冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき

文字の大きさ
35 / 60

第三十五話 逃れられない定め?

しおりを挟む
「さて、それじゃあそろそろ出発しよう」
『さっき説明してた植物を探すのか? ニンゲンって変なやつだぞ、植物なんて食べてもおいしくないぞ』

 あたしに抱っこされているキツネ、もといシロちゃんは、ジトーッとした目であたしを見つめる。

「あたし達が探しているのは、食べるためじゃかくて――」
「……!?ガウッ!!」

 先程までとはうって変わって、獣らしい声を出すシロちゃん。
 何かあったのだろうか……そう思って振り向くと、そこにあったのはなかなか心に来るものだった。

「おでましだな」
「き、きも~い……」

 あたし達を襲ったのは、前の世界にあったラフレシアの花みたいな、真っ赤な花だ。その本体からは、沢山の触手が伸びる、何とも気持ち悪い見た目をしている。

『は、鼻が曲がるぅ~! こいつ、変な匂いがするから大嫌いだぞ!』
「シロちゃん、この花のこと知ってるの?」
『こいつは、動物を食べるやつだぞ! すっごい食いしん坊で、捕まったら骨ごとバリバリ食べられちゃうぞ!』
「え、えぇ!? アラン様、あれに捕まったら食べられちゃうって、シロちゃんが言ってます!」
「わかった。炎で燃やしてしまいたいが、そんなことをしたら火の海になってしまうな……なら……ミシェル、さっきのクマと同じように、俺が止めている間に、あいつの説得を頼む」

 アラン様は、宙にいくつもの魔法陣を展開する。その間に、あの花……ラフレシアはたくさんの触手を、アラン様に向けて伸ばす。
 しかし、その触手はアラン様に触れる前に、魔法陣から出てきた真空の刃で、ずたずたに斬り裂かれた。

「すごい、あんなに一瞬で……!」
『ニンゲン、なかなかやるな! オイラの次くらいには強いぞ!』
「そうだよ、アラン様は凄いんだから! って、感心してないで、あたしはあたしの仕事をきっちりしないと!」

 魔法の成功率を高めるために、意識を集中して魔法の詠唱をする。
 ――お願い、あたしの声を聞いて。あたし達はあなたの敵じゃないし、あなたのごはんじゃないの!

「とりあえず、これで攻撃の手段は断った……なに?」

 ラフレシアの触手は、確かにアラン様が魔法で全て斬ったはずなのに、本体から新しい触手が生えてきた。それどころか、斬られた触手達も、断面から徐々に伸び始め、あっという間に元通りになった。

 そして、その触手達は、再びあたし達に襲いかかってきた。

 いくら魔法のある世界だとはいえ、こんな再生能力を持つ植物が現実にいるなんて! これも、この森の異質な魔力のせいなの?

『そうだった! こいつはいくら攻撃しても、すぐにニョキニョキ生えてくるから、襲われたら早く逃げろって、かーちゃんが言ってたぞ! あと、あいつら思ったより素早いから、気を付けるんだぞ!』
「そうなの!? シロちゃんが、攻撃しても意味が無いから逃げろって! あと、足が速いみたいです!」
「あの図体で機敏なのか? 信じがたいが、現地の動物の言葉なら信憑性があるな。ミシェル、ここから離れるぞ!」

 アラン様は、あたしの手を掴んでから、再び魔法陣を展開すると、今度は真空の刃ではなく、真っ白な煙を生み出した。それと同時に、魔法陣は眩く光り始めた。

 これは、煙幕と目くらましを併用した魔法かな? いまのうちに、この場を離れよう。

『おいニンゲン、なんでオイラを連れて行くんだ! 放せ!』
「放すわけないでしょ!? あの植物に殺されちゃっても良いの!?」
『オイラの足なら逃げられるぞ!』
「病み上がりなんだから、無茶言わないの!」

 なるべくラフレシアから離れるように、足場の悪い森の中を一心不乱に走る。
 シロちゃんを片手で抱っこしながら全力で走るのは、転びそうで怖いけど、あのまま放っておくわけにもいかない。

