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第一話 落ちこぼれの姉と優秀な妹
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「相変わらず君の話は面白くて、とても楽しいものだ」
「それは光栄ですわ!」
春の陽気を感じる日差しの下、一人で街の図書館から屋敷に帰ってきた私――アメリアを、二人の男女の話し声が出迎えた。
どうやら中庭で話しているようだ。私の自室に行くには、中庭を通る必要がある。だから、否が応でもその光景が目に入る。すると、予想通り二人の男女が座って、お茶を楽しみながら談笑していた。
「あら、お姉様じゃない!」
「…………」
私のことを見つけた双子の妹のシャーロットが、作り笑いを浮かべながら、私の元へとやってきた。
シャーロットは私と同じ金色で、肩ぐらいまで伸ばしてる私よりも長く伸ばした髪をなびかせながら、少し吊り目の青い瞳で、私を見下すように見つめる。
そして、その隣にいた男性――セシル様が、やや長めな黒髪を耳にかけながら、優雅に紅茶を飲んでいた。
「護衛も付けずに、どこに行ってたの?」
「街の図書館よ」
「わざわざ図書館へ? そんな金のない庶民の使う施設なんか行かないで、我が家の書庫を使えばいいのに。あ、そういえばお姉様は書庫を使うのを、随分と前に禁じられていたね」
私のことを馬鹿にするシャーロットは、実の双子の妹ではあるが、私のことを完全に見下すような態度を取る。今のも日常の範疇の一言だ。
「ごきげんよう、アメリア」
「ごきげんよう、セシル様」
「ちょっとお姉様! あたしの大切な婚約者に色目を使わないでほしいんだけど!」
別にそんな目で見た覚えはないのだけど、シャーロットにはそう見えたようで、セシル様の傍まで行き、その腕に抱きついた。
こんなことを言っているが、セシル様は元々は私の婚約者だ。でも……数年前に私に婚約破棄を突き付けた後、シャーロットの婚約者となった。今では私のことなど、ただの知人としか見ていない。
どうしてそんなことになったのか。その理由は、シャーロットの嫌がらせによるものだ。
私とシャーロットは、男爵の爵位を持つスフォルツィ家に生まれ、将来は身分の高い男性と結婚をして、スフォルツィ家の繁栄に貢献するように言われて育った。
スフォルツィ家――特にお母様が地位や権力といったものに強く固執しているからこそ、私達をそのように育てた。幼い頃は知らなかったけどね。
毎日勉学に励み、魔法の訓練を行う日々。私もシャーロットも、両親の期待に応えるために頑張った。
しかし、その頑張りが報われたのは、シャーロットだけだった。シャーロットは、私の何倍も早く勉強も魔法も覚えた。それも、そこらの高名な学者や魔法使いにも引けを取らない成長した。その結果、多くの人に一目置かれる存在となった。
一方の私は、学力の伸びは平均以下、魔法の才能に至っては本当に悲惨だ。特に魔法の強さに直結する魔力が極端に弱く、火の魔法を使ってもマッチ程度の火力しか出ず、水の魔法は雨水ほどの大きさを出す程度しか出来ない。
それでも私は腐らずに、家のために努力を続けた。少しでも素敵な女性になれるように明るく振舞い、困っている人がいたら助けるようにしていた。
そんな私のことがシャーロットは気に入らなかったのか、嫌がらせをし始めた。
私の私物を盗ったり、両親に私がしていないことをでっちあげて悪者にしたり、裏で根回しをして私の評判を落としたり……言い出したらキリがない。
その嫌がらせを極めたものが、私とセシル様との関係だ。
三年前、私が十三歳の時に、社交界でランディス侯爵家の長男である、セシル様に気に入られた。
その時のセシル様は、私の容姿や明るい性格、そして努力家な所が気に入ったと仰っていた。
それをシャーロットが聞いて、自分はまだ婚約者がいないのに、お姉様だけズルいと駄々をこねた。
その後、お得意の根回しで私のありもしない悪いところや出来事を、セシル様に吹き込んだ。
更に付け加えると、自分の方が私よりも優れていることを沢山吹き込んだ。
……どうして知っているかって? セシル様から婚約破棄を突き付けられた時に、直接言われたの。吹き込んでいる場面も何度か見たことがあるしね。
そうしてすっかりシャーロットのことを信じ込み、私に対する評価が著しく下がった結果、婚約破棄をすると、シャーロットと婚約を結んだ。
私よりも勉強も魔法も優秀で、見た目も美しく、侯爵家の長男と婚約をしたシャーロットは、両親に大層喜ばれ、溺愛されるようになった。私達に注いでいた愛情の全てを、シャーロットだけに注がれるようになったのよ。
その結果、私は両親に見放され、この家にとって、いない人間として扱われるようになった。
挨拶をしても誰も返事を返さないし、着替えや食事の用意も、自分でしなければならなくなった。シャーロットとお母様だけは、私を目の敵にして日々罵声を浴びせたり、嫌味を言ってくるけど。
唯一の救いは、自室はそのまま使えている点だ。正当な理由もなく私を屋敷から追い出し、家の評判が落ちるのを恐れているからだと、私は思っている。
そんな扱いをされるようになったら……なんていうか、昔のような明るくてみんなに愛されるような、素敵な女性を目指すのが馬鹿らしくなった。
今ではすっかり大人しくなって笑わなくなったし、何かされたり言われても、悲しみとか怒りの感情が湧かなくなった。
「シャーロット。彼女のことは良いから、私と二人きりの時間をもっと楽しもうじゃないか。こうしてゆっくりと二人で茶が飲めるのも、久しぶりなのだから」
「ええ、そうね! あたしに全てで劣る無能と話していたら、時間の無駄だものね! お姉様、わかったらさっさとどこかに行ってくれない?」
「わかったわ。ではセシル様、失礼いたします」
「ああ」
私と視線を合わせず、声だけで返事をしたセシル様は、シャーロットと再び談笑を始める。
ふう、思った以上に早く解放されてよかったわ。変に自慢話でも始まってたら、無駄な時間を過ごすところだった。
それにしても、今日もシャーロットは自尊心の塊だったわね。勉強や魔法に関しては、確かに私よりも凄い……というか、私の魔法の才能が低すぎるっていうのもあるけど、双子というだけあって、顔はそこまで変わらないのに。
外見で違う所と言ったら、私はシャーロットと比べてやや目が丸くて大きく、髪は私の方が短くて少しフワッとしている。あとは身長が私の方が少し小さい。その程度の違いだ。
「…………」
誰もいない自室に戻り、手に持っていた本を机の上に置いてから、荷物の中から一枚の栞を取り出す。
「もう、あの時のようなことは起こさない……絶対に」
栞を胸元に持っていき、ボソッと小さく呟く。私の声は、一人で過ごすには広すぎる部屋の中に消えていった。
こんな酷い扱いを受け続ける生活だが、これでも私には目標というか……なりたいものがある。そのために、私は屋敷から少し離れた町にある図書館に一人で行き、勉強をしてきたの。
さて、図書館で必要は本は借りられたし、あとはここで静かに勉強をしていよう。さすがにシャーロットやお母様でも、部屋で大人しくしているところに、わざわざ話しかけてくることは……無いとは言えないけど、可能性は低い。
とはいえ、明日で春休みが終わり、新学期が始まる。勉強に集中しすぎて、また夜更かしをしないように気を付けないといけないわね。
「それは光栄ですわ!」
春の陽気を感じる日差しの下、一人で街の図書館から屋敷に帰ってきた私――アメリアを、二人の男女の話し声が出迎えた。
どうやら中庭で話しているようだ。私の自室に行くには、中庭を通る必要がある。だから、否が応でもその光景が目に入る。すると、予想通り二人の男女が座って、お茶を楽しみながら談笑していた。
「あら、お姉様じゃない!」
「…………」
私のことを見つけた双子の妹のシャーロットが、作り笑いを浮かべながら、私の元へとやってきた。
シャーロットは私と同じ金色で、肩ぐらいまで伸ばしてる私よりも長く伸ばした髪をなびかせながら、少し吊り目の青い瞳で、私を見下すように見つめる。
そして、その隣にいた男性――セシル様が、やや長めな黒髪を耳にかけながら、優雅に紅茶を飲んでいた。
「護衛も付けずに、どこに行ってたの?」
「街の図書館よ」
「わざわざ図書館へ? そんな金のない庶民の使う施設なんか行かないで、我が家の書庫を使えばいいのに。あ、そういえばお姉様は書庫を使うのを、随分と前に禁じられていたね」
私のことを馬鹿にするシャーロットは、実の双子の妹ではあるが、私のことを完全に見下すような態度を取る。今のも日常の範疇の一言だ。
「ごきげんよう、アメリア」
「ごきげんよう、セシル様」
「ちょっとお姉様! あたしの大切な婚約者に色目を使わないでほしいんだけど!」
別にそんな目で見た覚えはないのだけど、シャーロットにはそう見えたようで、セシル様の傍まで行き、その腕に抱きついた。
こんなことを言っているが、セシル様は元々は私の婚約者だ。でも……数年前に私に婚約破棄を突き付けた後、シャーロットの婚約者となった。今では私のことなど、ただの知人としか見ていない。
どうしてそんなことになったのか。その理由は、シャーロットの嫌がらせによるものだ。
私とシャーロットは、男爵の爵位を持つスフォルツィ家に生まれ、将来は身分の高い男性と結婚をして、スフォルツィ家の繁栄に貢献するように言われて育った。
スフォルツィ家――特にお母様が地位や権力といったものに強く固執しているからこそ、私達をそのように育てた。幼い頃は知らなかったけどね。
毎日勉学に励み、魔法の訓練を行う日々。私もシャーロットも、両親の期待に応えるために頑張った。
しかし、その頑張りが報われたのは、シャーロットだけだった。シャーロットは、私の何倍も早く勉強も魔法も覚えた。それも、そこらの高名な学者や魔法使いにも引けを取らない成長した。その結果、多くの人に一目置かれる存在となった。
一方の私は、学力の伸びは平均以下、魔法の才能に至っては本当に悲惨だ。特に魔法の強さに直結する魔力が極端に弱く、火の魔法を使ってもマッチ程度の火力しか出ず、水の魔法は雨水ほどの大きさを出す程度しか出来ない。
それでも私は腐らずに、家のために努力を続けた。少しでも素敵な女性になれるように明るく振舞い、困っている人がいたら助けるようにしていた。
そんな私のことがシャーロットは気に入らなかったのか、嫌がらせをし始めた。
私の私物を盗ったり、両親に私がしていないことをでっちあげて悪者にしたり、裏で根回しをして私の評判を落としたり……言い出したらキリがない。
その嫌がらせを極めたものが、私とセシル様との関係だ。
三年前、私が十三歳の時に、社交界でランディス侯爵家の長男である、セシル様に気に入られた。
その時のセシル様は、私の容姿や明るい性格、そして努力家な所が気に入ったと仰っていた。
それをシャーロットが聞いて、自分はまだ婚約者がいないのに、お姉様だけズルいと駄々をこねた。
その後、お得意の根回しで私のありもしない悪いところや出来事を、セシル様に吹き込んだ。
更に付け加えると、自分の方が私よりも優れていることを沢山吹き込んだ。
……どうして知っているかって? セシル様から婚約破棄を突き付けられた時に、直接言われたの。吹き込んでいる場面も何度か見たことがあるしね。
そうしてすっかりシャーロットのことを信じ込み、私に対する評価が著しく下がった結果、婚約破棄をすると、シャーロットと婚約を結んだ。
私よりも勉強も魔法も優秀で、見た目も美しく、侯爵家の長男と婚約をしたシャーロットは、両親に大層喜ばれ、溺愛されるようになった。私達に注いでいた愛情の全てを、シャーロットだけに注がれるようになったのよ。
その結果、私は両親に見放され、この家にとって、いない人間として扱われるようになった。
挨拶をしても誰も返事を返さないし、着替えや食事の用意も、自分でしなければならなくなった。シャーロットとお母様だけは、私を目の敵にして日々罵声を浴びせたり、嫌味を言ってくるけど。
唯一の救いは、自室はそのまま使えている点だ。正当な理由もなく私を屋敷から追い出し、家の評判が落ちるのを恐れているからだと、私は思っている。
そんな扱いをされるようになったら……なんていうか、昔のような明るくてみんなに愛されるような、素敵な女性を目指すのが馬鹿らしくなった。
今ではすっかり大人しくなって笑わなくなったし、何かされたり言われても、悲しみとか怒りの感情が湧かなくなった。
「シャーロット。彼女のことは良いから、私と二人きりの時間をもっと楽しもうじゃないか。こうしてゆっくりと二人で茶が飲めるのも、久しぶりなのだから」
「ええ、そうね! あたしに全てで劣る無能と話していたら、時間の無駄だものね! お姉様、わかったらさっさとどこかに行ってくれない?」
「わかったわ。ではセシル様、失礼いたします」
「ああ」
私と視線を合わせず、声だけで返事をしたセシル様は、シャーロットと再び談笑を始める。
ふう、思った以上に早く解放されてよかったわ。変に自慢話でも始まってたら、無駄な時間を過ごすところだった。
それにしても、今日もシャーロットは自尊心の塊だったわね。勉強や魔法に関しては、確かに私よりも凄い……というか、私の魔法の才能が低すぎるっていうのもあるけど、双子というだけあって、顔はそこまで変わらないのに。
外見で違う所と言ったら、私はシャーロットと比べてやや目が丸くて大きく、髪は私の方が短くて少しフワッとしている。あとは身長が私の方が少し小さい。その程度の違いだ。
「…………」
誰もいない自室に戻り、手に持っていた本を机の上に置いてから、荷物の中から一枚の栞を取り出す。
「もう、あの時のようなことは起こさない……絶対に」
栞を胸元に持っていき、ボソッと小さく呟く。私の声は、一人で過ごすには広すぎる部屋の中に消えていった。
こんな酷い扱いを受け続ける生活だが、これでも私には目標というか……なりたいものがある。そのために、私は屋敷から少し離れた町にある図書館に一人で行き、勉強をしてきたの。
さて、図書館で必要は本は借りられたし、あとはここで静かに勉強をしていよう。さすがにシャーロットやお母様でも、部屋で大人しくしているところに、わざわざ話しかけてくることは……無いとは言えないけど、可能性は低い。
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