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第三十六話 最悪のシナリオ
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諦めかけてしまっていた心を、なんとか奮起させて水上に上がろとするが、自然の力は優しくない。
あたしの気持ちなんて、知ったことではないと言わんばかりに、水の猛烈な勢いを保ち続けている。
こんな水流に抗う魔法も、体力もない。そもそもあたしは泳ぐのが苦手だから、どう頑張っても、完全に詰んでいるのかもしれない。
それでも、絶対に諦めない! 絶対に生きるんだから! 結局処刑された時と同じくらいの日に溺れ死にましたーなんて、笑い話にもならないよ!
「がぼっ……いぎ、で……え?」
必死に激流の川から逃げようとすると、あたしの前に白くてフワフワしたものが現れた。それも、その大きさはあたしの体と同じくらいある。
これがなんなのかわからない。また何か動物や植物の罠かもしれない。
でも、ここでもがいていても、助かることはないだろうし……信じて捕まるしかない。
「っ!!」
抱き枕を抱っこするように、全身を使って尻尾に抱きつくと、再びあたしの体に浮遊感を感じていた。
ただ、さっきと違うのは、落ちているからではなく、この尻尾に岸に引っ張り上げてもらえたからだ。
「はあ……はあ……ごほっ……よかった、助かった……」
怒涛の勢いで色々なものに襲われたけど、とりあえずは岸に上がれたし、一安心。そう思ったら、極度の疲労と、緊張の糸が切れちゃって……その場で意識を失ってしまった。
****
『おいニンゲン、いい加減起きるんだぞ』
「うぅん……」
柔らかい何かが、あたしの頬をムニムニとしている感覚に反応して目を開けると、そこにはシロちゃんの姿があった。
「シロちゃん……よかった、無事だったんだね。怪我とかしてない?」
『怪我はないぞ。ただ、凄く疲れて一歩も動けそうもないぞ』
そう言うと、シロちゃんはその場でぐったりと横になった。
あんな激流の川に放り込まれたんだから、疲れるのも無理はないよね……。
「あれ、ここはどこ……?」
『少し離れたところにある洞窟だぞ。外にいるよりかは安全だと思って、連れてきたんだぞ』
「シロちゃんが連れて来てくれたの? ありがとう、シロちゃん」
『そ、外で呑気に寝ていたら食べられちゃうから、仕方なくだぞ! 勘違いするな! あ、でも……あと……まあ、その……助けてもらった恩返し』
耳をペタンとたらし、恥ずかしそうに目を背ける姿が可愛すぎて、思わずシロちゃんを頭をワシャワシャと撫でた。
……あたしの周りには、ツンデレが集まる習性でもあるのだろうか?
「助けてくれてありがとう」
『うわぁ~! 触るなニンゲン~!』
感謝の気持ちをナデナデでたくさん返してから、あたしは疑問に思っていたことを聞きはじめる。
「色々ありすぎて、まだ混乱してるんだけど……あたし、川に叩き落とされたんだよね?」
『そうだぞ。吹っ飛ばされた先が、崖になってたんだぞ。その下には川が流れてて、オイラ達は流されたんだぞ』
やっぱりそうだったんだね。あたし、よく無事でいられたなぁ……。
『まったく、ニンゲンのせいで酷い目に合ったぞ。まさか、落っこちててもオイラを離さないのは、ビックリだぞ』
「うっ、ごめんね……シロちゃんを守ろうとして、こんなことに巻き込んじゃった……」
『そ……そんな顔するなよ。ごめんって、言い過ぎたぞ』
「……そうだ、誰かが助けてくれたんだ。白い大きな尻尾だったんだけど……シロちゃん?」
『そ、そそそ、そんなわけないだろ! オイラのしっぽじゃ小さすぎるぞ!』
確かにあたしが見た尻尾と、シロちゃんの尻尾では、大きさがあまりにも違いすぎる。
でも、あの場にいた白い尻尾は、あたしを助けようとしていた。その場であたしを食べちゃうことだって出来たはずなのに、そういうことはしていない。
そう考えると、シロちゃんが何かしらの力で、一時的に大きくなったって可能性があるんじゃないかなって思ったの。
ほら、この森に住む動物なら、大きくなれたとしても全然不思議じゃないしね。
でも、シロちゃんは違うって言ってるし……うーん?
