聖女なのに闇魔法が使える事がわかり悪魔の子として婚約破棄をされて国外追放された私、隣国の王子様に助けられたので、恩返しの為に彼の国を救います

ゆうき

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第1話 悪魔の子と呼ばれた聖女

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「フェリシア・バギーニャ! お前との婚約を破棄する! 悪魔の子と結婚など出来るか!」

 城の大広間にやって来て早々に、私の婚約者である、ピエール・ザンギーマ王太子様は、声高々にそう宣言した。

 先程判明した衝撃の事実で頭がいっぱいなせいで、頭が働いていない。なので、ピエール様のお話が全然理解できない。

 どうしてこんなに私が悪魔の子と呼ばれ、婚約者にこんなに酷い態度を取られているのか。

 実は今日、私は十八歳の誕生日を迎えた。そして私は今日、朝一番に儀式を受けて、国の聖女になる予定だった。

 聖女というのは、国の外に蔓延する瘴気というものから、国を守るための結界を張ることが出来る人物。それ以外にも、瘴気の浄化や怪我の治療、防御魔法をかける事もできる。

 この聖女の役目は、今まではお母様が行っていた。何故なら、侯爵貴族であるバギーニャ家は、代々聖女しか使えない光魔法が使える家系で、聖女として国の繁栄に関わってきたからだ。

 そんなお母様も高齢で、聖女を続けるのが大変になってきたから、私が次の聖女になって、国の困っている人を助けたい――その一心で、幼い頃から沢山の勉強や、光魔法の練習をした。

 その努力が今日、ようやく実る。そう思って儀式を受けたんだけど……儀式の際に、私は聖女として必要な光の魔力以外にも、闇の魔力を持っている事が判明した。

 闇の魔力は、昔から破壊や呪いを司る魔法として忌み嫌われ、使い手を悪魔の子と呼んでいる。私には……なぜかその力があったようだ。

「そんな……た、確かに私には闇の魔力があると言われました。ですが、私は闇魔法なんて使えません! ましてや人を傷つけたり呪ったりなんて、もってのほかです!」
「黙れ! 今はそうかもしれないが、いつかは感情に任せて闇魔法を使うかもしれん! そんな危険人物と結婚なんて出来ない!」
「諦めろフェリシア。これは決定事項だ」

 私の義理の父である男性に、冷たい声色で止められてしまった。

 どうして……どうしてこんな事になってしまったの? 私はただ聖女として、この国や民の助けになりたかっただけなのに……!

「ふん、だが俺としては、正直お前がそんな危険人物でよかった」
「ど、どういう事ですか?」
「俺は真実の愛を見つけてしまったからな。そう……お前の妹である、サリィアとの愛にな!」
「ふふっ! お姉様の代わりに私がピエール様と結婚するの!」

 そう言いながら、ピエール様は妹であるサリィアの肩を抱くと、それに応えるようにサリィアはピエール様の胸に寄り添った。

 サリィアは三つ年下の、私の異父姉妹だ。引っ込み思案で黒髪、見た目もチビで地味で眼鏡をかけている私とは違い、サリィアは社交的で明るい性格、煌びやかな金髪、見た目もスタイル抜群で顔も綺麗と、まさに非の打ちどころがない。

 唯一欠点を上げるとするなら、凄く溺愛されて育ったせいか、とてもワガママだという事だろう。一応サリィアも聖女候補として、聖女になるための勉強をしていたのだけど、勉強なんてしたくないと、いつもワガママを言っていたのを覚えている。

「で、でもこの婚約はバギーニャ家と王家で決めた結婚です! 当人達だけで解消する事は出来ないはずですわ!」
「それなら問題ないわ。もう王家の方との話も済んでいる。向こうも悪魔の子と結婚なんてさせられないと仰ってる」
「お、お母様……!」

 もう済んでいる……? どういう事? 私の闇の魔力の事についてわかったのはさっきなのに……あまりにも話が進むのが早すぎる。

「婚約解消の事はわかっただろう? それと、お前を第一級危険人物として、国外追放をする事が決まった。これは父上も了承済みだ」
「こ、国外追放!?」
「当然だろう。闇の魔力を持っているような人間を国に置いておくわけにはいかない。わかったらさっさと荷物をまとめて出ていけ!」
「…………」

 ピエール様に酷い事を言われても、その場に居合わせていた家族は誰も助けてくれない。それどころか、私を汚物を見るような目で睨んでいる。

「そんな……なら、代わりの聖女は誰が務めるんですか!? お言葉ですが、現状で私よりも勉強をしている聖女はいないかと!」
「もちろん、わ・た・し♪」
「なっ……!?」

 サリィアが……聖女!? 確かにお母様の血を引いてるから、聖女に必要な光の魔力は持っているけど……サリィアは聖女に必要な魔法の勉強をほとんどやっていない。そんなサリィアが聖女なんて出来るはずがない!

「お義父様、お母様! 考え直してください! サリィアには聖女は務まりません! サリィアを聖女にしたら……この国と民が犠牲になります!」
「はぁ? あんた、なに生意気にサリィアの事を貶してるのよ!?」
「このバカ娘が! 大切な大切なサリィアになんて事を……! 顔を見るのも忌々しい! さっさとこの国から出ていけ!」

 どうして……私は国のために、民のために思って発言してるだけなのに……私はいらない子なの? 危険な子なの? 今までずっと頑張ってきたのに……こんなの、あんまりよ……。

「うわっ、泣いて同情を誘おうとしてる~! お姉様なっさけな~い!」
「ははっ、本当だな! こんな陰湿な女よりも、明るくて美人なお前と結婚できるなんて、本当に幸せだ!」

 いくら反論しても無駄だろう。もう私に残された道は、この国を出ていく道しかない。聖女としてではなく、悪魔の子として……。

「うっ……ううっ……」

 大広間を後にした私は、涙を流しながら廊下をとぼとぼ歩いていると、突然城を守る兵士に道を塞がれてしまった。

「え……な、なんのご用でしょうか」
「フェリシア殿、あなたを拘束させていただく」
「こ、拘束!? きゃあ!」

 いつの間にか背後にもいた兵士に捕まってしまった私は、何とか振りほどこうと暴れたけど……多勢に無勢。両手足を縛られ、猿ぐつわで喋れなくされてしまった私は、そのまま外にあった馬車の荷台に放り込まれてしまった。

「相手は悪魔の子だ。何をしてくるかわからん。十分に警戒をしておけ」
「はっ!」
「むーっ! むーーっ!!」

 荷台の中で、必死に声を出そうとしたり暴れてみたけれど、何をしても無駄だった。その間に馬車はガタガタと揺れながら、私を乗せて何処かへ向かっていく。

 ――どれほど揺られただろう? 急に馬車は止まると、私は乱暴に拘束を解かれ、そのまま馬車から放り出されてしまった。

「悪魔の子め! ここで朽ち果てろ!」
「あっ……待って……!」

 私の制止も虚しく、馬車は颯爽とその場を去っていく。

 うぅ……丸腰の状態なのに、これからどうやって生きていけばいいの……? それに、一体どこに連れて来られたんだろう?

 そう思いながら辺りを確認すると、そこは紫色の霧に覆われた、酷く荒れた荒野だった――
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