そこは獣人たちの世界

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第三章

塔49階の戦い

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魔素補給のための休憩に結構使ってもう残り3時間。人間のままだったら、そしてガロに鍛えられてなければとっくに眠くなってるはずの時間だ。もちろん寝たほうが調子は断然よくなるけどまだいけるはずだ。
頂上にいるはずの貴族に一泡吹かせるためにも、そしてガロにできるだけ早く会うためにも。意気込んで49階への階段を上がる。氷、炎と来て何が来るかと気構えたけど、部屋には何もいないし魔物どころか何もいない。

「まさか隠れてる感じ?」

魔素感知を広げるけど特に反応らしき反応はない。隠れられるような場所はないけど、透明な敵とかそういうたぐいだろうか?少し入るのをためらって魔素感知を強めたら、まさかの背後に気配があって思わず振り向くと案内人をしたあのリス種の人が立っていた。

「おっと、気づかれるとはね。それよりも入らないのかい?」

「え、えっと、入ります。」

「そうか。ならば相手してあげよう。あぁそれと、これを。」

そう言って投げ渡された金色のリングをとる。改めてみると青いサファイアが3つついている腕輪のようだ。これ、昇格試験の時の腕輪か。ってそうじゃない!

「あの、相手をするって?」

「ん?まだそこにいたのかい?言った通りさ。49階の相手はこのガディアが相手するってことだ。もしリングが壊れたら、悪いけど強制的に一階まで降りてもらうよ。」

そう言って手招きする彼の腕にはすでに僕のと同じ金のリングがはめてあった。つまり、どちらかのリングが壊れるまでってことか。ちょっとこのリングにはいい思いはしないけど、はめないのは危なそうだからはめてから中にと入る。
いつでも攻撃されていいようにと構えていたけど、特に奇襲をかけてきたりはしてこなかった。ただ腰につけたポーチからリス種の身長より長い槍を取り出す。そして軽々と片手で構えながらこちらを改めて手招きしてる。

「まさか君ここまで無傷で、しかも一日たたずに登ってくるとはさすがに思ってなかったよ。しかしこの先は主の住む階層だ。従者として無断に通すわけにはいかないというところなんだよ、キオ君。」

「ど、どうして僕の名前を?」

「訪問者の名前くらいは調べるさ。それよりもいいのかい?上で君の大切なガロが我が主に何をされてるかもわからないってのに、そうやって立ちすくんでいてさ。」

「っ!」

思わず踏み込みそうになったけど何とか止まれた。今のは完全な挑発だもんね。なんでか知らないけど僕から攻めさせたいようだ。でも僕はガロに教わっている。相手の実力がわからないときこそ相手からの攻撃を待ち、受け流して反撃の機会をうかがえと。

「おっと、乗らないのか。しょうがない。本当は受けきって見せて実力差を知ってもらおうと思ったんだけれど、こちらから攻めるか。」

言葉通り一気に詰め寄られて槍が突き刺してくる。とんでもない速さでさっきのキマイラよりも早かったけれど、来るというのがわかっていたのもあって何とか反応できて剣で受けることはできた。
だけれどそこから受け流せない。受け方が悪かったからじゃない。僕が力を流そうとする方向に合わせて力をかけてくる。それどころか剣で受けたはずなのに、それに沿らせてさらに僕のほうに突き進んで来ようとしてきた!
こいつ、相当対人慣れしてる!かなり無理やりはじいて距離をとる。いや多分これ距離をとらせてくれたって感じかも。そもそもで剣と槍だとリーチで槍が有利だけど、それ以前に近接戦の腕は確実に負けてるんだろう。

「なるほど、ここまで来ただけあってそれなりには鍛えられているね。本当にガロさんからいろいろ教わっているのか。だけど残念。我が主のほうがガロさんよりも実力は上なのだよ。」

