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第二十六話 暖かい村人たち
屋敷を出発してから一時間ほどで、目的地である村に到着した。
辺りには青々とした草達が風で揺られ、太陽の光でキラキラと輝く川があって……とても穏やかで、美しい風景だ。
「到着だ。ここがアルスター家の領地で一番大きな村……イリチェ村だ」
「とても穏やかで、住みやすそうな村ですわね」
「さて、村の入口で待ち合わせをしているんだが……」
「あ、ブラハルト様!」
ブラハルト様と一緒に村でキョロキョロと辺りを見ていると、村人と思われる老いた男性が、笑顔で私達を出迎えてくれた。
「お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます、ブラハルト様」
「こちらこそ、お出迎えしていただき、ありがとうございます、ダミアン殿。息災そうでなによりです」
最初に出迎えてくれた男性とブラハルト様は、にこやかな笑顔を浮かべながら握手をする。
このお方が、イリチェ村の村長様なのね。とても穏やかで優しそうなお爺様という印象のお方だわ。
「おや、そちらの方が……?」
「はい。妻のエルミーユです」
「はじめまして、ダミアン様。ただいまご紹介にあずかりました、エルミーユと申します。よろしくお願いいたしますわ」
ブラハルト様の紹介が入ったタイミングで、スカートの裾を持ってお辞儀をすると、ダミアン様は嬉しそうに目を細めた。
「はじめまして、エルミーユ様。私はこの村の村長をしております、ダミアンと申します。ブラハルト様が、こんな素敵な方とご結婚なさるなんて、私はとても嬉しいです。立ち話もなんですから、私の家でお話しましょう」
ダミアン様の案内の元、私はゆっくりとイリチェ村の中にあるダミアン様の家へと向かう途中、農家の家の前を通ったら、農作業をしていたご夫婦に声をかけられた。
「あ、ブラハルト様~! ようこそ~! ご結婚、おめでとうございます~!」
「ああ、ありがとうございます!」
「ありがとう存じます」
「ブラハルト様、とても綺麗でお淑やかそうな、素敵な奥様ですね! これ、うちの畑で採れた野菜なんですけど、結婚記念に持っていってください! 奥様、ブラハルト様のことをよろしくお願いしますね! なにかあったら、いつでも相談してください!」
農家の奥様はそう言うと、たくさんの野菜を私たちにプレゼントしてくれた。
そのあまりにも多すぎる野菜達は、心の底からブラハルト様の結婚を祝ってくれているのが伝わってきたわ。
「あ、あはは……凄い量ですね……ありがとうございます。すまない、これを馬車まで運んで置いてもらえるか?」
「かしこまりました。うっ……お、重い……」
いただいた品は、一緒に来てくれた二人の使用人に任せて、ダミアン様の家に向かって再出発をする。
その道中で、農作業をしているお方や、荷台に作物を乗せて移動させているお方、楽しそうに遊ぶ子供達といった、多くの村人達の様子を見ることが出来たわ。
その方々は、ブラハルト様をとても歓迎してくれるだけではなく、私達の結婚を祝ってくれた。
先ほど見た川の輝きにも引けを取らないキラキラと輝く笑顔で、多くの人に挨拶され、歓迎され、祝ってもらえるブラハルト様は、この村の方々に愛されているんだと感じると同時に、自分のことの様に嬉しく思えた。
「ここに住むお方達は、とても優しいお方ばかりなのですね」
「そうだな。アルスター家の領地に住む人達は、みんな優しい人ばかりだ。あんな噂が流れてしまった後でも、今みたいに家族のように、親しく話しかけてくれるんだ」
「ブラハルト様が我々を大切にしてくださるように、我々もブラハルト様を大切にしているのです」
家族……か。なんとなくだけど、ブラハルト様のご両親が突然亡くなっても、悪い噂が流れても、ブラハルト様が領主として頑張れた理由が、少しだけわかったような気がする。
私には、そういう人はずっといなかったから、少し羨ましいわ。
