【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき

文字の大きさ
41 / 56

第四十一話 似た者夫婦

 パーティーの招待状が来てからちょうど一週間後の夕方。私は新しいドレスで身を包み、可愛らしいアクセサリーを付けてから、馬車に乗って会場に向かった。

 まさか、本当に一週間でこんな素敵なドレスを用意するなんて驚きだ。
 前回のパーティーの時も、短い時間で綺麗なドレスを用意してくれたけど、明らかに今回のほうが猶予はなかったはず。一体どれだけ凄い職人がいるのかしら?

「さてと、アセット子爵はどこに……」

 アセット家の敷地内にある、パーティー用の建物に到着した私達は、会場でキョロキョロしていると、周りの貴族達がこちらを見ていることに気が付いた。

 まあ、前回のパーティーでもこうだったから、特に気にしない……と言いたいところだったのだけど、今回は少し様子が違った。
 以前だと、恐ろしい噂のせいで、ブラハルト様に怯えている感じだったけど、今はなんていうか、軽蔑しているような雰囲気だった。

「見てくださいまし。アルスター伯爵ですわよ……」
「最近、酷い話を聞きますわよね。毎日奥様を虐待しているんだとか」
「暴力は日常茶飯事、夜は無理やり迫ってきて、食事もろくに与えないそうよ」
「はっ……?」

 少しお年を召した貴婦人方から、信じられない話が聞こえてきた。
 ブラハルト様が、私に酷いことをしているだなんて、全くのデタラメだ。一体どこからそんな話が出たというの?

 ……ブラハルト様のためとはいえ、やっぱりこういうパーティーに参加すると、不愉快極まりないわ。
 よし、今回もブラハルト様の名誉を守るために、ガツンと言ってこよう。

「エルミーユ様、どこに行くのですか?」
「あの方々、ブラハルト様のありもしない噂で盛り上がってるようですので、少々お話してきますわ」
「別にわざわざ言う必要は無いよ」
「でも……私、お優しいブラハルト様が悪く言われるなんて、許せないんですの」

 いつもパーティーに参加する時にしている、凛とした態度はなるべく崩さずに答える。
 最近は、家では幸せな生活を送っていたから、この振る舞い方が下手になっていないといいのだけど。

「見てください奥様。エルミーユ様が弱々しい女性を演じておりますよ」
「あら本当ね! そういえば、虐げられていても離婚しないのは、ブラハルト様の遺産を根こそぎ奪うためだという話を耳にしましたわ」
「まあ! もしかしたら、本当はエルミーユ様がアルスター伯爵を虐げているとか……」
「どちらにしても、最低で卑劣な夫婦ですこと!」

 本当にこの方々は、人の悪い噂をしないと、生きていけない決まり事でもあるのかしら? 不愉快この上ないわ。

「坊ちゃま、どこへ行くのですか?」
「なに、彼女達に正しい認識が出来るように、少し話をだな……」
「私は何も気にしておりませんから! ブラハルト様こそ、わざわざ言いに行かれなくても!」

 さっきは止められる側だったのに、いつの間にか止める側になった私は、ブラハルト様の腕に抱きついて、必死に止める。
 社交界でこんなことをするなんて、みっともないのはわかってるけど、ブラハルト様を止めるのに、周りの目なんてどうでもいい。

「もう、本当に似た者夫婦なんですから……さあ、こちらにどうぞ」

 マリーヌの案内の元、私とブラハルト様は、あまり人がいない壁際へとやってきた。ここならあまり嫌な声が聞こえてこなくなるはず。

「はぁ……まったく、根も葉もない噂で人を蔑むことを好む人間が多くて困る……っと、あんなところにいたのか」

 貴族達の低俗さに呆れて溜息を吐くブラハルト様の視線の先には、ペコペコと頭を下げて挨拶をして回る、小柄な男性の姿があった。
 あのお方が、アセット家の家長だ。相変わらず低姿勢なお方ね。

