285 / 303
第三章
山を目指して
しおりを挟む
ひどい特訓の連日だったけど、おかげですっかり剣と盾での戦い方は様になったと思う。西側から聖都を出れば眼前にそびえる山脈。あそこまで歩きってのがまた大変な話だ。あっちには町はもちろん村もないので馬車なんて出てない。結構離れてるはずだけど、それだけ危険な山脈ってことでもある。
「まっすぐつくなら4日は歩きどおしになる。きつかったら途中休んでもいいけどな。」
「うん、覚悟してる。そのために昨日のうちに寝溜めておいたわけだし。」
珍しくというか、ちょっと残念というか、この3日間くらいガロとそういうことをしていない。できるだけ歩き通すためにしっかり眠るようにいわれたからだ。この調査が終わるまではお預けだろうな。
出発の時はそんなのんきなことも考えてられたけど、道中はなかなかに厄介な旅になった。まず歩く道は舗装などされていない。まぁこれは慣れたもんだけど、そういう場所には魔物がつきもので、まっすぐ目的地のほうに歩くのもままならない。
聖都を出てしばらくは魔物の気配の一つもなかったのに、僕が気づくよりも先にガロが気づいて進路を変える。
「わかるか?擬態草蛇だ。この辺には沸くと聞いていたが、それほど聖都から離れてないのにあんなのが普通にいるとはな。」
「ミミキュリーウィードスネーク?よくわかったね。僕はこの位置でようやくなんかいるってわかるくらい。でもあいつなら一応塔で戦ったよ。」
「あのゴウさんの塔か。そういえばそうだったな。ならば対処も出来なくはないか。だが無駄な体力は使わない方がいい。」
「そうだね、向こうもこっち側に気づいてないのか、向かってくる様子もないし。」
わざわざ少しそれてよけたのに倒しに行く必要はないとその時は思ってたけど、ガロがちょっとイラついた様子でジグザグに進んでいく。気配感知のあちこちに擬態草蛇の気配を感じる。結構な数がいるんだな。
「倒すのには手間はかからないか、これならよけずに進む方が体力の消耗は抑えられるか?」
「んー、僕はどっちでもいいよ。そこはガロの判断に任せる。」
「そうか、当初の予定通りならよけて進むが、本当に邪魔なやつだけ潰そう。」
「了解。」
そんなことを言ったけど、しばらくはジグザグに進むばかりで気配はあちこちに感じながらもこっちに向かってくるほど近づくこともなかった。でも目の前の3つの気配に明らかに近づいていく。腰につけておいた盾とショートハンガーに手をかける。
3つの気配がゆっくりとだけどこっちに近づいてくる。どれも擬態草蛇の気配だ。向かってきたら切り捨てると思ってたらガロがいつかの時に買ってた鋼鉄のグラディウスをポーチから抜いて素早く3匹を仕留めていた。
「ぼ、僕の出る幕はなさそうだね。」
「今は体力温存しておけ。まだまだ歩くんだぞ?奥に見えるもりまでまず2日はかかるしな。いや、この調子だと二日半はかかりそうか。」
今は草原だけど、途中から山に向かって伸びていっている森に入ることになる。そこまでが長いわけだ。というか山に入ってからも世界竜のところまで登ることになるから、あくまで山につくまで4日歩きどおしの予定なだけだし、ここで僕が体力使うのはよくないか。なんか予定通りいかなそうだし。
そのあとも基本的にジグザグに進みながら時折まとまった蛇をガロが狩りとる。夜になったからといって擬態草蛇は眠って動かなくなったりしない。あいつらは獲物が近くに来ると起きるだけで、昼も夜も関係ないんだ。
少しうらやましくも感じるよ。いや別に一日くらい歩き続けてるのは平気だ。でも眠気が全くないわけじゃない。寝ていいよと言われればすぐ眠れるくらいには疲労感だってある。だからって一日一日休んでたらきりがない。
出会う魔物は蛇ばかりで飽きてきた二日目に、孤立した大きめの気配を感じる。だいぶ離れてるけど、姿も見えた。見た目はソロウルフだけど大きそうな個体だった。向こうからも見えただろうがこっちに寄ってこなかった。
「あんなに成長したソロウルフがいるとはな。もしかしたら上位種に進化してるのかもしれないな。」
「そういうのもあるの?」
「魔素を多くえて魔物だって成長する。色んな牛種がいるが、始めは暴れ牛だった個体とかもいるかもな。得た魔素の属性で変わったりするとかも考察されてるが、詳しくは俺も知らないな。」
「そっか。でも種族そのものが変わることはないのかな。」
「それもわからないとしか言いようがない。だがとりあえず地上の魔物なら大体冒険者が狩っていくからよほどの魔物にならない。」
なるほど、それで海の魔物は危険なのか。ということは基本的には空の魔物も危険っぽいけど、空になら魔法で対処も出来なくはないか。
「それにしても、さっきの奴はなんでこっち来なかったんだろ?」
「そういうのができるから上位種かもといったんだ。俺たちの気配を感じて戦ってかなわないと逃げる魔物もいる。角鹿がいい例だな。」
「あー、そっか。魔物なら何でもかんでも襲ってくるとは限らないもんね。」