「そうだ。ねえシロちゃん、アラン様は一緒じゃないの?」
『アランサマ? ああ、もう一人のニンゲンのことか? わからないぞ。結構流されちゃったからな』
「そんな……」
アラン様は、ラフレシアから逃げきれたのだろうか? それとも、不意を突かれてラフレシアに……そ、そんなこと、天地がひっくり返ってもありえないよね! あのアラン様、が……。
「もし、もし死んじゃってたら……?」
考えたくもない、最悪のシナリオ。
起きてほしくないと願っている、でも絶対にないとは言えない、最悪の可能性。
いや、そんなことあるわけない、あるわけない!! あるわけない!!!
『どうしたニンゲン、何を考えているんだ? 汗でびっしょりだぞ』
「アラン様が死んじゃったら、どうしようって……!」
嫌な考えは、連鎖するものだ。しかも、連鎖すればするほど、不安という沼から逃げられなくなる。相手が大切な人なら尚更だ。
わかってても……どうすることも出来ない。
『おまえは、あいつが大切なんだな』
「うん……大切な人なの」
『なら、おまえが生きているって信じなきゃ、誰が信じてやるんだ?』
「っ……! シロちゃん……!」
『今日がはじめましてのオイラですら、あいつは中々やるなって思ったぞ。そんな男が、こんな所でくたばるはずがないぞ。オイラが保証するぞ』
「……ありがとう」
自信満々で、自分の言葉はなにも間違っていないと確信しているシロちゃんは、細長い鼻を上を向けた。
人によっては、偉そうにって思うかもしれないけど……今のあたしには、それがとても頼もしくて。思わず感謝の気持ちを込めて、シロちゃんを抱きしめちゃった。
『だから抱きつくな~! 今は他のやつの心配したり、抱きつくよりも、自分の心配をした方が良いぞ! さっきから、洞窟の奥から変な音が聞こえるんだぞ。それも、一匹や二匹じゃないぞ』
こんな真っ暗な洞窟の奥に、生き物なんているの? そう思った瞬間に、洞窟の奥から、真っ黒い動物達が、バサバサと音を立てながら襲ってきた。。
「こ、これって……コウモリ!?」
『こいつらは、動物の血を餌にしている奴らだぞ! 早く逃げないと、チューチュー血を吸われて死んじゃうぞ!』
本当は、アラン様と合流するために、あまり動きたくないんだけど、それで命の危機にさらされてたんじゃ、笑い話にもならない。
「とにかく逃げなきゃ!」
『って、なんでオイラを抱えるんだ!?』
「だって疲れて動けないんでしょ!? 放っておけないから!」
『自分以外の動物を助けるなんて、本当に変なニンゲンだぞ!』
「もう、シロちゃんがそれを言う!?」
『オイラが助けたのはついでだぞ!』
この際、助けられたからとか、そんなのはどうでも良い。ここまで一緒に行動をしてきたシロちゃんが危険な目に合ってほしくない。理由なんて、これだけで十分!
「どこに逃げれば良い!?」
『たしか、あいつらは光が嫌いだから、襲われたらお日様が差す場所に行けって、カーちゃんが言ってた!』
「わかった!」
お日様の光が差す場所を探して走りだすと、思ったよりも条件に適している場所を見つけた。
鬱蒼と生える木々の隙間が思ったよりも広くなっていて、まるでスポットライトのようになっている。
「あ、逃げていった……よかった」
『ふふん、これもオイラのアドバイスのおかげだぞ!』
「うん、そうだね。ありがとう、シロちゃん」
「うわぁ~! だからワシャワシャするな~!」
ワシャワシャしているうちに、あたしは疲れてその場で座り込んでしまった。同時に、あたしの体はぶるぶると震え始めた。
「さ、寒い……」
さっき川に落ちた後、服を着替えたり干したりできていないから、体はずぶ濡れのままだ。これで寒くないって言うのは無理がある。
「くしゅん!」
『寒いのか? オイラみたいに、ブルブルして水を飛ばせばいいぞ』
「人間は、キツネみたいなことは出来ないんだよ……」
さっきから、ずっと気を張ってたから気が付かなかったけど、思っている以上に体温が奪われちゃってる。さっきまで寝てたのに、眠くて眠くて仕方がない。
ここで呑気に寝ていたら、格好のエサになっちゃうよ。そんなの、冗談じゃない。
「仕方ない……いだっ……!!」
痛みで無理やり目を覚まさせるために、腕に噛みつく。強くやり過ぎて、赤い液体が出てるけど、お構いなしだ。
『な、なにしてるんだ!? 自分を食べても、おいしくないと思うぞ!』
「食べないよ。ただ……寒すぎて、寝てしまいそうだから……こうして痛みで……」
『ニンゲンって、面倒くさい生き物なんだな。そこでちょっと待っているといいぞ』
シロちゃんはそう言うと、近くにあった枝や葉っぱを集めて、一つの小さな山のような形に集めた。
「それをどうするの?』
『こうするんだぞ』
「わぁ、口から青い炎が出た!?」
シロちゃんは、思いっきり息を吸い込むと、口から青い炎が出した。そして、その火は集めてくれた枝や葉っぱに燃え移り、小さな焚火が出来た。
『オイラ達は、青い炎を操ることが出来るんだぞ。まあ、今のオイラだと、指先くらいの大きさしか出せないから、威嚇にも使えないへっぽこ炎だけど……』
「全然へっぽこじゃないよ! 凄く暖かい!」
たしかにシロちゃんの炎は、ライター程度の大きさや火力しかない。そんな炎でも、こうして暖が取れてるんだから、自信を持つべきだよ!
