【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき

文字の大きさ
52 / 74

第五十二話 努力のお披露目

しおりを挟む
「むむ~っ……はっ!」

 ついに来てしまった、夏休み最終日。私は、研究室の外にある、仮の魔法訓練場で、的に向かって魔法を放つ。
 すると、拳ほどの大きさの氷塊が魔法陣から発射され、的の真ん中に命中した。

 それだけではなく、次は炎の魔法で火球を作ってぶつけたり、小さな雷雲を作って稲妻を落としたり、風の刃で的を切ったりと、色々な魔法を使った。それも……連続で。

「凄いじゃないか、アイリーン! 今日は水晶に魔力を込めなくても、魔法が使えたじゃないか!」

「はぁ……はぁ……私、出来たの……?」

「出来てましたよ! わたしも、この目でしっかりと見ましたっ!」

 そっか、私……ついに魔法が使えるようになったんだ……!

 こんなの初歩も良いところだって言われるかもしれないけど、私にとってこの一歩は、あまりにも大きな一歩だ。

「ほう、ちったぁ様になったじゃねえか」

「ヴァーレシア先生! 先生のおかげで、こんなに出来るようになりました!」

「んじゃ、報酬にお前ら三人、一生俺の助手な」

「え、えぇ~!?」

「そ、そんなぁ……ふえぇ……」

「……いや、悪かったよ。まさかそんなに冗談を真に受けると思ってなくてよ」

 一生なんてと思ったけど、ヴァーレシア先生には恩があるから断りにくいし……って考えていたのに、まさかの冗談だったの!? もう、ヴァーレシア先生ったら!

「わかってると思うが、お前の魔法はまだ初歩だ。上級魔法になれば、勝手は変わってくるし、魔力の使う量も変わってくる。まだ未熟なお前には、相当厳しいだろうよ」

「それでも諦めません。今回みたいに、諦めなければきっと報われるって信じてますから!」

「それに、どんな時でも僕達がサポートしますから、彼女は大丈夫ですよ」

「わ、わたし達にお任せください……!」

「わかったわかった、熱血友情ごっこは、年寄りには眩しすぎんだよ。とにかく、今日限りで臨時のヴァーレシア魔法学園は閉校だ。わかったら、とっとと帰りな」

 ヴァーレシア先生は、お礼を言う前に研究室の中に戻ると、そのまま鍵をかけてしまった。

 もっとちゃんとお礼をしたかったんだけど……これじゃあ言えないよ。今度日を改めてお礼をしよう。

「さて、今日は夏休みの最終日だ。せっかくだし、今日一日は遊ばないかい?」

「大賛成です! ソーニャちゃんも行こっ!」

「で、でも……お二人のデートのお邪魔になっちゃうので……」

「ででで、デートじゃないからね! そうですよね、エルヴィン様!」

「まあ、今はそういうことで良いかな。とはいっても、どんな状況になっても、僕もアイリーンも、君を邪険に扱うことはしないよ。だから……どうかな?」

「それなら……一緒に遊びた――あっ!!」

 ソーニャちゃんにしては珍しく、大きな声を旧校舎の周りに響かせた。

「宿題、何も手を付けてません!!」

「あーっ!!」

 しまったぁ! 魔法の練習ばかりに気を取られて、宿題のことをすっかり忘れてたよ! これじゃあ遊びにいけないよ!

「それじゃあ、今日は宿題デ―ということにしようか。どこでやろうか?」

 うーん、夏休みの最終日ということもあって、図書館は人が多そうだよね。そうなると……私の家が一番良いかな? 良くも悪くも人里から少し離れた家だから、静かで邪魔が入らないだろうし。

「私の家でやりませんか?」

「わ、わたしは賛成です」

「僕も異論ないよ。それじゃあ、一旦戻って宿題を回収して、アイリーンの家に集合だ」

 今後の方針が決まった私達は、各々の家に帰っていく。

 家で誰かと勉強をするのは初めてじゃないけど、三人そろって家で勉強は初めてだから、なんだか楽しみだなぁ。


 ****


 無事に家に集まった私達は、たまっている宿題を片っ端から片付けていく。

 幸いにも、私やエルヴィン様は、学力に関しては困っていないので、割と早くに片付けることが出来た。
 ついでにって言い方はあまり良くないかもしれないけど、同時にソーニャちゃんに勉強を教えられて、一石二鳥だね

「これで……お、おしまいです……!」

「ソーニャちゃん、お疲れ様~!」

「ひゃん!? えへへ、アイリーンさんもお疲れ様でした」

 解放された喜びを爆発させた私は、ソーニャちゃんに勢いよくハグをすると、互いの尻尾を絡めた。

 ソーニャちゃん相手には出来るのに、エルヴィン様が相手になると、とたんに体が動かなくなってしまう。

 本当は、もっと抱きついたり、くっついたり、その……キ……って、きゃぁぁぁぁ! 何考えてるの私ー!? そんなの、は……ハレンチだよっ!!