「エルミーユ、そんな悲しそうな顔をする必要は無い。これからは、君もこの家族の一員なのだから」
「えっ?」
「その通りです。 エルミーユ様も、是非この村にいる時は、自分の家のようにおくつろぎください」
「ブラハルト様……ダミアン様……」
あぁ……暖かい。アルスター家も、イリチェ村も、私の実家にいた時には全く無かった、人の暖かさがある。それは胸の奥にジーンと広がっていき、自然と笑顔になれた。
「そうそう、エルミーユはそうやって笑っている方が似合うよ」
「はい」
「っと、話しているうちに到着しましたね。では、お入りくださいませ」
ダミアン様に家の中に招かれると、玄関にはピンク色のボブカットが特徴的な小さな女の子が、抱き抱えるように大きな絵本を持って立っていた。
「おや、モモじゃないか。大きくなったな」
「こんにちは、ブラハルト様」
「こちらは孫娘のモモです。モモ、こちらの女性は、ブラハルト様の奥様になった方だ」
「エルミーユと申します。よろしくお願いしますね、モモちゃん」
「…………」
相手はまだ幼い子供だから、怖がらせないように、しゃがんで目線を低くしてあげたり、いつもと違う呼び方で挨拶をしたのだけど、お気に召さなかったのか、家の外に逃げられてしまった。
……子供に逃げられるのって、初めての経験だけど……想像以上にショックだわ……私、そんなに怖かったかしら……。
「……うちの孫娘が申し訳ない。後で叱っておきますので」
「いえ、お気になさらず」
「エルミーユ。俺とダミアン殿で、村について話すことがある。君はのんびり過ごしていると良い」
「では、村の中をお散歩してきてもいいですか? ブラハルト様が大切にしている地を見て回りたいんです」
「それは構わないが、一人で行かせるのは心配だな……先程荷物を置きに行った使用人が帰って来たらでもいいか?」
「わかりました」
別行動をしてから、さほど時間は経っていないし、すぐに来ると思って、家の外に出ると、丁度お二人がこちらに向かってくるところだった。
その後、私は二人に事情を説明し、のんびりとイリチェ村の中を散歩し始めた――
辺りには青々とした草達が風で揺られ、太陽の光でキラキラと輝く川があって……とても穏やかで、美しい風景だ。
「到着だ。ここがアルスター家の領地で一番大きな村……イリチェ村だ」
「とても穏やかで、住みやすそうな村ですわね」
「さて、村の入口で待ち合わせをしているんだが……」
「あ、ブラハルト様!」
ブラハルト様と一緒に村でキョロキョロと辺りを見ていると、村人と思われる老いた男性が、笑顔で私達を出迎えてくれた。
「お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます、ブラハルト様」
「こちらこそ、お出迎えしていただき、ありがとうございます、ダミアン殿。息災そうでなによりです」
最初に出迎えてくれた男性とブラハルト様は、にこやかな笑顔を浮かべながら握手をする。
このお方が、イリチェ村の村長様なのね。とても穏やかで優しそうなお爺様という印象のお方だわ。
「おや、そちらの方が……?」
「はい。妻のエルミーユです」
「はじめまして、ダミアン様。ただいまご紹介にあずかりました、エルミーユと申します。よろしくお願いいたしますわ」
ブラハルト様の紹介が入ったタイミングで、スカートの裾を持ってお辞儀をすると、ダミアン様は嬉しそうに目を細めた。
「はじめまして、エルミーユ様。私はこの村の村長をしております、ダミアンと申します。ブラハルト様が、こんな素敵な方とご結婚なさるなんて、私はとても嬉しいです。立ち話もなんですから、私の家でお話しましょう」
ダミアン様の案内の元、私はゆっくりとイリチェ村の中にあるダミアン様の家へと向かう途中、農家の家の前を通ったら、農作業をしていたご夫婦に声をかけられた。
「あ、ブラハルト様~! ようこそ~! ご結婚、おめでとうございます~!」
「ああ、ありがとうございます!」
「ありがとう存じます」