「あぁぁぁ……本当に暖かい……」
『だぞぉ……』
炎に怯えているのか、ひっきりなしに襲い掛かってきた動物達が、襲ってこなくなった。
たまに近くを通る動物から、焚き火からなる恐怖心にかられ、あたし達を襲わないという行動を取らせているみたい。
これなら、少しは休めそうだね。アラン様、この焚火の煙を頼りに来てくれると嬉しいんだけど……。
「……ふぅ」
『どうした、溜息すると、幸せが逃げちゃうぞ。可哀想だから、特別にもふらせてやるぞ』
「ありがとう、シロちゃん」
膝の上に乗って丸くなるシロちゃんを撫でながら、目を細める。
……アラン様、会いたいよ。離ればなれになったら、いつも以上にあなたがいないのが寂しいくて、あなたの存在が支えになってたと気づきました。ああ、会いたい。あなたに触れたい。あなたを抱きしめたい。
だから……無事でいてください……。
あたしの気持ちなんて、知ったことではないと言わんばかりに、水の猛烈な勢いを保ち続けている。
こんな水流に抗う魔法も、体力もない。そもそもあたしは泳ぐのが苦手だから、どう頑張っても、完全に詰んでいるのかもしれない。
それでも、絶対に諦めない! 絶対に生きるんだから! 結局処刑された時と同じくらいの日に溺れ死にましたーなんて、笑い話にもならないよ!
「がぼっ……いぎ、で……え?」
必死に激流の川から逃げようとすると、あたしの前に白くてフワフワしたものが現れた。それも、その大きさはあたしの体と同じくらいある。
これがなんなのかわからない。また何か動物や植物の罠かもしれない。
でも、ここでもがいていても、助かることはないだろうし……信じて捕まるしかない。
「っ!!」
抱き枕を抱っこするように、全身を使って尻尾に抱きつくと、再びあたしの体に浮遊感を感じていた。
ただ、さっきと違うのは、落ちているからではなく、この尻尾に岸に引っ張り上げてもらえたからだ。
「はあ……はあ……ごほっ……よかった、助かった……」
怒涛の勢いで色々なものに襲われたけど、とりあえずは岸に上がれたし、一安心。そう思ったら、極度の疲労と、緊張の糸が切れちゃって……その場で意識を失ってしまった。
****
『おいニンゲン、いい加減起きるんだぞ』
「うぅん……」
柔らかい何かが、あたしの頬をムニムニとしている感覚に反応して目を開けると、そこにはシロちゃんの姿があった。
「シロちゃん……よかった、無事だったんだね。怪我とかしてない?」
『怪我はないぞ。ただ、凄く疲れて一歩も動けそうもないぞ』
そう言うと、シロちゃんはその場でぐったりと横になった。
あんな激流の川に放り込まれたんだから、疲れるのも無理はないよね……。
「あれ、ここはどこ……?」
『少し離れたところにある洞窟だぞ。外にいるよりかは安全だと思って、連れてきたんだぞ』
「シロちゃんが連れて来てくれたの? ありがとう、シロちゃん」
『そ、外で呑気に寝ていたら食べられちゃうから、仕方なくだぞ! 勘違いするな! あ、でも……あと……まあ、その……助けてもらった恩返し』
耳をペタンとたらし、恥ずかしそうに目を背ける姿が可愛すぎて、思わずシロちゃんを頭をワシャワシャと撫でた。
……あたしの周りには、ツンデレが集まる習性でもあるのだろうか?
