そこは獣人たちの世界

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第三章

試験戦闘

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再びハンマーが僕にと振りかざされるけど、さっきよりも明確に早い!それでも、ガロが特訓に振りかざしてたハンマーよりは遅い。大きさはマーシャルさんのほうが大きい気もするけど、大きさは関係ない受け流しに必要なのは速さと技術だ。
ハンマーの横面に剣の刃ではなく面を合わせる。魔素纏いで剣まで強化し魔力の流れに任せて、自分の体も動かしそらす。さっきと違って結構集中力は必要だったけど、特訓したかいあって受け流せるもんだ。本来ならこのまま打ち込んだりもできるけど、今はここで止めると、教官のほうが一度距離をとる。

「ほぉ、さすがは雷剣に鍛えられただけある!だがなぜ打ち込まなかった?今の流れなら来るはずだと防御したんだが。」

「あ、いえ、防げないとは思っていないのですが、殺し合いというわけでもないと思ったのでつい。」

「なるほどな、だが殺す気くらいで来い!ってそうか、説明忘れてたな。この腕輪は魔道具でもある。本当に致命傷を受けても腕輪が壊れて終わるだけだ。今まで試験で受かったやつでも壊したやつは少ないけどな。」

少ないってことは教官の防御用の魔素纏いよりもすごい攻撃した人がいるんだろうな。もしかしてガロもその一人だったりして?それならば、ガロに追いつくためにも、壊してやるくらいの気概で行くしかない。

「なら遠慮なくいきます!」

「こっちももう少しがっつり行くぞ!」

今度は踏み込んできてハンマーが横なぎに襲い掛かってくる。同じように流れるようにハンマーを下にとそらす。振り下ろしならただそらしても舌にといって隙ができるが、横なぎの場合は僕が下にそらさなければ相手に隙は生まれにくいとガロに教え込まれたからだ。
ただし、下にそらしてもすぐに隙ができるというわけじゃない。ガロとの特訓と同じように下にそらしたハンマーを無理くり振り上げてきた。でもこれを待っていた。再びハンマーの横面に剣の面に合わせて大きくかちあげさせる。両手で振り上げたために結構な隙がマーシャルさんにできる。少し僕も剣を振り上げていたために、剣を流れるように斜めに一閃した。

「ぐっ!」

まさすが教官というだけある。マーシャルさんは大きく後ろに飛びのいた。それでも剣先がローブくらいには当たったはずなんだけど、ただの布のような緑のローブが切れてすらいない。魔素纏いで防いだんだろう。ガロも僕の剣素手で受け止めてたし。
当然ながらサファイアのついた金の腕輪も壊れていない。

「やるじゃないか。正直に言おう。これだけでもう君は合格ラインだ。このまま合格通知だけあげて王都に返すのが普通の流れだ。」

「そう、なんですか。」

とてもそうとは言えない。表情を隠せと言われていたこの試験で、さっきまで教官らしい普通の目をしていたのに、ちょっと獲物を見るような眼になってる。剣を持つ手を緩めちゃいけないと物語ってる。

「だけどだ、キオ君だったっけ。君ともっと本気で戦いたくなった。それに、たしか君は魔法も使えたはずだろう?それすら使わせてないで終われない。」

「別に魔法を使っていないのま魔素纏いに集中するためで、決して手を抜いているわけではないんですが。」

「半分は事実だろうが、半分は嘘だな。もっと実戦的ならば魔法を使い遠距離で牽制、近接戦時には使わないだけでいい。」

まぁ確かにこれが本当に僕を殺そうとする相手ならハンマーしか使えないなら、わざわざ攻撃を受け流したりなどせず魔法で攻めていたかもしれない。僕はどこかでこれが試験だからと思っていたのはぬぐえない。

「では、ここからは魔法も使わせてもらいます。」

「こちらも魔法を使うからな。そうした方がいいだろう。雷剣ほどではないが見せてやろう。武器強化、闇纏い。」

マーシャルさんの持つハンマーに黒というか紫というか、何とも言えない不安感のある色のもやもやがまとわりつく。ガロの雷装とは全然違うように見えるけど、魔法による武器強化という意味では似たような感じなんだろう。
ぼーっと見ている場合じゃない。少しは妨害した方がいい。一瞬で打ち出す機構を魔素で作り上げて撃鉄に爆魔法を使った強化されたサンダーガンを打ち出す。