「おう、終わったか! 今日は色々獲物を狩ってきたから、近くでバーベキューしようぜ!」

「わあ! パパ、それ凄く良いアイディアだよ! 二人共、一緒に食べましょうよ!」

「夏らしくて素晴らしいね。お義父様、素晴らしいお気遣い、誠に感謝いたします」

「お肉、おいしそう……じゅるり」

「ソーニャちゃん、よだれよだれ!」

「はっ!? ごご、ごめんなさい!」

 各々の反応をしつつ、私はみんなと一緒に家を出て、近くにある開けた場所でバーベキューの準備を始める。

 こういうのは何度もしたことがあるから、専用の機材が無くても、その辺りにある石や植物でどうにかできるんだ。

「パパは獲物の解体、ママとソーニャちゃんは調理、私とエルヴィン様は焼き係をやりましょう!」

 私の咄嗟の指示に不服は無かったみたいで、みんな各々の作業に入る。

 こういう時って、誰かがささっと指揮してあげた方が効率が上がるんだぜ! ガハハ! って、まだ小さかった頃に、パパが教えてくれたんだ。

「あーらよっと!」

「お義父様は、随分と手馴れていらっしゃるのですね。捌く手が全然見ませんでした。うちのシェフも顔負けの腕です」

「貴族様の料理人とタメ張れるとは、光栄だな! どうだ、お前さんもやってみないか?」

「あはは、それはまたの機会に」

 断るエルヴィン様の表情が、珍しく強張っている。
 元々、こういう自然の物に触れたことがない人なんだから、生き物の解体なんてハードルが高すぎるよね。私もお魚くらいしか捌けないし。

「ソーニャちゃん、パパから受け取ったお肉に、こうやって塩と胡椒を振って、串にさしてちょうだい」

「こ、こんな感じでいいですか?」

「ええ、とっても上手よ。焼くのは二人に任せて、私達はどんどん準備をしましょう」

 こっちもこっちで、料理に手馴れている二人だから、お肉や魚、野菜の準備も手早い。あっという間に、焼き係の私達の元に食材が集まってきた。

「そろそろ焼き始めましょうか。エルヴィン様、火をお願いできますか?」

「いや、せっかくだから、僕よりも君がやる方がいいよ。ご両親に、成長を見てもらおう」

「エルヴィン様……はい、わかりました!」

 私は薪の前に立つと、ゆっくりと魔力を集中させはじめる。その様子を、パパもママも真剣な表情で見てくれていた。

 私がこんなに大きくなるまで、ずっと面倒をみてくれた二人に、自分の成長を見せたい。そのためにも、この成功を成長の第一歩とする。

 ……そう思ったのに、発動した魔法の火力が大きすぎて、薪は一瞬にして灰になってしまった。

「あ、あれ……? そんな……」

 うぅ、パパとママに良いところを見せようとしたら、思い切り失敗しちゃった……なにも、今失敗しなくてもいいのに。

「おお、アイリーンの魔法で、こんなに威力が強いのは初めてみたぞ!?」

「本当ね。アイリーンの頑張りの成果だわ。私達も鼻が高いわ」

「パパ……ママ……もう一回見てて。今度こそ成功させるから!」

 落ち込んでいた私の心を、二人の暖かい言葉が癒してくれた。

 失敗したというのに褒めてくれた両親に、今度こそ……今度こそ成長を見せるために、意識を集中して魔法を発動すると、ちょうど良い火力の炎が薪を燃やし始めた。

「やった、出来たよ! 見ててくれた!?」

「おう、見てたぜ! ちゃんと、見てたぜ……ぐすっ、あの小さかったアイリーンが、こんなに成長するなんてなぁ……感動だぜ……!」

「もう、パパ。大の大人が、お客さんの前で泣くなんてみっともないわよ」

 注意するママの目じりにも、キラリと輝くものがあったのを、私は見逃さなかった。

 まだまだ初級の魔法でも、こんなに喜んでくれるなんて、嬉しくて私も泣いちゃいそうだ。

「うぅ、わたしまで感動して泣けてきちゃいますぅ……」

「まったくだ。よかったね、アイリーン」

「はい……はいっ!」

 こんなに喜んでもらえただけでも、頑張って練習してきた甲斐があった。

 もちろん、ここで満足なんてするつもりは無い。あくまで私の目標は、凄い魔法使いになって、宮廷魔術師になること。こんなところで、立ち止まってはいられない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

政略結婚だなんて、聖女さまは認めません。

りつ
恋愛
 聖女メイベルは婚約者である第一王子のサイラスから、他に好きな相手がいるからお前とは結婚できないと打ち明けられ、式の一週間前に婚約を解消することとなった。代わりの相手をいろいろ紹介されるものの、その相手にも婚約者がいて……結局教会から女好きで有名なアクロイド公爵のもとへ強引に嫁がされることとなった。だが公爵の屋敷へ行く途中、今度は賊に襲われかける。踏んだり蹴ったりのメイベルを救ったのが、辺境伯であるハウエル・リーランドという男であった。彼はアクロイド公爵の代わりに自分と結婚するよう言い出して……

【完結】愛人の子を育てろと言われた契約結婚の伯爵夫人、幼なじみに溺愛されて成り上がり、夫を追い出します

深山きらら
恋愛
政略結婚でレンフォード伯爵家に嫁いだセシリア。しかし初夜、夫のルパートから「君を愛するつもりはない」と告げられる。さらに義母から残酷な命令が。「愛人ロザリンドの子を、あなたの子として育てなさい」。屈辱に耐える日々の中、偶然再会した幼なじみの商人リオンが、セシリアの才能を信じて事業を支援してくれる。

処理中です...