「助けてくれてありがとう」
『うわぁ~! 触るなニンゲン~!』
感謝の気持ちをナデナデでたくさん返してから、あたしは疑問に思っていたことを聞きはじめる。
「色々ありすぎて、まだ混乱してるんだけど……あたし、川に叩き落とされたんだよね?」
『そうだぞ。吹っ飛ばされた先が、崖になってたんだぞ。その下には川が流れてて、オイラ達は流されたんだぞ』
やっぱりそうだったんだね。あたし、よく無事でいられたなぁ……。
『まったく、ニンゲンのせいで酷い目に合ったぞ。まさか、落っこちててもオイラを離さないのは、ビックリだぞ』
「うっ、ごめんね……シロちゃんを守ろうとして、こんなことに巻き込んじゃった……」
『そ……そんな顔するなよ。ごめんって、言い過ぎたぞ』
「……そうだ、誰かが助けてくれたんだ。白い大きな尻尾だったんだけど……シロちゃん?」
『そ、そそそ、そんなわけないだろ! オイラのしっぽじゃ小さすぎるぞ!』
確かにあたしが見た尻尾と、シロちゃんの尻尾では、大きさがあまりにも違いすぎる。
でも、あの場にいた白い尻尾は、あたしを助けようとしていた。その場であたしを食べちゃうことだって出来たはずなのに、そういうことはしていない。
そう考えると、シロちゃんが何かしらの力で、一時的に大きくなったって可能性があるんじゃないかなって思ったの。
ほら、この森に住む動物なら、大きくなれたとしても全然不思議じゃないしね。
でも、シロちゃんは違うって言ってるし……うーん?
「そうだ。ねえシロちゃん、アラン様は一緒じゃないの?」
『アランサマ? ああ、もう一人のニンゲンのことか? わからないぞ。結構流されちゃったからな』
「そんな……」
アラン様は、ラフレシアから逃げきれたのだろうか? それとも、不意を突かれてラフレシアに……そ、そんなこと、天地がひっくり返ってもありえないよね! あのアラン様、が……。
「もし、もし死んじゃってたら……?」
考えたくもない、最悪のシナリオ。
起きてほしくないと願っている、でも絶対にないとは言えない、最悪の可能性。
いや、そんなことあるわけない、あるわけない!! あるわけない!!!
『どうしたニンゲン、何を考えているんだ? 汗でびっしょりだぞ』
「アラン様が死んじゃったら、どうしようって……!」
嫌な考えは、連鎖するものだ。しかも、連鎖すればするほど、不安という沼から逃げられなくなる。相手が大切な人なら尚更だ。
わかってても……どうすることも出来ない。
『おまえは、あいつが大切なんだな』
「うん……大切な人なの」
『なら、おまえが生きているって信じなきゃ、誰が信じてやるんだ?』
「っ……! シロちゃん……!」
『今日がはじめましてのオイラですら、あいつは中々やるなって思ったぞ。そんな男が、こんな所でくたばるはずがないぞ。オイラが保証するぞ』
「……ありがとう」
自信満々で、自分の言葉はなにも間違っていないと確信しているシロちゃんは、細長い鼻を上を向けた。
人によっては、偉そうにって思うかもしれないけど……今のあたしには、それがとても頼もしくて。思わず感謝の気持ちを込めて、シロちゃんを抱きしめちゃった。
『だから抱きつくな~! 今は他のやつの心配したり、抱きつくよりも、自分の心配をした方が良いぞ! さっきから、洞窟の奥から変な音が聞こえるんだぞ。それも、一匹や二匹じゃないぞ』
こんな真っ暗な洞窟の奥に、生き物なんているの? そう思った瞬間に、洞窟の奥から、真っ黒い動物達が、バサバサと音を立てながら襲ってきた。。
「こ、これって……コウモリ!?」
『こいつらは、動物の血を餌にしている奴らだぞ! 早く逃げないと、チューチュー血を吸われて死んじゃうぞ!』
本当は、アラン様と合流するために、あまり動きたくないんだけど、それで命の危機にさらされてたんじゃ、笑い話にもならない。
「とにかく逃げなきゃ!」
『って、なんでオイラを抱えるんだ!?』
「だって疲れて動けないんでしょ!? 放っておけないから!」
『自分以外の動物を助けるなんて、本当に変なニンゲンだぞ!』
「もう、シロちゃんがそれを言う!?」
『オイラが助けたのはついでだぞ!』
この際、助けられたからとか、そんなのはどうでも良い。ここまで一緒に行動をしてきたシロちゃんが危険な目に合ってほしくない。理由なんて、これだけで十分!