「なにをいって・・・」

「そうでなければ捕らえられるはずがないだろう?」

あんまり考えたくはなかったけど、確かにガロほどの実力があってSランクならいくら相手が貴族とはいえ何かしらできるはずだ。というか普通の貴族相手なら王都に戻ってきていたと思う。つまり相手がガロより実力が上、もしくは同等レベルかもってことにつながる。
おそらくそういうところがセリスさんが僕にここに来るように言った理由なんだろう。僕ではその貴族にはかなわないだろうけど、こういう塔を用意してるってことは登りきれば何かしらの褒美をよこすような貴族なんだと思う。その条件にうまくガロを返すのを組み込んでくるように、みたいなかんじだろう。

「・・・今度はこちらから、ファイアガン!」

「ほぉ!かなりの弾速!ガンとは思えないほどの威力!なるほど!だけど残念、水の盾!」

僕のファイアガンをあっさりと水の小さい盾を出して防いでしまった。バックラーくらいの盾でも僕の弾が小さいから簡単に防がれてしまう。でも相手が水を使うというなら雷を打ち込むだけだ。

「まだまだ、サンダーガン!」

「二属性か!でも残念、土の盾!」

今度は土属性で防がれた。まさかこいつも二属性もちとは。しかも水と土って結構厄介かも。それでも特訓してできたボムガンならば威力もあるし突き抜けなくても爆風でダメージが期待できるかも。

「ボムガン!」

「おっと、爆まで使えるのかい?風の盾!」

「えっ!?3属性!?」

「君だって3属性だろ?」

ボクガンの爆風ごと風の盾で防いでくるとはね。そして挑発するようにまた手招きしてくる。なるほど、全部受けきって実力差を見せるというだけある。僕が攻めに入ったら攻める姿勢は完全に消えた。なら遠慮なく魔法を打ち込むだけだ。僕は3属性なんかじゃないんだよね。

「ウッドガン!」

「4属性!?氷の盾!」

「嘘でしょ!?いや、ファイアガン!」

「変化、水の盾。」

まさかの相手も4属性目。なんかいやな予感がしつつも即座に氷に対して炎を打ち込んだけど、相手の盾もすぐに切り替わって水できたバックラーになり僕のファイアバレットを防いだ。

「・・・ちょっと嫌な予感がするんですけど。もしかするんですか?」

「いや、こちらもその予感はしているよ。君、8属性もちだね。まさか同じのがいるとはね。」

「同じ、ということはあなたも8属性ですか。」

でまかせはいうような感じじゃない。おそらく相手が使う属性に合わせて防ぎやすい属性の盾を出すのがこいつの魔法の主体なんだろう。

「まぁね、でもこんな盾を出すので精いっぱい。これを君のように打ち出したりでもできれば少しは違ったのかもしれないけどね。ただどちらにせよ、君もあのガンの魔法が精一杯のようだね?」

「・・・どうでしょうね。」

切り札がないわけじゃない。ただあれを使うと一気見魔素を使っちゃうから近接戦の魔素纏いにも少し影響が出る。相手がそのすきを攻めてこないとは言い切れないから使いたくはない。

「いや、分かるよ。同じならば魔法の制限の悩みはね。だからこそ主に習い槍を磨いたんだ。さぁ打ってきなよ、どんどん。全部防いであげよう。こちらが8属性だと見せるためにもね。」

「それって攻撃はしてこないってことですか?」

「まぁ、受け切って戦意を喪失させる方がいい。腕輪を壊すのはいつでもできるけど、それだとまた昇られるかもしれないからね。」

「・・・なるほど。」

ここまで登ってきた人が僕以外にもいたんだろう。そしてただ打ち倒すだけだとまたここまで登ってくる。完全なる戦意損失を狙うわけか。

「そういうわけなら、全力で行きます。」

剣をしまい両手を前にと突き出す。全力で行ってもこればかりはバレット一粒が限界。それでも打ち出すレベルまでできてただけ良しとしよう。火の赤、爆の橙、水の紺、氷の青、風の緑、雷の黄、土の灰、そして樹の茶の8色の礫を出現させ、発射する。

「エイトカラーバレット!」

「虹色のバレット!?ならばこちらも虹の盾!」

盾がさらに小さくなっていたけど僕の打ち出した球それぞれに対応するように8色の盾が防がれてしまう。結構魔素使ったってのに、あっけなく防がれるとは想定外だった。さすがに精神的にも来たみたいで、片膝をついてしまった。
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