「ブラハルト様、とても綺麗でお淑やかそうな、素敵な奥様ですね! これ、うちの畑で採れた野菜なんですけど、結婚記念に持っていってください! 奥様、ブラハルト様のことをよろしくお願いしますね! なにかあったら、いつでも相談してください!」
農家の奥様はそう言うと、たくさんの野菜を私たちにプレゼントしてくれた。
そのあまりにも多すぎる野菜達は、心の底からブラハルト様の結婚を祝ってくれているのが伝わってきたわ。
「あ、あはは……凄い量ですね……ありがとうございます。すまない、これを馬車まで運んで置いてもらえるか?」
「かしこまりました。うっ……お、重い……」
いただいた品は、一緒に来てくれた二人の使用人に任せて、ダミアン様の家に向かって再出発をする。
その道中で、農作業をしているお方や、荷台に作物を乗せて移動させているお方、楽しそうに遊ぶ子供達といった、多くの村人達の様子を見ることが出来たわ。
その方々は、ブラハルト様をとても歓迎してくれるだけではなく、私達の結婚を祝ってくれた。
先ほど見た川の輝きにも引けを取らないキラキラと輝く笑顔で、多くの人に挨拶され、歓迎され、祝ってもらえるブラハルト様は、この村の方々に愛されているんだと感じると同時に、自分のことの様に嬉しく思えた。
「ここに住むお方達は、とても優しいお方ばかりなのですね」
「そうだな。アルスター家の領地に住む人達は、みんな優しい人ばかりだ。あんな噂が流れてしまった後でも、今みたいに家族のように、親しく話しかけてくれるんだ」
「ブラハルト様が我々を大切にしてくださるように、我々もブラハルト様を大切にしているのです」
家族……か。なんとなくだけど、ブラハルト様のご両親が突然亡くなっても、悪い噂が流れても、ブラハルト様が領主として頑張れた理由が、少しだけわかったような気がする。
私には、そういう人はずっといなかったから、少し羨ましいわ。
「エルミーユ、そんな悲しそうな顔をする必要は無い。これからは、君もこの家族の一員なのだから」
「えっ?」
「その通りです。 エルミーユ様も、是非この村にいる時は、自分の家のようにおくつろぎください」
「ブラハルト様……ダミアン様……」
あぁ……暖かい。アルスター家も、イリチェ村も、私の実家にいた時には全く無かった、人の暖かさがある。それは胸の奥にジーンと広がっていき、自然と笑顔になれた。
「そうそう、エルミーユはそうやって笑っている方が似合うよ」
「はい」
「っと、話しているうちに到着しましたね。では、お入りくださいませ」
ダミアン様に家の中に招かれると、玄関にはピンク色のボブカットが特徴的な小さな女の子が、抱き抱えるように大きな絵本を持って立っていた。
「おや、モモじゃないか。大きくなったな」
「こんにちは、ブラハルト様」
「こちらは孫娘のモモです。モモ、こちらの女性は、ブラハルト様の奥様になった方だ」
「エルミーユと申します。よろしくお願いしますね、モモちゃん」
「…………」
相手はまだ幼い子供だから、怖がらせないように、しゃがんで目線を低くしてあげたり、いつもと違う呼び方で挨拶をしたのだけど、お気に召さなかったのか、家の外に逃げられてしまった。
……子供に逃げられるのって、初めての経験だけど……想像以上にショックだわ……私、そんなに怖かったかしら……。
「……うちの孫娘が申し訳ない。後で叱っておきますので」
「いえ、お気になさらず」
「エルミーユ。俺とダミアン殿で、村について話すことがある。君はのんびり過ごしていると良い」
「では、村の中をお散歩してきてもいいですか? ブラハルト様が大切にしている地を見て回りたいんです」
「それは構わないが、一人で行かせるのは心配だな……先程荷物を置きに行った使用人が帰って来たらでもいいか?」
「わかりました」
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※長編版と差し替えました。2025年7月2日
※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。
※表紙イラストは猫様からお借りしています。