「サンダーガン!」

「うぉっと!?すごい速さだな。」

「サンダーガン。」

「連発!?」

一発目がちょっと体をそらされてあっけなくよけられるのは想定内。すかさず二発目、そして三発目と連発する。一発ずつしか発射はできないけれど、前に比べれば連発といえるくらいには間を置かずに発射できるようになった。
しかし少しは驚かせれたようだけどよけられ続ける。むしろよけながらこっちに近づいて来てすらいる。ガロのガトリングかってくらいの連射ならもっと好きはないんだろうけど、今の僕にはこれで精いっぱいか。もう向こうのハンマーの射程範囲、魔素纏いに集中するために一度ガンは中断して防ぐ体勢をとる。

「防ごうとするのは、少し悪手かもしれないぞ!」

「えっ!?うぐっ!?」

振りかぶってたたきつけてきたので、さっきと同じように剣の面で受けようとしたら、そこに合わせてむしろハンマーの面を合わせてきた。さっき間瀬は側面を流していただけだ。しかも闇纏いって魔法で強化されてか、さっきよりも確実に重い。魔素纏いで強化した腕が悲鳴を上げる。半ば吹っ飛ばされるように後ろに飛びのいた。
剣にひびが入ってる、あれ以上毛てたらやばかった、腕もまだ軽く痙攣してる。あんな無理やりにハンマーを動かしたってのにすごい威力だ。これは、もう一度は絶対受けれない。

「ファイアバレット!」

せっかく距離ができたんだ。この距離をできれば保ちたい。できうる限り大量のファイアバレットを展開してばらまく。だが不敵に笑うと、少し体を動かしただけですべてよけられてしまった。こっちも下がるけど少し距離を詰められる。
やっぱりだめか、よけられたファイアバレットは木々や草花を燃やす前に消えていったけど、森を燃やしちゃうくらいの気持ちでうったんだけどな。しょうがない、バレットの数と威力が落ちるけど、命中重視で少しでも気をそらさせる!

「サンダーホーネットバレット!」

「追尾弾か!だけど素直すぎる!」

まっすぐマーシャルさんの腹部目掛けて飛ばしたのが悪かったのか、全部ハンマーで振り払われてしまった。でもハンマーを使わせて動きは少し止めた。さらに威力は下がるけど拡散させてもっと動きを止める!

「サンダーホーネットバレット!」

「各散弾!バレットの使い方が豊富だな!だが威力が低すぎる!」

「えぇ!?」

各散弾がいろんな角度からせめて、それを受けるのに必死になってるはずだったのに、まさかのよけようともハンマーで振り払おうともせずに、全部を受けながら向かってきた!ちょっとはダメージはいってるんだろうけど、無茶苦茶すぎる!
バレットを打ちだすために下がる少し反応が遅れた。ダメだ、距離を詰められてハンマーが来る!ガロには怒られたけど今剣だけで受けるのは絶対だめだ。やるしかない。横なぎに振りかぶってきたハンマーに対してむしろ向かっていく。

「入ってきたらこっちのものだぞ!」

「それは、どうかな!ストーンバレットシールド!」

ぶつかった瞬間、向かうエネルギーの魔素纏いを消して腕と剣だけに集中する。剣の面をハンマーの面に合わせるようにしつつ魔素強化、さらに少し浮いた魔素で受ける面にストーンバレットを盾にするように無数に展開する。ガガッといびつな音を立てたけど、何とか防ぎ切った。

「なっ!?土魔法!?3属性でもすごいことなのに4属性!?ぐっ!?」

僕が土魔法を使ったことに驚いたおかげもあったのか、防ぎに使っていた剣をそのまま向かう勢いにのせてマーシャルさんにと切り付けられた。だが向こうもしっかりと反応していて腕で、しかもきちんと腕輪のついた部分で防いでいた。
それがいけなかったんだろう。さっきの受け止めたダメージ、今ストーンバレット越しとはいえ受けたダメージ、そして腕輪がバリンと壊れるとともに、僕の愛用していたハンガーもバキンと壊れてしまった。
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