もっとも危険性の低い魔物でも死に追い詰めれば反撃だってする。生きてるんだから当然っちゃ当然だけど。あの大きいソロウルフもこっちから寄っていってたら襲ってきてたかもしれないな。
「まっすぐつくなら4日は歩きどおしになる。きつかったら途中休んでもいいけどな。」
「うん、覚悟してる。そのために昨日のうちに寝溜めておいたわけだし。」
珍しくというか、ちょっと残念というか、この3日間くらいガロとそういうことをしていない。できるだけ歩き通すためにしっかり眠るようにいわれたからだ。この調査が終わるまではお預けだろうな。
出発の時はそんなのんきなことも考えてられたけど、道中はなかなかに厄介な旅になった。まず歩く道は舗装などされていない。まぁこれは慣れたもんだけど、そういう場所には魔物がつきもので、まっすぐ目的地のほうに歩くのもままならない。
聖都を出てしばらくは魔物の気配の一つもなかったのに、僕が気づくよりも先にガロが気づいて進路を変える。
「わかるか?擬態草蛇だ。この辺には沸くと聞いていたが、それほど聖都から離れてないのにあんなのが普通にいるとはな。」
「ミミキュリーウィードスネーク?よくわかったね。僕はこの位置でようやくなんかいるってわかるくらい。でもあいつなら一応塔で戦ったよ。」
「あのゴウさんの塔か。そういえばそうだったな。ならば対処も出来なくはないか。だが無駄な体力は使わない方がいい。」
「そうだね、向こうもこっち側に気づいてないのか、向かってくる様子もないし。」
わざわざ少しそれてよけたのに倒しに行く必要はないとその時は思ってたけど、ガロがちょっとイラついた様子でジグザグに進んでいく。気配感知のあちこちに擬態草蛇の気配を感じる。結構な数がいるんだな。
「倒すのには手間はかからないか、これならよけずに進む方が体力の消耗は抑えられるか?」
「んー、僕はどっちでもいいよ。そこはガロの判断に任せる。」
「そうか、当初の予定通りならよけて進むが、本当に邪魔なやつだけ潰そう。」
「了解。」
そんなことを言ったけど、しばらくはジグザグに進むばかりで気配はあちこちに感じながらもこっちに向かってくるほど近づくこともなかった。でも目の前の3つの気配に明らかに近づいていく。腰につけておいた盾とショートハンガーに手をかける。
3つの気配がゆっくりとだけどこっちに近づいてくる。どれも擬態草蛇の気配だ。向かってきたら切り捨てると思ってたらガロがいつかの時に買ってた鋼鉄のグラディウスをポーチから抜いて素早く3匹を仕留めていた。
「ぼ、僕の出る幕はなさそうだね。」
「今は体力温存しておけ。まだまだ歩くんだぞ?奥に見えるもりまでまず2日はかかるしな。いや、この調子だと二日半はかかりそうか。」
今は草原だけど、途中から山に向かって伸びていっている森に入ることになる。そこまでが長いわけだ。というか山に入ってからも世界竜のところまで登ることになるから、あくまで山につくまで4日歩きどおしの予定なだけだし、ここで僕が体力使うのはよくないか。なんか予定通りいかなそうだし。
そのあとも基本的にジグザグに進みながら時折まとまった蛇をガロが狩りとる。夜になったからといって擬態草蛇は眠って動かなくなったりしない。あいつらは獲物が近くに来ると起きるだけで、昼も夜も関係ないんだ。
少しうらやましくも感じるよ。いや別に一日くらい歩き続けてるのは平気だ。でも眠気が全くないわけじゃない。寝ていいよと言われればすぐ眠れるくらいには疲労感だってある。だからって一日一日休んでたらきりがない。
出会う魔物は蛇ばかりで飽きてきた二日目に、孤立した大きめの気配を感じる。だいぶ離れてるけど、姿も見えた。見た目はソロウルフだけど大きそうな個体だった。向こうからも見えただろうがこっちに寄ってこなかった。
「あんなに成長したソロウルフがいるとはな。もしかしたら上位種に進化してるのかもしれないな。」
「そういうのもあるの?」
「魔素を多くえて魔物だって成長する。色んな牛種がいるが、始めは暴れ牛だった個体とかもいるかもな。得た魔素の属性で変わったりするとかも考察されてるが、詳しくは俺も知らないな。」
「そっか。でも種族そのものが変わることはないのかな。」
「それもわからないとしか言いようがない。だがとりあえず地上の魔物なら大体冒険者が狩っていくからよほどの魔物にならない。」
なるほど、それで海の魔物は危険なのか。ということは基本的には空の魔物も危険っぽいけど、空になら魔法で対処も出来なくはないか。
「それにしても、さっきの奴はなんでこっち来なかったんだろ?」
「そういうのができるから上位種かもといったんだ。俺たちの気配を感じて戦ってかなわないと逃げる魔物もいる。角鹿がいい例だな。」
「あー、そっか。魔物なら何でもかんでも襲ってくるとは限らないもんね。」
もっとも危険性の低い魔物でも死に追い詰めれば反撃だってする。生きてるんだから当然っちゃ当然だけど。あの大きいソロウルフもこっちから寄っていってたら襲ってきてたかもしれないな。
13
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる