【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき

文字の大きさ
12 / 74

第十二話 実技試験

しおりを挟む
「ふへぇ……」

 試験の全ての教科が無事に終了したことへの安心感で、ぐったりとしながら、変な声を漏らしてしまった。

 日頃の勉強と、エルヴィン様が毎日教えてくれたおかげで、筆記試験はすごく手ごたえがあった。自信たっぷりと言っても過言ではない。

 ……これだけで終われば、もしかしたら特待生になれるかもと思えるのだけど……この後は、魔法の実技試験が行われる。

 事前にエルヴィン様から聞いた話だと、例年通りなら試験官からランダムに提示された魔法を、順番通りに使っていくそうだ。

 結局私は、練習の時は一度もまともに魔法を成功させたことがないけど……たくさん練習したんだから、本番ではじめて成功するかもしれない!

 なんて……ほとんど願望に近い気持ちで、自分を鼓舞している。

「ではこれより、魔法の実技試験を行いますので、場所を移動します。試験番号順に並んで、私についてきてください」

 試験番号が若い廊下側の生徒から順番に教室を後にし、実技試験の会場へと移動する。

 連れてこられた先は、校舎の地下に広がる魔法の練習施設だった。

「これより、魔法の実技試験を始めます。ここに試験用の小練習場が五つ用意されています。ランダムな順番で呼びますので、試験官の指示通りに魔法を使ってください。質問があれば、中の試験官に聞くように」

 呼ばれた番号の中には、私の番号が含まれていた。私は、緊張でバクバクしている胸を抑えながら、小試験場の中に入った。

 中はがらんとした広い空間に、大の大人が寝転んだくらいの直径の魔法陣が、一つあるだけの部屋に、若い男性の試験官が一人いるだけだった。

「受験票を拝見いたします」

「は、はひ」

「アイリーンさんですね。緊張せず、いつも通りに魔法を使ってください」

 どうやら、私が酷く緊張しているのが伝わってしまったようだ。
 実際に、筆記試験なんて比べ物にならないくらい、私は緊張してしまっている。お昼に食べたママお手製のお弁当が、全部出てしまいそうなくらいだ。

「では、その魔法陣の真ん中に立ってください」

 言われた通りに魔法陣の真ん中に立つと、魔法陣がぼんやりと白く光り始める。それから間もなく、少し離れた何もないところから、薪が十本現れた。

「では炎の魔法を使い、薪を燃やしてください。炎の魔法なら、種類は問いませんが、時間がかかりすぎたり、薪が燃えなかったら減点です。一瞬で燃えカスにしてしまった場合も減点になります」

 弱すぎてもダメで、強すぎてもダメ……きっと魔力のコントロールを見る試験なんだと思う。

「きっと出来る、きっと出来る……!!」

 魔力を一点に集中させ、薪に向かって放つ。すると、薪の下に小さな魔法陣が現れて……端っこに指先程度の小さな火が付いた。

「……へっ?」

「あ、あの……今のは違くて……」

 あまりにも弱すぎる私の魔法に目を丸くさせる試験官、そしてあまりにも酷い結果に動揺する私というこの空間に、とてつもない気まずい空気が流れ始めた。

 や、やっぱり全然うまくいかない……どうして私は、こんなに魔法が使えないの?

「で、では次にうつります」

「はい……」

 こほんっと咳払いをしてから次のお題が出されるも、うまくいかず……結局その後も、一度も魔法は成功することなく、自分の無力感に苛まれるだけの時間を過ごした。

 こんなんじゃ、絶対に受かるはずが無い……あれだけエルヴィン様に協力してもらって、パパとママに応援してもらったのに……あはは……私、本当にダメダメだ……うぅ……。

「……アイリーンさん、お疲れ様でした。これにて本日の試験の全てを終了しました。後日、結果をご自宅にお送りします」

「わかり……まし、た……」

 話している内容なんて、ほとんど理解しないまま、私は試験会場を後にした。
 道中で、私のことをじろじろと見ている人がいたみたいだけど、そんなものは一切目に入らないくらい、私は落ち込んでいた。

「みんなに……謝らないと……」

 学園を出てとぼとぼと歩いていると、見覚えのある馬車を見かけた。その中から、今一番会いたくて、一番会いたくない人が飛び出してきた。

「アイリーン、試験お疲れさ――どうしたんだい、顔が真っ青じゃないか!」

「エルヴィン様……迎えに来てくれたんですか? ありがとうございます」

 変に心配をかけないように、わざと明るく振る舞って誤魔化す。
 少しでも油断をしたら、涙が零れてしまいそうだから、なんとか耐えないといけない。

「エルヴィン様のおかげで、試験はとても順調に終わりました。これなら、もしかしたら合格の可能性があるかもしれません」

「そうか、それはとてもめでたいな」

「そうでしょう? だから、一緒に喜んでください」

「それなら、どうしてそんな悲しそうに泣いているんだい?」

「えっ……?」

 自分でも気付かないうちに、私の頬に一筋の雫が流れていた。

 それからは、もう我慢できなかった。止めようと必死に自分に言い聞かせても、涙を止めることが出来なかった。

「私……嘘、つきました……実技試験、全然ダメで……試験官の人も驚くほどダメダメで……私、わたしぃ……みんなにおうえん……してもらったのにぃ……!」

「アイリーン……」

 エルヴィン様は、泣きじゃくる私の手を引いて馬車の中に乗せると、そのまま私のことを優しく抱きしめてくれた。

 それが嬉しくて、悲しくて、申し訳なくて……私は泣き疲れて眠ってしまうまで、エルヴィン様の腕の中で泣き続けた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

政略結婚だなんて、聖女さまは認めません。

りつ
恋愛
 聖女メイベルは婚約者である第一王子のサイラスから、他に好きな相手がいるからお前とは結婚できないと打ち明けられ、式の一週間前に婚約を解消することとなった。代わりの相手をいろいろ紹介されるものの、その相手にも婚約者がいて……結局教会から女好きで有名なアクロイド公爵のもとへ強引に嫁がされることとなった。だが公爵の屋敷へ行く途中、今度は賊に襲われかける。踏んだり蹴ったりのメイベルを救ったのが、辺境伯であるハウエル・リーランドという男であった。彼はアクロイド公爵の代わりに自分と結婚するよう言い出して……

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...