が重くなります。見たところ、盗難品もお持ちではないようですし。」
露出させてくれた腕を見ればわかる。腕輪どころか何もしていない。情報では窃盗した金の腕輪をはめているらしいから窃盗犯関連の手下ではあるんだろうけど、報酬をもらったりはしたんだろうか?
「そうはいかねぇぞ!ここさえ、ここさえ逃げ切ればいいとボスはいったんだ。」
「なるほど、ですが争う気ならばすでに剣を抜いています。そちらは剣を抜いておどしているので。腰の剣を抜かないのは、できれば投降していただきたいからです。まず話し合いをしましょう。」
「た、たしかに、争う気がないってのはわかった。だが話すことなんかないぞ。」
二本のダガーを腰にと戻してくれた。ここからは口勝負だ。実際の窃盗チームではよくある例をだして説得、できれば投降したいと思わせるしかない。まぁ相手は教官だけれど。
「いえ、あなたはボスといいましたが、そのボスへの信用度はあるのですか?」
「なんだと?確かにボスとはまだ3度目の仕事だが、2度ともしっかり報酬はもらえている。」
「その報酬も冒険者の報酬と比べて正しい報酬なのでしょうか?どれだけそのボスが独り占めしているのか・・・」
まず疑心感をあおるところから始める。3度ということは2度だけいい思いをさせて切り捨てる予定なのかもしれない。そもそも犯罪を犯すようなのは町出身ではなくほとんどが村人の貧困層で、知識不足な場合があるからだ。
「グっ、それは、確かに俺達は金勘定ができない。だから直に食料を貰っていたんだが。」
「それは危険ですね、かなり絞られている可能性があります。今回盗難したのは金の腕輪でしたね?」
「あ?あぁ、それがどうかしたのか?」
「その報酬としてどのくらいの食料がもらえることに?どんな腕輪が盗まれたのかを知っているので相場を計算しましょう。」
こういう手下なら疑いながらも言葉を聞く傾向にある。用は知識が薄いので聞いたことを受け入れやすいということだ。
「2日分だ。4人で山分けだな。その二日分を1週間、何とか食つなぐんだ。」
「あぁ、それは、少なすぎですね。」
「なんだと!?」
実際、あれだけのサファイアが付いた金の腕輪なら売れば4人だとしてもそれぞれ1週間は食べていけるだろう。相手は教官だから肉付きもいいけど、実際のこういう人はかなりやせ細ってるんだろうな。
「今までもそうだったのかはわかりませんが、今回の提案はかなり少ないですね。もう一つ懸念点があります。そのボスと別行動をとるのは、今回が初めてでは?」
「あぁ、確かに今までの2回は一緒だったけど、それがなんだ?」
「それはつまり、あなたたちをおとりに逃げ切り、今回の報酬を独り占めする算段ということですよ。」
「そんな、まさか・・・」
「もちろん完全に見捨てるというわけではなく、もしもその集合地点まで来たら回収するつもりだったのかもしれませんが、冒険者とのいざこざを起こした時点で高確率で捕まります。あなたがどれほどの戦闘力を持っているのかは知りませんが・・・」
「う、うぅ、たしかに、短剣は扱えるが、ただウサギをずたずたにするのがやっと位だからな。」
いや、さっきの構えは本気の構えだった。教官としての構えで兎を狩れる程度なんかじゃない構えだった。僕が攻撃した場合に備えてだったのかな?
「そうですか、ではここで投降してください。僕ができうる限りを持ってギルドに話しましょう。もちろん罪の償いは必要ですが、町に出れば、あなたの世界は広がります。それに、ギルドにいる間は食事も出ますからね。」
「飯が出るのか!?捕まってても!?」
「あまりにひどい犯罪や、何度も犯罪を越しているような人でなければ、ですけれどね。」
「そ、そうなのか。わかった、投降しよう。・・・というところまでがながれだ。まぁまぁだったな。」
「はい、ありがとうございます。」
がくりと肩を落とした姿から一点。すぐにぴしっとした対応をしてくれる。とりあえず合格点はもらえたようだ。まだ本番ではないから気を抜いてちゃいけないけど。
「それにしても申し訳ない。他の受験者が終わってすぐの対応になってしまって。」
「いえ、その、僕の前の受験者は不合格だったのですか?」
「あぁ、そうだ。王都に返還だ。残念だが実際の窃盗犯にあんな風に急に襲い掛かるようならば今まで通りDランクで魔物狩りにいそしんでもらう方がいい。」
「そ、そうですか。なるほど。ありがとうございました。引き続き主犯の探索に戻ります。」
「あぁ、励めよ。」
再びフードをかぶり顔を隠して森にと飛んで行った。もう気配を追えなくなってる。しばらくしたら僕たちくらいにも気配がわかるようにするんだろう。それにしてもバッサリいう人だったな。まぁ今回の試験で一番に見るところなんだ居るから、しょうがないか。さて、主犯を探すといったけどいないのは知っている。他の手下役を探してみるか。
「すいませんそこの人、この森は魔物もいて危ないですが、そんなフードをかぶりどこに行くのですか?」
「んっ!あ、あぁ、いや、なんでもないんだ。なんでもな。」
「そうなのですか?ではお手数ですが、顔を見せていただいても?」
「ちっ!冒険者風情が!もう面まで割れてるってか!?」
さっきかぶりなおしたはずのフードを脱ぎ捨てる両手に片刃のダガーを構えてきた。顔を出してくれたからさっきの距離ではわからなかったけど虎種の人だとわかる。声色からも雄だろう。まぁこっちは種族も性別も知らなかったけれど。
「おちついてください。争う気はないです。ここで冒険者の殺害まで行ったりしたら罪が重くなります。見たところ、盗難品もお持ちではないようですし。」
露出させてくれた腕を見ればわかる。腕輪どころか何もしていない。情報では窃盗した金の腕輪をはめているらしいから窃盗犯関連の手下ではあるんだろうけど、報酬をもらったりはしたんだろうか?
