そこは獣人たちの世界

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第三章

聖都ギルドマスター

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聖都のギルドマスタールームの前で、僕だけじゃなくガロも止まっていた。明らかに緊張してる。ガロのこんな顔始めてみる。今って、話してもいいんだろうか。でも気になる。

「ねぇガロ、レヴィーアさんとは会うののはじめてなの?」

「あぁ、彼女とはあったことがない。話は聞いたことがあるがな。行くぞ。」

すっごい小さい声で効いたらちゃんと僕よりもさらに小さい声で返してくれた。それでガロも意思が決まったのか、マスタールームの部屋を開ける。ちょっと動きは堅いけど。
まず見えた部屋の中は天井から垂れ下がる白いレースカーテン。金の刺繍が綺麗についていて神々しくすらある。そしてもう一つ、他のマスタールームでも見た大きな本棚と執務机。その向こう側に座ってるであろう空のような青に黒く長い髪と黒い斑の模様が特徴的な蛇種の人。
ガロが彼女っていてったし女性なんだろうし、確かに女性らしい感じはするけど、雰囲気というか存在感がすごい。女帝とか女王って感じがする。

「よくぞ来た。待っておったぞ。」

「はい、呼ばれましたので参上しました。Sランクガロと、Cランクキオでございます。」

いきなりガロが横で跪き敬服を示す恰好をしたのでちょっと驚いちゃったけど、何とか僕も黙ったままだけどすぐに同じ格好ができた。こういうことするなら先言っといてほしかったよ!

「そこまでかしこまらなくてもよい。妾が椅子を使わない故、椅子はないが、楽に立って居よ。話づらいからの。」

「・・・わかりました。」

即座にすっと立ち上がっちゃったよ。というか椅子を使わないってどういうことだ?まぁ僕もガロと同じように立ちながらも楽な姿勢になっておこう。跪いてるのはちょっとつかれる。

「ガロはおそらく妾のことを聞いておるだろうが、初対面だからの。しっかりと自己紹介をしておこう。」

そう言って執務机の向こう側から出てきたレヴィーアさんには服は着ているものの、腕も足もない。尾をうねらせるように動いていて上体は起き上がってるけどまさしく蛇。人なのかと一瞬疑ってしまうような姿だ。

「本当にそのような姿なのですね。」

「そうじゃ、蛇種にまれに生まれる劣等体の姿をもつ妾はレヴィーア。もっとも妾は腕も足もなくとも不便に思ったことはないがの。」

そう言うと机の上の紙の一枚が浮きはじめ、勝手に動いてレヴィーアさんの前にまで動いてくる。さんざん見てきた魔法的光景ともまた異質な光景に思わず声を出してしまった。

「な、なんですか、それ?」

「おいキオ。」

「よいよい。これは空間魔法の中でもさらに異質、念動力というものじゃ。」

「念動力・・・」

つまり勝手に動いたんじゃなくレヴィーアさんが動かしてるってことか。念動力とかテレキネシスとかも魔法できるとは思ってなかったけど、あれなら確かに腕がなくても不便はしないだろう。

「ふむ、これで驚くとはの。妾の姿で声をあげるかと思ったのじゃが。ガロが教えておいたのかの?」

「いえ、話してはいなかったですが。」

「ならば妾から少し話して進ぜよう。劣等体とは鳥種や魚種や蛇種などでまれに生まれる腕や足が生まれつき生えていないもののことを言うのじゃ。腕がなく翼だけしか持たぬ鳥種、足がなく長い尾だけになる蛇種のようなものじゃ。もっともめったには産まれぬがの。」

手足がないっていうのは多分普通不便なんだろう。だからこその劣等体なんて呼ばれてるんだろうし。でもそんな劣等体として生まれて手足がないはずのレヴィーアさんがギルドマスターってことは、相当な実力者なんだろう。さっきの念動力だってすごかったし。

「わざわざレヴィーアさんが話さなくても、後で話しておいたのですが。」

「和ませるのはよいと思ったのじゃが、あまり和まなかったかの?では早々に本題に入るとするかの。」

真剣な話になるからなのか、金色の瞳の中の瞳孔が細くなった。ちょっと怖くて一方しろに下がりそうになったよ。

「そうです、なぜ俺たちは呼ばれたのですか?」

「ガロ、お主今回のドラゴンの事件がただの金角だと思って居るじゃろ?」

「違うの、ですか?」

「もしただの金角ならわざわざゴウを使ってまでお主らを呼びなどせぬ。今回動いているのは原初の竜が一匹、世界竜だ。」

「え、今なんて言いましたか?原初の竜?」

なんかおとぎ話みたいにガロが言ってた存在だよね?あまりに驚いてガロもなんか素の言葉になってるし。慌ててちょっと口ふさいでたけど。

「よいよい。驚くのも無理はないからの。」

「信用できる情報、なのですか?いえ、そもそも原初の竜なんて大物に、なぜ俺たちが?」

「そうか、お主でも知らなかったか。妾は聖都ギルドマスターであり、聖都教会神殿長でもある。その地位にいる妾に直接世界竜よりお言葉を授かったおじゃ。この世界に迷い込んだ異界の民であるキオと、その番となったガロをそのもとに呼び込むように、とな。」

「っ!」

僕のほうを見ながら異界の民と言った。つまりレヴィーアさんは僕が人間だと知っているってことになる。軽くガロが前に出て僕の姿を隠してくれた。

「そんなことをせんでも奪ったりなどはしないから安心せい。じゃが世界竜の呼び出しには必ず答えよ。聖都の民も近くをドラゴンが通って不安になっておるからの。お主らが来るまでいたたまれないようじゃが、山でじっとしておいてほしいものじゃな。」

「いたたまれないなんて理由で飛び回っていられるんですか。」

「妾が言うべきではないのじゃろうが、世界竜にも別にそこまでかしこまる必要はないじゃろう。妾はお主らに言葉を伝えるのが役目なだけじゃ。」

「ギルドマスターで神殿長のレヴィーアさんを使いとできているだけでも俺たちにとって畏怖の対称ですがね。」

「それもそうかの。伝えることは伝えた。7日以内には登りはじめるのじゃぞ?」

「しかと承りました。」

一気にとんでもないことになった気がするけど、とりあえず準備する日にちはくれるようだ。ガロに続いて深々とお辞儀した後にマスタールームを退室した。
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