「エルミーユ、俺は彼に挨拶をしてくるから、ここで待っててくれ」
「私も一緒に、ご挨拶をした方がよろしいのではありませんか?」
「いや、大丈夫だ。わざわざ嫌な話が聞こえる中に行く必要は無い。彼には、妻は少々体調がすぐれないから、会場の隅で休んでいると伝えておくよ。マリーヌ、エルミーユのことをよろしく頼む」
「わかりました」

 ブラハルト様は、最初から私を連れて行くつもりが無かったのか、私とマリーヌを置いて、すたすたと歩いていった。
 その姿は、沢山のパーティーの参加客の中に消えていってしまい、完全に見えなくなってしまった。

 本当に大丈夫なのかしら……アセット子爵なら、私が挨拶をしに行かなくても、理由があるなら許してくれそうだけど……。
 ……やっぱり、アルスター家の家長の妻として、そんな不誠実なことは許されないわよね。タイミングを見計らって、ちゃんと挨拶をしにいこう。

「失礼いたします。お飲み物をどうぞ」
「ありがとう存じます」

 マリーヌと一緒に、ブラハルト様が挨拶から戻ってくるのを静かに待っていると、給仕をしている女性から、シャンパンをいただいた。

「そちらのお付きのお方もどうぞ」
「私は遠慮しておきます」
「ご主人様から、参加したお方には、漏れなく配るようにとのことでして……」
「せっかくですし、いただきましょうよ」
「そうですか? ではいただきます」

 最初は遠慮しがちだったマリーヌだったが、私の後押しがあったおかげか、シャンパンの入ったグラスを受け取ると、私と一緒にシャンパンをいただいた。

 あまりお酒って好きじゃないのだけど、このシャンパンは柑橘系のスッキリした味が、とても飲みやすいわ。これだったら普通においしくいただける。

「とてもおいしいですわ。こんな素敵なものをご用意してくださって、ありがとう存じます」
「お褒めの言葉、大変痛み入ります。グラスをおさげいたします。では、ごゆっくりお楽しみください」

 給仕のお方は、私とマリーヌからグラスを受け取ると、静かにその場を去っていった。

「お酒なんて、久しぶりに飲みましたよ。とてもおいしかったです」
「ええ、そうですわね。ブラハルト様と一緒に楽しみたいと思えるくらい、私もおいしく感じました」
「それなら、銘柄を聞いておくべきでしたね」
「ふふっ、そうですわね
「ちょっといい?」

 シャンパンのことで楽しくマリーと話しているところに、一人の女性が声をかけてきた。

 今までは、遠巻きに私やブラハルト様の悪口を言うだけだったのに、直接言いに来るお方がいるなんて珍しい。
 おかげで、私が悪口を言われて、それに対してなにか言い返したとしても、向こうから言ってきたのだからという言い訳が出来る。

 そう思っていた私は、やってきたお方の姿を見て、思わず目を見開いてしまった。

「……コレット……お義母様……!?」

あなたにおすすめの小説

妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。

光子
恋愛
  お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。 お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。 本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。 ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。 「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」 義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。   「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」 家同士が決めた、愛のない結婚。 貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。 だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。 「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」 お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの? そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる! リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌! 私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。 「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」 でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。 「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」 この日から、私の立場は全く違うものになった。 私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒
恋愛
そばかす令嬢クラリスは、家族に支度金目当てで成り上がり伯爵セドリックに嫁がされる。 だが彼に溺愛され家は再興。 見下していた美貌の妹リリアナは婚約破棄される。

秘密の多い令嬢は幸せになりたい

完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。 完結が確定しています。全105話。

地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。 特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。 だがある日、突然の婚約破棄通告――。 「やはり君とは釣り合わない」 そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。 悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。 しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。 「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」 「よければ、俺が貰ってやろうか?」 冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!? 次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには 「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」 ――溺愛モードが止まらない!

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。 ※小説内容にはAI不使用です。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!

aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。 そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。 それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。 淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。 古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。 知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。 これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。 ※表紙イラストは猫様からお借りしています。