「どこに逃げれば良い!?」
『たしか、あいつらは光が嫌いだから、襲われたらお日様が差す場所に行けって、カーちゃんが言ってた!』
「わかった!」
お日様の光が差す場所を探して走りだすと、思ったよりも条件に適している場所を見つけた。
鬱蒼と生える木々の隙間が思ったよりも広くなっていて、まるでスポットライトのようになっている。
「あ、逃げていった……よかった」
『ふふん、これもオイラのアドバイスのおかげだぞ!』
「うん、そうだね。ありがとう、シロちゃん」
「うわぁ~! だからワシャワシャするな~!」
ワシャワシャしているうちに、あたしは疲れてその場で座り込んでしまった。同時に、あたしの体はぶるぶると震え始めた。
「さ、寒い……」
さっき川に落ちた後、服を着替えたり干したりできていないから、体はずぶ濡れのままだ。これで寒くないって言うのは無理がある。
「くしゅん!」
『寒いのか? オイラみたいに、ブルブルして水を飛ばせばいいぞ』
「人間は、キツネみたいなことは出来ないんだよ……」
さっきから、ずっと気を張ってたから気が付かなかったけど、思っている以上に体温が奪われちゃってる。さっきまで寝てたのに、眠くて眠くて仕方がない。
ここで呑気に寝ていたら、格好のエサになっちゃうよ。そんなの、冗談じゃない。
「仕方ない……いだっ……!!」
痛みで無理やり目を覚まさせるために、腕に噛みつく。強くやり過ぎて、赤い液体が出てるけど、お構いなしだ。
『な、なにしてるんだ!? 自分を食べても、おいしくないと思うぞ!』
「食べないよ。ただ……寒すぎて、寝てしまいそうだから……こうして痛みで……」
『ニンゲンって、面倒くさい生き物なんだな。そこでちょっと待っているといいぞ』
シロちゃんはそう言うと、近くにあった枝や葉っぱを集めて、一つの小さな山のような形に集めた。
「それをどうするの?』
『こうするんだぞ』
「わぁ、口から青い炎が出た!?」
シロちゃんは、思いっきり息を吸い込むと、口から青い炎が出した。そして、その火は集めてくれた枝や葉っぱに燃え移り、小さな焚火が出来た。
『オイラ達は、青い炎を操ることが出来るんだぞ。まあ、今のオイラだと、指先くらいの大きさしか出せないから、威嚇にも使えないへっぽこ炎だけど……』
「全然へっぽこじゃないよ! 凄く暖かい!」
たしかにシロちゃんの炎は、ライター程度の大きさや火力しかない。そんな炎でも、こうして暖が取れてるんだから、自信を持つべきだよ!
「あぁぁぁ……本当に暖かい……」
『だぞぉ……』
炎に怯えているのか、ひっきりなしに襲い掛かってきた動物達が、襲ってこなくなった。
たまに近くを通る動物から、焚き火からなる恐怖心にかられ、あたし達を襲わないという行動を取らせているみたい。
これなら、少しは休めそうだね。アラン様、この焚火の煙を頼りに来てくれると嬉しいんだけど……。
「……ふぅ」
『どうした、溜息すると、幸せが逃げちゃうぞ。可哀想だから、特別にもふらせてやるぞ』
「ありがとう、シロちゃん」
膝の上に乗って丸くなるシロちゃんを撫でながら、目を細める。
……アラン様、会いたいよ。離ればなれになったら、いつも以上にあなたがいないのが寂しいくて、あなたの存在が支えになってたと気づきました。ああ、会いたい。あなたに触れたい。あなたを抱きしめたい。
だから……無事でいてください……。
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