継母の策略で婚約者から婚約破棄と追放をされた私、奴隷にされそうだったので逃げてたら救ってくれた吸血鬼の騎士様に何故か唇を奪われました

ゆうき

文字の大きさ
32 / 35

第三十二話 再会

しおりを挟む
「誰だ貴様は! 何故玉座の間にいる!?」
「誰だとはご挨拶ですわね。もう私の顔をお忘れになったのですか?」

 再会して早々に声を荒げるお義母様に見せつけるように、私はフードを取ってみせると、その場にいた全員が目を丸くしておりました。

 それも仕方がないかもしれません。先程再会した彼の話から察するに、私は行方不明扱いをされていたのです。きっと彼女達の中では、私は死んだと思っていたのでしょう。

「マシェリー様、ご無事でなによりです……!」
「お久しぶりです、ノア様。ご心配をおかけして、申し訳ございません。手紙、読ませてもらいましたわ」

 とても嬉しそうな顔を綻ばせるノア様とは対照的に、お義母様は苦虫を噛み潰したような顔で、私を睨んでおられました。

「ふざけるな……!なぜ生きている、マシェリー!」
「ええ。カイン様やモコ、エルピス国の沢山の方々に支えていただいたおかげで。それにしても妙ですわね? どうして私が亡くなってるのが前提みたいな発言をされたのですか?」
「黙れ! はっ、まさか……この騒ぎは……!」
「はい。お義母様達を止めて、国と民達を救う為に、エルピス国から馳せ参じました」
「生意気な……貴様ら、何をしている! その女を殺してしまえ!」

 お義母様が、玉座の間で警備をしていた兵士達に大声で命令しますが、彼らは動揺してしまい、動けずにいました。

 彼らは王家に仕える兵士。そんな彼らが元王族の私を殺せと言われたら、誰でも動揺してしまうでしょう。

「早くしなさい! 私に逆らうというなら、家族共々死刑にするわよ!」
「っ……!! マシェリー様、申し訳ございません!!」
「なるほど、これは想像以上に最低な事をしているものだね」

 嫌々斬りかかる兵士達の剣を、自分の剣であっさり受けて止めたカイン様は、先程と同じ光を生み出し、兵士達を包み込みました。

「え、なんだ……これ、は……?」
「心配無い、少し眠るだけだよ。彼女達は俺とマシェリーが必ずなんとかする。だからあなた達は、少し休んでてくれ」
「うっ……マシェリー様……刃を向けた、不敬を……お許し……」
「いいのです。家族の為に行動出来たあなた方を、私は誇りに思いますわ。大丈夫、後は私達に任せてくださいませ」

 その言葉を最後に、兵士達は全員眠りについてしまいました。

 彼らの苦しみと、深い悲しみを断ち切る為にも、私は絶対に目的を達成して見せますわ。

「え、今のなに!? すっごーい! あれ魔法だよね? という事は人間じゃないの!? お母様、あれ欲しい! ねえ、あたしのものになってよぉ」
「お誘いいただき光栄でございます、コルエ殿。しかし俺には、マシェリーという心に決めた女性がおりますので」

 ニコニコしながら、少し甘えたような声を出すコルエでしたが、カイン様に一蹴された事で、僅かに表情が強張りました。

「は? お姉様のどこが良いわけ? 流石に悪趣味すぎるからやめときなって! あたしみたいな、世界一美しい女にした方がいいって!」
「そうですか。俺はあなたの方が悪趣味で、心が汚れきっていて、世界一醜く見えますが。一方のマシェリーは、とても心が綺麗で、世界一美しい」

 お二人共、完全に言葉で殴り合っておりますわ……まさに水と油と言いますか……この方達は、未来永劫わかり合えないというのが見て取れますわね。

「コルエ、少しおとなしくしてなさい! まったく、外のバケモノだけでも面倒なのに、まさか他のバケモノにまで接近を許すなんて、兵士はなにをしているの!」

 顔を歪め、頭を掻きむしるお義母様は、まるでヒステリックを起こしたみたいになってますわ。今のうちに、作戦の要を準備しておきましょう。

 えっと、ポケットの中に……ありましたわ。これを軽く三回叩けば……よし、これで良いですわ。

 さあ、始めましょう。上手くいきますように……!

「お義母様。あなたはグロース国の民に、重い税を課しているそうですわね。私、マシェリーは存じておりますわよ」
「どうしてそんな事を知っている?」
「私があなたに答える義理はありません。それと、あなたやコルエのワガママで、民が苦しんでいる事も存じています」

 そう言ってから、私は屋敷の使用人達が集めてきてくれた、民への税金の詳細や、お義母様とコルエが豪遊したものの明細表、そして、両親の毒殺の件の書類も取り出しました。

「馬鹿な、何故これほどの情報が流れている!?」
「私がやりました。イザベラ様の独裁から民を助ける為に。傲慢なあなたらしいと言いますか……まとめるのは几帳面な割に、管理が杜撰《ずさん》だったので、随分と短期間で集まりました」
「なっ……!? まさか、裏切ったの!?」
「裏切る? 僕に嘘を伝え、マシェリー様と婚約破棄をさせるように仕向けたのを、もうお忘れですか? 僕はもう全てを知ってます」

 手紙を読んだ時から感じておりましたが、今ので確信しました。ノア様は、完全に私達の味方になってくれたのですね。これはとても心強いですわ。

「陛下、ご報告いたします! って……ま、マシェリー様!?」
「良い所に来たわ! こいつら、侵入者よ! さっさと殺してしまいなさい!」

 玉座の間に飛び込んできた兵士達に、お義母様は再び命令を下します。しかし、先程の方達と同様に、この方達も動揺してしまい、動けずにいました。

「何をしているの!? 共倒れになってでもいいから殺せ!」
「一度ならず、二度までも……! 王家とは国と民を第一に考え、皆を幸せにする責務があるというのに、あなたは幸せを奪うどころか、尊い命を利用するというのですか!?」
「民なんて全員私達の物よ。資源も、金も、食料も全部! 周りの国だって、全ては私達の為に存在し、私達の支配下に置かれる為にあるの!」
「その通り! あたし達が命令をしたらその通りにするのが、世界にとって一番の選択なんだから!」
「……ここまで傲慢だと、もはや清々しく思えるな」

 あまりにも横暴な態度を取るお義母様とコルエの姿を見て、私は怒りが頂点に達しそうになっておりました。

 ……心のどこかで、話し合えばわかり合えると思ってました。罪を償って、まだやり直せると。でも……そんな考えは、甘すぎたのですね。

「もう何を言っても無駄なようですね。では……手始めに、国があなた達を受け入れるか、試してみましょうか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...