 ……しかし、そんなあたしの考え方は、野生の世界では甘すぎるということを、痛感することになる。

『くんくん……この嫌な匂いは! ニンゲン、もうあいつが追いついてきたぞ!』
「もう!? アラン様、さっきの植物が――」

 アラン様に状況を説明しようとした時には、すでに遅かった。
 ラフレシアから伸びた触手が、あたしとアラン様を引き離すように薙ぎ払ってきた。

「かはっ……」

 その場から吹き飛ばされてしまったあたしは、無様に地面を転がされた。お腹に感じる衝撃は、処刑された時のギロチンほどではないにしろ、相当な衝撃だった。

「……え……?」

 あたしは攻撃をされた。そして地面を転がった。そこまではわかってる。
 しかし、今は下に向かって、何かに引っ張られているような……いや、体全体に謎の浮遊感を感じていた。

 地面を転がっていて、こんな感覚を味わうことなんて……混乱するあたしだったが、その理由はすぐにわかった。

 ……なんと、吹き飛んだ先が運悪く崖だったの。

 このままでは、あたしは地面に叩きつけられてしまう。打ちどころが悪ければ即死……運が良かったとしても、大怪我は免れない。

 どうしよう……どうしよう! あたしには、この状況を打開できる魔法は使えないし、パニック状態になってしまい、頭が全く働かない!

「っ……!!」

 あたしに出来ることは無い。唯一あることは、巻き込んでしまったシロちゃんを守ることだけ――そう思ったあたしは、シロちゃんに少しでも衝撃がいかないように、覆うように抱き抱えた。

 そして、それから間もなく……あたしの体への強い衝撃と共に、ガポガポ……という水音が襲ってきた。

 な、なにこれ……川か何か? 凄い流れで、体の自由が利かない! このままじゃ溺れちゃう!

「ぷはぁ! は、早く岸に……あれ、シロちゃん!? シロちゃ――」

 なんとか顔だけ出すことには成功したけど、いつのまにか自分の手の中からいなくなっていた。

 早くシロちゃんを探さないといけないのに、水の流れが想像以上に早いうえに、ラフレシアに叩かれたお腹が痛くて力が入らない。更に追い打ちをかけるように、服が水を吸って重くなり、あたしの動きを鈍らせる。

「ぷはっ……あ、アランさ……シロちゃ……あっ!?」

 荒れた川の水があたしの顔に襲い掛かり、またしても水の中へと引きずり込まれる。

 あたし、こんなところで死ぬのかな。結局処刑はされなくても、こうやって別の形で死んじゃうってことなのかな……全部、無駄だったのかな……。

 そんな……そんなの……!

「っ……!!」

 そんなの、冗談じゃないよ! あたしはまだ死ぬわけにはいかない! 巻き込んでしまったシロちゃんを助けるために、アラン様の願いを支えるために、そして……残してしまった家族の元に帰るために、あたしは生き残るんだから!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢だけど破滅したくないから神頼みしたら何故か聖女になりました

当麻リコ
恋愛
五歳にして前世の記憶に目覚めたライラ。 彼女は生前遊んでいた乙女ゲームの世界に転生していたことを知る。 役どころはヒロインの邪魔ばかりする悪役令嬢ポジション。 もちろん悪役にふさわしく、悲惨な末路が待ち構えている。 どうにかバッドエンドを回避しようと試行錯誤するが、何をやってもゲームの設定からは逃れられなかった。 かくなる上は、最終手段の神頼みしかない。 思いつめたライラは、毎日神殿に通い祈りを捧げ続けた。 ヒロインが登場するまであとわずか。 切羽詰まった彼女の身に、とんでもない奇跡が起きた。 一切魔力を持たなかった彼女に、突如膨大な魔力が宿ったのだ。 呆然とする彼女に、神殿から下された使命は「聖女として神様のお世話をすること」。 神殿の権力は強く、侯爵令嬢という高貴な身の上にも関わらず問答無用で神殿に住み込むことが決められた。 急激に変わり始める運命に、ライラは持ち前の度胸と能天気さで前向きに挑む。 神様と急造聖女の、無自覚イチャイチャ恋愛劇。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

処理中です...