「そうはいかねぇぞ!ここさえ、ここさえ逃げ切ればいいとボスはいったんだ。」
「なるほど、ですが争う気ならばすでに剣を抜いています。そちらは剣を抜いておどしているので。腰の剣を抜かないのは、できれば投降していただきたいからです。まず話し合いをしましょう。」
「た、たしかに、争う気がないってのはわかった。だが話すことなんかないぞ。」
二本のダガーを腰にと戻してくれた。ここからは口勝負だ。実際の窃盗チームではよくある例をだして説得、できれば投降したいと思わせるしかない。まぁ相手は教官だけれど。
「いえ、あなたはボスといいましたが、そのボスへの信用度はあるのですか?」
「なんだと?確かにボスとはまだ3度目の仕事だが、2度ともしっかり報酬はもらえている。」
「その報酬も冒険者の報酬と比べて正しい報酬なのでしょうか?どれだけそのボスが独り占めしているのか・・・」
まず疑心感をあおるところから始める。3度ということは2度だけいい思いをさせて切り捨てる予定なのかもしれない。そもそも犯罪を犯すようなのは町出身ではなくほとんどが村人の貧困層で、知識不足な場合があるからだ。
「グっ、それは、確かに俺達は金勘定ができない。だから直に食料を貰っていたんだが。」
「それは危険ですね、かなり絞られている可能性があります。今回盗難したのは金の腕輪でしたね?」
「あ?あぁ、それがどうかしたのか?」
「その報酬としてどのくらいの食料がもらえることに?どんな腕輪が盗まれたのかを知っているので相場を計算しましょう。」
こういう手下なら疑いながらも言葉を聞く傾向にある。用は知識が薄いので聞いたことを受け入れやすいということだ。
「2日分だ。4人で山分けだな。その二日分を1週間、何とか食つなぐんだ。」
「あぁ、それは、少なすぎですね。」
「なんだと!?」
実際、あれだけのサファイアが付いた金の腕輪なら売れば4人だとしてもそれぞれ1週間は食べていけるだろう。相手は教官だから肉付きもいいけど、実際のこういう人はかなりやせ細ってるんだろうな。
「今までもそうだったのかはわかりませんが、今回の提案はかなり少ないですね。もう一つ懸念点があります。そのボスと別行動をとるのは、今回が初めてでは?」
「あぁ、確かに今までの2回は一緒だったけど、それがなんだ?」
「それはつまり、あなたたちをおとりに逃げ切り、今回の報酬を独り占めする算段ということですよ。」
「そんな、まさか・・・」
「もちろん完全に見捨てるというわけではなく、もしもその集合地点まで来たら回収するつもりだったのかもしれませんが、冒険者とのいざこざを起こした時点で高確率で捕まります。あなたがどれほどの戦闘力を持っているのかは知りませんが・・・」
「う、うぅ、たしかに、短剣は扱えるが、ただウサギをずたずたにするのがやっと位だからな。」
いや、さっきの構えは本気の構えだった。教官としての構えで兎を狩れる程度なんかじゃない構えだった。僕が攻撃した場合に備えてだったのかな?
「そうですか、ではここで投降してください。僕ができうる限りを持ってギルドに話しましょう。もちろん罪の償いは必要ですが、町に出れば、あなたの世界は広がります。それに、ギルドにいる間は食事も出ますからね。」
「飯が出るのか!?捕まってても!?」
「あまりにひどい犯罪や、何度も犯罪を越しているような人でなければ、ですけれどね。」
「そ、そうなのか。わかった、投降しよう。・・・というところまでがながれだ。まぁまぁだったな。」
「はい、ありがとうございます。」
がくりと肩を落とした姿から一点。すぐにぴしっとした対応をしてくれる。とりあえず合格点はもらえたようだ。まだ本番ではないから気を抜いてちゃいけないけど。
「それにしても申し訳ない。他の受験者が終わってすぐの対応になってしまって。」
「いえ、その、僕の前の受験者は不合格だったのですか?」
「あぁ、そうだ。王都に返還だ。残念だが実際の窃盗犯にあんな風に急に襲い掛かるようならば今まで通りDランクで魔物狩りにいそしんでもらう方がいい。」
「そ、そうですか。なるほど。ありがとうございました。引き続き主犯の探索に戻ります。」
「あぁ、励めよ。」
再びフードをかぶり顔を隠して森にと飛んで行った。もう気配を追えなくなってる。しばらくしたら僕たちくらいにも気配がわかるようにするんだろう。それにしてもバッサリいう人だったな。まぁ今回の試験で一番に見るところなんだ居るから、しょうがないか。さて、主犯を探すといったけどいないのは知っている。他の手下役を探してみるか。
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